コラム

 公開日: 2015-12-01 

中小企業の後継者育成を始める時期に早過ぎるはない

後継者不在を嘆く中小企業の社長



多くの中小企業において、後継者不在が深刻な問題となっていることは、ご存じのことだと思います。



「そろそろ、会社の跡継ぎのことを考えなければいけないのだけどね。困ったことにいい後継者がいないんですよ」



だから、もう70歳を超えた社長が、こんなぼやきを口にするをよく耳にします。



社長に求められる社長にしかできない仕事がいくつかありますが、事業承継あるいは後継者育成は、間違いなくその中の一つになります。



しかし、ほとんどの社長は目先の商売の売上を日々気にしていますが、事業承継とか後継者育成というテーマになると、「まだ、その時期ではない」と口を揃えて言うのです。



2年前の調査になりますが、帝国データバンクが「事業承継に関する意識調査」を行った結果を発表しています。



2013.7.11付けで帝国データバンクのサイトに掲載されている調査結果報告は以下のとおりです。


事業承継を「最優先の経営問題」と捉えている企業は23.3%。「経営問題のひとつ」(63.0%)と合わせると、企業の86.3%が事業承継を経営問題として捉えている。

しかし、事業承継を進めるための計画については、「計画はない」が30.0%、「計画はあるが、まだ進めていない」が32.4%となり、6割超の企業が事業承継への取り組みを行っていない。「進めている」は27.6%にとどまった。

「事業承継計画を進めていない/計画がない」理由として、「まだ事業を譲る予定がない」が半数近くに達する。

(出典:帝国データバンク(http://www.tdb.co.jp/report/watching/press/p130702.html



細かい数字は脇に置いて、7割方の経営者の意識は「事業承継についていつ考えるのか?」と聞かれたら、「今じゃないでしょ」ということのようです。


宿題に着手するのを先延ばしにする心理



学生時代の夏休みのことを思い出してみてください。



1ヶ月以上と期間が長い夏休みには、学生にとって楽しい思い出がたくさん詰まっています。



でも一方で、夏休みの最終週は宿題をやっつけるのに必死になるという苦い思い出を合わせ持っている人も多いはずです。



我が身を振り返っても、宿題は夏休みの最終週が勝負でした。



なぜ、私を含めた多くの学生は夏休みの宿題を計画的にやらないで、先延ばしにしてしまうのでしょうか?



先延ばしの心理的分析といった難しい話をするまでもなく、その理由は簡単です。



「夏休みの宿題をやりたいと思わないから」 このことに尽きます。



それでは、事業承継について取り組むのが「今じゃないでしょ」と考えている多くの経営者の心理状況はどうなのでしょう。



この理由は、学生のそれとは、一見すると同じように見えて、実は違うと思います。



学生にとって夏休みの宿題とは「やらなければならいけどやりたくないこと」ですが、多くの経営者にとって事業承継対応は「やる必要がないからやらないこと」だからです。



その証拠が上記の帝国データバンクの調査結果にも示されています。



「事業承継計画を進めていない/計画がない」理由として、「まだ事業を譲る予定がない」が半数近くに達しているからです。


今すぐ事業承継のグランドデザインをする決断をする



ここに大多数の経営者の誤解があります。



私は強く言いたい。「事業承継は相続ではない!」



しかし、本当のところ経営者はこのことを知っています。



その理由は、この調査結果を見ればわかります。


事業承継で苦労することは「後継者育成」が約6割で最多。

「従業員の理解」が約3割で第2位。



一社員であったとしても人を育てることに手間暇がかかることは、すべての経営者が身をもって知っているはずのことです。



ましてや「後継者育成」や「従業員の理解」を進めるのためには、早くても5年、一般的には10年の時間が必要になります。



そんな時間がかかることを「まだ事業を譲る予定がない」という理由で先延ばしにしているのは逃避以外の何ものでもありません。



さらに事業承継について考えることを先延ばしにすることで発生する別の大きなリスクがあります。



このリスクは全ての経営者にあてはまるはずです。



考えたくないことですが、経営者が今日不慮の死を迎える可能性は常にあるのです。



日本の中小企業経営者は同時にオーナーでもありますが、現経営者が持っている会社の株式はトラブルの温床です。



特に遺言がない場合、会社の株式は法定相続人に引き継がれますが、複数の法定相続人がいる場合、持ち分によって株式が分割されるのではなく、全ての株式が法定相続人による共有名義になります。



こんな状況になると、誰かが事業を存続しようとしても利害の調整で揉めることが多く、企業自体が解体の危機に瀕します。



賢明なる社長ならば、事業承継について計画的に着手する時期に早いということがないことに気付くはずです。

清水 泰志

株式会社ワイズエッジ
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