コラム
公開日: 2016-06-15
意思決定の質を上げるために大切な最初のフレーム設定とは
経営課題における3つの構造的タイプ
経営において、意思決定(ディシジョン・メイキング)が重要であると、すべての社長が口にします。
でも実際には、なかなか自信をもって意思決定ができないことに、悩みを抱えている社長がおおいのも事実です。
その原因はいくつかありますが、真っ先にあげるとしたら、「そもそも何を決定するのかが明確ではないこと」になります。
「そんなバカな」と思われるかもしれませんが、経営者の話を聞いてみると、意思決定の入口段階でつまづいている方が驚くほどたくさんいます。
経営者の抱えている問題や悩みごとについて、その内容ではなく、構造に着目して整理していくと、大きく3つのパターンがあることがわかります。
タイプA:この先△△はどうなるだろう? もし〇〇になったらどうしよう。
タイプB:どちらを選ぶべきか? どの方向へ進むべきか?
タイプC:もしこのプランを実行したら、△△にはメリットがあるが〇〇には大きなマイナスが・・・
タイプAは、未来のシナリオに対する不確実性、つまりは未来に関する情報の判断をどうするかが問題の本質になります。
タイプBは、進むべき方向性、つまり代替案の問題になります。
タイプCは、価値判断基準、つまり「誰を」あるいは「何を」満足させることを優先させるか、つまり絶対に譲れない制約条件の設定やトレードオフをどうするかの問題になります。
3つの構造タイプに対応する意思決定フレーム
これら3つのタイプは、そのまま意思決定におけるフレーム(枠組み)に当てはまります。
そして、意思決定において「何を決定するのかが明確である」とは、最初に適切なフレームが設定されていることを意味しますが、それが出来ていない場合がおおいのです。
社長自身はタイプBの悩みを抱えていて「どちらを選択すべきだろうか?」という問いをたてている場合でも、よくよく話を聞いてみると、タイプAの不確実性の判断が行われていないことが悩みの原因であることもしばしばです。
またタイプAの語法で「将来、市場が縮小した場合どうしよう?」と語っている社長の話を聞いてみると、「社員は解雇したくない」という拘りを強く持っていて、結局はタイプCの価値判断基準についての検討が行われていないことが、不安の源だったという事例がありました。
日本の大手企業を見ていて感じることは、意思決定のフレーム設定という戦略的自由度の高いことがらに対する経営トップの関与の低さです。
フレーム設定次第で、代替案の種類や検討範囲が大きく左右されるにも関わらず、そこを明確にしないままに、ミドル・マネジメントが設定したきわめて狭いフレームの中で〇×式の案件決裁をすることを仕事としているのが、おおくの経営者の実情です。
中小企業においてはさらに状況はシビアです。起案をしてくれる優秀なミドルすら存在しないのですから、経営者自らが企業全体を見渡して適切なフレーム設定を行い、同時に施策も考える必要があるのですから。
したがって、経営課題と向き合うときには、最初に適切な意思決定のフレームを設定することを十二分に意識していただきたいと思います。
動的安定経営の導入にあたっては、意思決定のフレーム設定を手始めにプロセスを明確化します。また、迅速性・納得性・論理性を高めるために、特にタイプCにおける価値判断基準を明確に定義することが含まれています。
こちらの関連するコラムもお読みください。
- 経営において多数決で意思決定をしてはいけないワケ2015-12-04
- 拙速を避けろ!~意思決定をしないという意思決定2016-07-14
- 損得だけを物差しにしていると行き詰まる経営判断2016-11-18
- 経営者の決断力を鍛えることができるか2015-12-01
- 意思決定の質をあげたければ、裏付け材料を探すな!反証材料を探せ!2016-05-20
最近投稿されたコラムを読む
- できるナンバー2のタイプ 2017-06-07
- なぜ他社の成功事例を真似ても上手く行かないのか? 2017-04-26
- なぜ「できる」社長ほど人材育成が「できない」のか? 2017-04-10
- イノベーションの極意は売れている芸人に学べ 2017-03-28
- 「社員に危機感がない」とお嘆きの経営者へ 2017-03-14
このプロの紹介記事

黒字企業のその先へ!!「競争しない企業」をつくりましょう!(1/3)
経営と競争は切っても切れない関係だと多くの人が考えます。競争相手に対し、いかに優位性をつくるかという視点で物事を考え、手を打つことがほとんどです。しかし、優位に立ったとしても、業種に関わらず、最終的には価格競争に入ってしまうもの。競争を繰...
プロのおすすめコラム
› 新着記事一覧
できるナンバー2のタイプ
企業組織に必要な3種類の人材 以前このコラムで企業のナンバー2についての話をしました。参考リンク▼...
なぜ他社の成功事例を真似ても上手く行かないのか?
確実で効果がある経営手法は探せば見つかるか? 会社を経営している社長の多くが知りたいことは、「何をど...
なぜ「できる」社長ほど人材育成が「できない」のか?
「できる」社長だからこそ、ぶつかる壁とは 企業の改革や再建の取り組みは、緊急急を要する財務的改革が一...
イノベーションの極意は売れている芸人に学べ
爆笑エピソード・トークを連発する芸人に秘訣はあるのか 一昔前のお笑い芸人さんは、ネタ見せで笑いをとる...
「社員に危機感がない」とお嘆きの経営者へ
経営者が多用する「厳しい」という言葉 経営者という立場にいると、「年頭の挨拶」や決算時に営業概況を語...
人気のコラムTOP5
-
- 1位
- 人材は「育てる」のではなく「育つ」、「集める」のではなく「集まる」 1よかった
-
- 2位
- 本当に「運も実力のうち」?~好業績に恵まれている経営者が今やるべきこと 1よかった
-
- 3位
- 優れた企業が実現している多様性と均質性のマリアージュ 1よかった
-
- 4位
- 優れたビジネスモデルを作るときに必要な4つのポイント 1よかった
-
- 5位
- 会社を潰したくなかったら、同族企業は後継者選びで親族にこだわらないこと! 1よかった
スマホで見る
このプロの紹介ページはスマートフォンでもご覧いただけます。
バーコード読み取り機能で、左の二次元バーコードを読み取ってください。