コラム

 公開日: 2016-02-23 

社長が真面目な会社は必ずカベに突き当たる

セミナーの受講姿勢で分かる社長の2タイプ


社長を対象としたセミナーをしていると、受講姿勢が大きく2つに分かれることに気付きます。


Aタイプは、熱心にノートを取り、聞き逃した言葉があると、手を挙げてその場で確認する社長です。


Bタイプは、ノートはろくにとらずに、手を頭の後で組んだり、目線を上に向けたりして、なにか考えごとをしているように見える社長です。


講師の立場からすると、Aタイプに属する熱心な受講者の方が話がしやすいうえに、こちらのメッセージが相手に伝わる期待感が高まります。


一方で、気も漫ろ(そぞろ)で人の話を聞いていないような態度を取られると、話し手のテンションが下がるので、Bタイプのような社長を疎ましく思いたくなります。


でも残念ながら、Aタイプのような社長ほど、できない社長と決まっています。


せっかく真面目に聴いてくれているのに申し訳ありませんが、言葉一つひとつに意味があると思い、一言一句聞き漏らすまいとするその発想がダメなのです。


歴史を学ぶときのことを考えてみてください。


歴史で大切なことは、出来事を原因と結果であるとか、地政学上の力学がどう働いたとか、時間軸をもった流れとして理解することにこそ意味があります。


年号と出来事だけを丸暗記すれば、試験で点数を稼げるかもしれませんが、歴史を学んだことになりません。


受講料が高額なセミナーの場合、元をとるために一言一句を聞き逃すまいとして、せっせとノートをとる気持ちは分かりますが、詳細なノートをとることには意味はありません。


私がセミナーの中で話す言葉は、私が言いたいことを伝えるための手段でしかなく、その言葉を知ってさえいれば全てが解決するという魔法の呪文ではないからです。


Bタイプの社長は、それが分かっているから、ノートはほとんどとりません。


むしろ、講師がこのセミナーを通して何を伝えようとしているのか、という本質的なメッセージを探ろうと頭を巡らしています。


彼らは、セミナーで人の話を聞いたくらいでは、急に経営手腕が上がるなどとは思っていません。


だからこそ、そのセミナーの中から、何か一つでも「明日からこれを変えよう」という行動のフックを見つける目的で、話を聞いています。


一方、Aタイプの社長は、話は真面目に聴いてくれていますが、手段の方ばかりに意識が傾いているので、単なる知識しか得られません。


だから、私のセミナーでは、手や目を動かすことより、頭を動かすことをしてもらいたいので、パワーポイントや文字がびっしり埋まったレジュメなどは一切使用しません。


また、最初に「今日の話は、目的ではなく手段です」とはっきり主旨を説明してから、話を始めるようにしています。


セミナーをわざわざ聞きに来てくれた方には、知識ではなく行動に結びつく気付きを持って帰って欲しいからです。


真面目だからサボれない社長


セミナーの受講姿勢がAタイプに属する社長に共通する特徴は、「真面目である」点です。むしろ「真面目すぎる」と言っていいかもしれません。


世の中の常識から見ると、真面目なのは、悪いことではありません。


例えば、婚活中の女性は必ず、「誠実で真面目」という条件を男性に課してきます。


女性に対しては、大いに真面目な紳士であっても構いませんが、経営にまで過剰な真面目さを持ち込むことは危険です。


不真面目な人は、できるだけ楽をして結果を出したいと考えます。一方で、真面目な人は、小さな成果を毎日コツコツ積み重ねていきます。


特に、学生時代から秀才と呼ばれ、厳しい受験戦争を勝ち抜いて来た人ほど、日々の予習復習の大切さを身に浸みて感じています。


真面目な人は、頭の良し悪しよりも、遊び呆けている人を尻目に、毎日学習時間を積み上げることが成績向上のため秘訣だと考えているはずです。


彼らは、仕事に就いてからも、こうした過去の成功体験に従い、日々小さなことをコツコツ積み上げていくスタイルを続けます。


多くの場合、平社員や管理職レベルの仕事では、真面目という資質を最大限発揮することで、それなりの成果をあげることができます。


ところが、社長業についは、少し状況が変わってきます。最初のうちこそ、この真面目さだけで目標を達成することが可能ですが、その達成率は年を重ねるほどに下がっていきます。


そして最後には、どんなに努力しても達成できない悪循環へとはまり込んでいくのです。


この悪循環は、小さな成果が社長の時間を食い潰してしまうところに原因があります。


真面目な社長は、小さな成果を無視できず、「やらないよりはマシだ」と考えて実行してしまいます。その結果、大きな成果をあげるプロセスを実行する時間がなくなってしまうのです。


こう言うと、「優先順位くらい分かっているよ」「大きな成果を上げるプロセスがあれば、真っ先に実行している」と反論するかもしれません。


なるほど。でも、そもそも大きな成果を上げるプロセスを生み出すための時間が、真面目な社長には存在しません。


では、どうしたら良いのでしょうか?


真面目な社長は、この問題の解決方法を、仕事の効率を上げることに求めることが多いのです。


時間管理がもっと上手にできるようになればと考えて、「7つの習慣手帳」を使ってみても、やんぬるかな、それが成果になって現れてくることはありません。


必要なことは、そもそもの間違いを正すことです。


「効率が良くなる=無駄な時間がなくなる」ではなく、「効率が良くなる=楽をして達成する」と考えるのが、常に成果を上げてる世のできる社長に共通した価値観なのです。


たとえば、倒産の危機に瀕した企業の社長というと、社業をそっちのけで遊び回っているだけの人物を想像する人も多いでしょう。


たしかに、そういう類の社長も一部いますが、ほとんどは真面目過ぎるという共通点があります。


業績が悪化してくると、その真面目さが災いします。


原因はやり方が手ぬるいからだと勘違いして、同じやり方をさらに強化すべく社内に発破をかけたり、営業時間を延長することが、むしろ転落のスピードを加速するという皮肉な結果を招くことが多いのです。


真面目な社長はサボれないのです。だからホームに最初に入って来た各駅停車に飛び乗ってしまいます。


その結果、ゆっくりランチを楽しんでから特急に乗って来た人に追い越されてしまう。


結局のところ、変えなければならないのは、時間管理の方法ではなく、価値観なのです。


頑張ること以上に、頑張らなくても成果を上げる方法を考えることこそ、社長の仕事です。


そのための第一歩が、サボることです。とりあえず、明日から昼寝を1時間ほどするようにしてみるのも一つの手です。


思考の時間軸を長くとる


社長であれば、真面目であろうが不真面目であろうが、毎日必ず考えていることがあります。


それは利益をあげることです。


「顧客サービス」とか「社会的責任」に事業に取り組む意義を置いていたとしても、利益を全く度外視している社長はいません。


では、社長全員が「利益を出す」という同じ目的を持っているのに、社長によって経営の判断基準が変わるのはどうしてでしょうか。


それは、利益を生み出すまでの「時間軸の長さ」が社長によって異なるからです。


時間軸の短い社長は、長期的な利益よりも目の前の利益を優先してしまいます。


そのため、人材レベルの向上や企業文化の刷新といった、今年利益を出さない取り組みへの投資を嫌い、長期的には業績を下げることになります。


一方、時間軸が長い社長は、新人採用・新商品開発・ブランド価値といった長期的な利益を生み出すものへの投資を怠りません。結果的に業績は伸びつづけていくことになります。


真面目な社長は、目先の「やらないよりもマシ」という小さなことを無視できないクセがあるので、どうしても時間軸が短くなり、長期的な視点に欠ける傾向があります。


とは言っても、あまり先のことばかり考えていて、足元の利益を無視してしまっては、会社の経営は成り立ちません。


現在の利益と将来の利益、その両方をバランスすることが大切なことは当然です。


真面目な社長には、過去のコラム「経営の課題を単純化して解決することが、なぜ危険なのか?」の中でで書いた一節を、あらためて振り返ってもらいたいと思います。

******************************************
企業が直面している問題は、簡単ではない複雑な問題ばかりです。

複雑というのは、一つ一つはたいした害がないようなささやかな原因が無数に絡み合って、危機的状況が現れているということです。

そして、問題をさらにややこしくしているのは、その細かい原因のかなりの部分が、「こんなの簡単に解決できる」という善意によって経営に導入された「簡単な解決策」の残骸であることなのです。

企業経営とは「時間」が「貨幣価値」を持つ世界であるために、問題が生じたときに「一気に解決する方法」を経営者が必死に探すことは当然のことです。

しかし、先ず重要なことは、その問題が短期的に発生したのか、長期的に発生したのかを見極めることなのです。

長期的に発生した原因に根差している問題が、短期的に解決することはありえません。

そして、企業における問題の多くは、長期的に発生した原因に拠るものがほとんどである、という実態を忘れてはいけません。
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最後に、セミナーの話に戻ります。


実は、士業やコンサルタントの先生方が開催しているセミナーの内容にも、時間軸の違いがあります。


今月の売上、今年の売上、それとも3年後、5年後の売上を考えているのか。


先生方も、ビジネスに不変のセオリーよりも、すぐに役立つ方法を売った方が自分の短期的な商売にプラスになることを知っています。


だから、5年後、10年後の事業を考えることを目的としたセミナーは、あまり開催したがりません。


まずは、このセミナーはどの時間軸で事業を考えるために役立つのかについて、自覚的になることが大切です。


そのうえで、現在の利益と将来の利益、その両方のバランスがとれるようにセミナーの受講をしてみたらいかがでしょうか。

清水 泰志

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