コラム

 公開日: 2015-12-08 

中小企業が儲かっていても金持ちになれない本当の理由

社長だったら誰でも儲けたいと思う


会社を興して社長になろうと考える人はどんな目的を持っているでしょうか?


事業を通じて実現したい夢や希望があるのは当然として、苦労も多い社長になった以上、やっぱり事業で儲けて金持ちになりたいという目的があるはずです。


これが、創業社長ではなく二代目社長だと、労せずして社長の椅子を手に入れて金持ちになりたい、という偽らざる本音を持っていることが多いはずです。


しかし、最初からある誤解を持ったまま社長になる人がものすごく多いのです。


そういう人は、実際に商売を始めてしばらくすると、「こんなはずじゃなかった」と呟くことになります。


それは、「儲ければ、金持ちになれる」という誤解です。


日本における起業は金のない人の選択


こんなことを口にすると、多くの社長を怒らせてしまうかもしれませんが、あえて言います。


少なくとも日本において起業するという行為は、金がない人が考えることです。


今どき、初めから金持ちな人は、事業などしないで投資をするものです。


「そんなことはない」という社長の反論に対しては、こういう質問を投げ掛けたいと思います。


いままさに年末ジャンボ宝くじが売り出されています。


あなたが、1等+前後賞で7億円という高額配当金を引き当てたら、その7億円全てを事業へ投資しますか?


7億円の一部を使って事業を起ち上げたり、事業へ投資をすることはあるでしょうが、おそらく全額を事業に突っ込む人は、ほとんどいないはずです。


なぜなら、事業に投資することは、リターンが不確実でリスクが高いと、他ならぬ社長自身が考えているからです。


経営者は、事業を長くしているうちに、売掛金が焦げ付いたり、赤字に転落したり、同業他社が倒産したりという経験をたくさん積むことになります。


その結果、なんだかんだ言っても、基本的に事業は危険なものだと思っている経営者は多いのです。


だから、元金を持っている人は、不動産や債権や金(ゴールド)に投資することに一生懸命になることはあっても、事業投資に熱を上げる人は滅多にいません。


やったとしても、大怪我をしない程度に留めます。


資産防衛という意味では、正しい見識だと思うし、その姿勢を批判する気持ちは全ありません。


だだし、不動産や債権や金への投資の方が、より低リスクかどうかは保証の限りではありませんが。


その一方で、今は貧乏でも、事業で金持ちになろうと考える人のほとんどが、少ない手持ち資金で事業を始め、中小企業政策公庫などから金を借りて、事業を拡大し資産家を目指します。


日本の中小企業は自己資本比率が低いとよく言われますが、その原因は金融機関からの借入金にあるのです。


例えば、年商1億円、営業利益率10%で年間1,000万円の利益を出したとしましょう。


そこから、営業外損失として借入金利息を支払い、400万円程度の税金が発生し、残りのほとんどすべてを元金返済で持っていかれることになります。


これでは、事業で儲けることができても、決して金持ちにはなれません。


最近はシニア起業が注目されていますが、例えば3,000万円の退職金を元手に、銀行借入に頼ることなく会社を興し、軌道に乗せられた人がいたとすると、それは「事業で金持ちになったのではなく、最初から金持ちだった」が正解になります。


一方で、事業で金持ちになろうと目指す人につきまとってくるものがあります。それは負債=借入金です。


でも多くの場合、借入金は必要悪な存在です。


優良な中小企業を維持するためには、常に一定の借入金残高が必要になるし、まして事業が急成長する場面では、借入金も急成長せざるを得ません。


ところが、企業が上場すると借入とは無縁になることができます。


上場企業には、さまざまな資金調達の制度が用意されているからです。


例えば、上場会社のいくつかについて、直近の決算における売上高経常利益率を見ると、花王は10.0%、スターバックスコーヒ-は8.3%、イオンは3.4%となっています。


はっきり言って、これと同じくらいの利益率をたたき出している中小企業はいくらでもあります。


でもその経営は困難を極めて、決して金持ちとは言えません。


昔は中小企業でも金持ちになれた


でも20年前までなら、どんな中小企業も、借入金を気にすることなく金持ちになれた時代でした。


なぜでしょうか?


それは、インフレが借入金を相殺してくれたからです。


銀行からの借入で不動産を購入し、店舗を建設して小売業を行う。


仮に事業での売上高経常利益率が1%でも、昔は金持ちになれましたた。


不動産の価格が上がり含み益が大きくなっていくので、不動産を売れば大きな利益が生まれ、売らないまでも銀行は含み益分の貸し増しをしてくれました。


どんな事業をしていても金が生まれてくる構造になっていたのです。


もちろんこんな状況では、経営改善だの財務志向のビジネス・モデルだのに目を向ける経営者はいませんでした。


インフレはすべての失敗を覆い隠すから、誰も失敗せず、したがって誰も学ばないことになりました。


でも、これでは本当の企業経営とは言えません。


だから、昔の名経営者と言われる方の金持ち伝説は、今では役に立たないと思った方がいいです。


今も昔も、事業で金持ちになろうとすると、必ずと言っていいほど「借金」が付いて来るものですが、インフレの時代ならそんなこと気にする必要さえなかっただけです。


ところが、これから事業を始めようとしたり、これから事業を承継しようとすると、この問題が大きくのしかかってきます。


借入金の元金と利息は、事業収益できっちり返さなければならないからです。当然のことですが…


そのためには、先ずは儲からないことには話になりませんが、儲けたところで金持ちになれるわけではありません。


儲かるだけではなく、金持ちな中小企業を増やすために


私は、自分自身が中小企業の経営者だったこともあり、「儲ける」と「金持ちになる」の違いを否が応でも実感することが多かったのです。


「儲ける」ことは、「金持ちになる」ための必要条件ではあるけれど、十分条件ではありません。


(だけど世の中には、一度も黒字になったことがない事業を売却して、大金を手に入れたYoutubeの創業者みたいな人もいるので、必要条件でもないかもしれません。)


一方で、金持ちになることは、企業経営の最終目的ではありませんが、だからと言って夢や希望が叶うなら清貧に甘んじるべきとは、微塵も思いません。


せっかく起業する、あるいは企業経営をするなら、結果的に「儲かる」だけではなく「金持ち」な会社になった方がいいに決まっています。


金持ち企業になれば、経営者の不安の大半は払拭され、未来への投資余力が格段に増加する。


未来をより良くするために今まで以上の時間とエネルギーを掛けることにより、企業の好循環が始まる。


そういう企業は、社長も社員も取引先も、間違いなく幸福度がアップします。


その意味で、金持ちな会社を目指すべきだと考えています。


そのためには、良い商品を持つだけでも、無借金経営になるだけでもダメです。


ビジネスモデル・財務・人と組織・リーダーシップといった企業活動全体が、「金持ち」になるようにデザインされていなければ到底無理なのです。


これを機会に、企業経営者や起業を目指す方は、「儲ける」と「金持ちになる」の違いについて、じっくり考えられてはいかがでしょうか。

清水 泰志

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