コラム

 公開日: 2015-12-21 

できる経営者だけが重視している問題解決より大切なこと

できる経営者とできない経営者の違いとは


継続的に好業績を維持している企業のトップは、軸がしっかりしてぶれないという特長をもっています。


反対に、万年赤字の企業のトップは、軸を見失って右往左往しているという特徴があります。


短期間で成果が現れる取り組みなら、ほとんどの経営者がやり切ることができます。


でも、大きな変革ほど、短期間に成果は表れないものなのです。


それにも関わらず、変化が見られないとすぐに自信を失ってしまう経営者は、改善の積み重ねをすることはできても、革新を起こすことはできません。


また、持続的かつ大きな変化は、トップ自身が変わっていくことから生まれるものです。


社員が変わっただけでは、企業全体の変化には決して至りません。


だから、経営者の軸がしっかりとしているというのは、正確に言えば、軸がぶれずにいながら、自分自身を変えようと努力を怠らないことを指します。


軸がぶれない経営のために不可欠な「問い」


では、どうしたら経営者の軸がぶれない経営ができるようになるのでしょうか。


精神を鍛錬すれば軸がぶれない経営が実現できると考えるのは、大きな勘違いです。滝打ち修行や座禅修行などしても、あまり意味がありません。


ドラッカー先生が指摘しているように、最も重要なことは、正しい「問い」を立てることです。


軸がぶれまくっている企業の風土的な特徴は、問題解決指向が強いことです。


組織内に問題解決指向が蔓延しているとも言えます。


つまり、常に解決方法ばかり考えて、「どうやるか」という問いを立て続けているのです。


だが通常の社員は大抵、どうやってやるのかしか考えていません。


それは致し方ないこととしても、経営トップまでもが問題解決指向に陥ってしまった企業は、遅かれ早かれ迷走を始めます。


では、「どうやるか」に代わるどんな問いが必要なのでしょうか。


その答は、「なんのために」です。


こういう話をすると、反論をする社長が必ず現れます。


「なんのために?」
「そんなの売上と利益が伸びるために決まっているじゃないか!」


残念ながら、どう強弁してみたところで、こういう考え方こそが「なのために」が欠落した「どうやるか」経営の特徴なのです。


また、「そもそも問題解決指向の何が悪いんだ?」という反論を受けることがあります。


もちろん問題解決能力は必要です。


しかし、「どうするか」ばかり考えていて、「なんのために」が希薄な企業の行動がどのようなものか、私たちは知っているはずです。


新聞やテレビなどで、法令違反を犯す企業、ブラックと言われる企業、クレームへの開き直りや隠蔽を図ろうとする企業のニュースが後を絶ちません。


これこそが、「なんのために」が欠落した「どうやるか」経営の証なのです。


余人を以て代えがたい経営トップの役割とは


誤解をしてもらっては困りますが、企業にとって売上や利益がどうでもいいという話をしているわけではありません。


企業の存立基盤として、売上や利益は間違いなく必要条件です。


しかし、売上や利益は十分条件にはなり得ない、ということを言いたいのです。


では、企業存立の十分条件とはなんなのでしょう。


それを明らかにするために、先ずは「企業における経営トップの役割とはなにか?」という問いに、経営者として答えてみる必要があります。


答は人それぞれかもしれませんが、私は断言します。


社長の役割とは、「社員が目先のことしか考えていない時に、将来や未来のことを考えていること」に尽きる。


そのために、この企業を通じて、この事業を行うことに対して、「なんのためにやるのか」「どういう意味があるのか」「目的はそもそも何なのか」という問いを立てて、答え続けることが経営トップに求められています。


本当は答えるのが難しい「なんのために」


とは言うものの、実はこの程度の話は、すでに多くの心有る方々が語っていることに過ぎません。


「社長たるもの、理念や想いを語り、将来に向けての地図を描くことこそ最重要な仕事と認識すべし」と、偉大な先達が教え諭しています。


当の社長だって、「なんのために」が大切だと考えるからこそ、「企業理念」やら「ミッション」やら「バリュー」やら「ビジョン」やらを明文化して、企業の公式HPに大々的に掲載しているわけです。


でも、そうした華々しい言葉が、本当に企業の原動力になり、決断を迫られたときに無条件に採用すべき基軸になっているでしょうか。


多くの経営者の本音としては、「少しでも稼ぎたい」という欲と「積み上げてきたモノを失いたくない」という恐れの方がよっぽど強い動機になっているはずです。


欲と恐れを持つことが悪いことなのではなく、それを上回る「なんのために」に対する答えを持っていない事実から目を背けてはいけません。


しかし実際に取り組んでみると、お題目ではなく、経営における真の原動力になる「なんのために」を明確にすることは、想像以上に難しいことに気づくはずです。


特に、形ばかりの理念などが既にある場合は、それを疑い、場合によっては一度ご破算にすることは、過去を否定されるという結果を伴うために心理的な抵抗が大きくなります。


飛躍的前進を図るためには、必ず創造的破壊が付いて回る。


この創造的破壊を起こすかどうかは、正誤の問題ではなく、まさに経営者の意思と決断の問題なのです。


「なんのために」を明らかにすることが「強み」へとつながる


「なんのために」を明らかにすることは、企業としての「強み」を抽出するうえでも重要なことです。


「なんのために」への突き詰め方が不十分なままに、「強み」の定義に走っても真の「強み」は、決して浮かび上がってはきません。


「なんのために」と「強み」は因果関係ではなく、一体不可分であり表裏一体の関係だと考えるべきです。


昨今流行のマーケティング的なアプローチで「強み」を明らかにする手法では、「強みは自分では分かりづらいものだから、顧客に聞けば分かる」などという主張がされていますが、「なんのために」と一体不可分である「強み」は顧客に質しても分かるものとは違います。


カオス理論において「初期値に対する鋭敏な依存性」という概念があります。


この理論を企業経営に置き換えると、最初に「なんのために」への答を誤ると、その後のプロセスにおいて誤りの程度が加速度的に増加するということになります。


したがって、とりあえずという心持ちで「なんのために」や「強み」を形にすることは、意味がないどころか危険ですらあります。


自助努力によって、自社のの存立意義や強みを考えるにあたっては、それらを見出すことの難しさを十分に理解したうえで取り組んでいただきたいと思います。

清水 泰志

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