コラム

 公開日: 2015-12-01  最終更新日: 2015-12-07

経営者の決断力を鍛えることができるか

テレビアニメ版『進撃の巨人』20話の中で、アルミン・アルレルトがこんなことを言っていた。


「あとでこうするべきだったと言うことは簡単だ。でも結果なんて誰にも分からない。分からなくても決断のときは来るし、必ずしなければならない」。


なかなか考えさせられる言葉である。


かつて米国系コンサルティング・ファームで仕事をしていた時、コンサルタントの仕事をひと言で表すと、経営者に対して判断のために「有効な」選択肢を提示することだと考えていました。


選択肢が「有効」であるためには、「変数」を一つに絞り込むというワークが不可欠です。


人が判断に迷う時のパターンはいくつかありますが、「変数」が多すぎると判断をすることができないことが多いからです。


「変数」とは「不確定要素」と言い換えることができます。


しかし、課題についての選択肢を経営陣に提示しても、どの選択肢も採択されずに暗礁に乗り上げるということが良くあったたのです。


なぜ経営者は、「有効な」選択肢を前にして「判断」することが出来なのか?


当時の私は不可解な気持ちを持ちました。


「変数」を絞り込み、「変数」の可変域に応じていくつかの場合に分けて選択肢を提示してあり、しかも選択肢毎に可能性とリスクについての詳細分析が付記されているにも関わらず、「判断」できないことはありえないだろう、と。


そんな経験を通して、経営者に必要な能力や資質は「判断力」ではなく、甲乙付けがたい選択肢の中から一つを選び出す「決断力」であるという思いを強くするに至ったのです。


そこで、自らが「決断」ができる経営者になろうと思い、コンサルタント業から一度足を洗ったのですが、その後経営者となり、そして再びコンサルタントとをしている現在、「決断力」に対する考え方がまた変わりました。


「決断というのは、なるべくしない方が良い」


なぜなら、「決断をしなければならない」というのは、すでに選択肢が限定された状況に追い込まれていることを意味するからです。


選択肢が限定された状況に追い込まれないこと、それが「正しい決断をすること」より、ずっと大切です。


そもそも、「選択」という行為が有効に働くためには、選択肢が3つ以上存在している必要があります。


なぜなら、選択肢が2つしかないと、片方を選ばないと決めることは、イコール残りの一つを選ぶことを意味するからで、それは主体的選択となり得ません。


しかし、「決断」を求められる状況において示される選択肢は、「伸るか反るか」「行くか留まるか」「やるかやらぬか」という二者択一に絞り込まれているはずです。


困難な決断においてつねに正解を引き当てるような能力を僕らは持っていないし、そのような能力を誰によっても育てることはできない。


「決断力を鍛える」などと、私たちは軽々しく口にします。


でも、「決断力は鍛えられないかもしれない」という、極めて楽しくない事実を認めるところからしか、逆説的ですが、決断力は向上しないのです。


一方で、困難な決断を迫られるような状況に追い込まれる可能性を検討して、リスクを事前に回避することに対してなら、そのための能力は私たち全員に潜在的に備わっているし、それを育成することも可能です。


つまり、「君子危うきに近寄らず」に象徴されるリスク・マネジメント能力は、十分に鍛える余地があるというこを意味します。


いずれにしても、「決断」を要する場面は、偶発的に出現はしません。


そこに至る以前に、毎日何気なく行っている、無数の小さな判断が積み重なった結果として、決断の局面に出くわすのです。


これまで正しい判断を積み重ねてきた人間の前には決断に迷う二者択一は出現しないでしょう。


逆に、これまで何度も決定的な局面で判断を誤ってきた人間の前には、決断を迫る分岐点が繰り返し訪れるはずです。


したがって、いざという時に決断力不足を嘆きたくないのなら、今すぐに日常的な細かな判断の基準について見直すことが、最も有効な打ち手だと言えるのです。

清水 泰志

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