コラム

 公開日: 2014-09-22  最終更新日: 2016-06-19

【公開】イリジウムの指輪の作り方

宇宙最高の指輪を作るとしたら、それはイリジウムの指輪ではないか、と思います。

代官山工房では、8年ほど前から、イリジウムの指輪の開発をはじめ、4年前に製造法を確立、これまでに6つデザインのイリジウムの指輪を実現してきました。


そこで今日は、

「ありきたりのプラチナの指輪なんてイヤだ」

「結婚式や、旅行よりも、形に残って生涯身に着ける結婚指輪にこそ、こだわりたい」

と、お考えの方におすすめの、イリジウムの指輪について、詳しくお話したいと思います。



イリジウムとは?


イリジウムという金属は、原子番号77、比重22.5と全元素の中で最も重く、白金族(プラチナ、パラジウム、イリジウム、ロジウム、オスミウム、ルテニウムの6つの元素を白金族という)の中の1元素で、美しい輝きを持つ金属です。

融点は2454 °C。高温でも安定しているという優れた性質から、バイクのスパークリングプラグとして使われていることが有名ですが、最も仕様用途として大きいのは、工業用サファイアを製造するためのルツボとしてです。イリジウム製のルツボの中で熔かして作成されたサファイアが最も汚染がなく純度が高く出来ることから、半導体の基盤に使うサファイアの作成にイリジウムルツボは欠かせません。

一方でイリジウムは、高すぎる融点のために鋳造によって成形が出来ず、産出量がプラチナの10分の1以下で高価であり、硬くて(HV450以上)加工が難しい素材でもあります。



恐竜絶滅の巨大隕石とイリジウム


そんな産出量の少ないイリジウムですが、なぜか不思議なことに地層の中に高濃度に含まれる部分があります。

それは「KT境界」と呼ばれている地層です。KT境界というのは約6550万年前の中生代(白亜紀・ドイツ語でKreide)と新生代(新生代第三紀・英語でTertiary)の境界であり、ちょうど恐竜が絶滅し、ほ乳類が栄える時代の境界線にあたります。

このKT境界は世界中どこにでも、地面を深く掘ってゆくと存在する地層であり、断層では目視することも出来ます。そして、そのKT境界には、イリジウムが高濃度に含まれています。

通常イリジウムは、その重すぎる比重によって星の核付近に集まる傾向があり、地表にはわずかにしか存在しません。ですからKT境界に存在する高濃度のイリジウムは地球の外から由来のものであり、その量と世界中に広がる分布範囲、そして恐竜の絶滅のタイミングと同じことから、恐竜の絶滅は、巨大隕石の衝突が原因だったと推察されています。

弱肉強食のは虫類の時代から、共存共栄のほ乳類の時代へ。巨大隕石の痕跡であるイリジウムは時代の転換点を象徴するようです。(←このことは、僕がイリジウムの指輪の実現を熱望し、開発を粘り強く続けた動機でもあります。)



イリジウムが、プラチナよりも優れている点


さて、実際にイリジウムを指輪にした場合を、プラチナと比べて、どのような違いがあるのか説明したいと思います。

まず、見た目として、白さ(反射率)はプラチナよりもイリジウムのほうが上です。またプラチナ900の硬度HV70に対して、イリジウムの硬度はHV450もあり、硬くてキズがつきづらい。このことから、イリジウムのほうがプラチナよりも白く輝き続けるということが言えます。

あとは、質感。プラチナは通常、宝飾品としては純プラチナではなく、プラチナ900が用いられますが、プラチナ900の比重は19.9と、比重は20を切ってしまいます(純プラチナの比重は21.45)。一方でイリジウムの比重は宇宙で最も重い22.5であり、指輪にして身に着けても、宇宙一の比重を実感することが可能です。

ちなみに金属アレルギーの原因になる要素としては、プラチナとイリジウムは同程度です。どちらもほとんどの方には金属アレルギーの原因になりませんが、プラチナにはパラジウムが混ぜられていることが多く、パラジウムが金属アレルギーの原因になることが多いです。パラジウムの金属アレルギーについては、こちらの記事に詳しく書いています。
【注意】パラジウムが金属アレルギーの原因になる!?



イリジウムの弱点


イリジウムのメリットが、白さと重さ、であるのに対し、弱点はたくさんあります。

まず挙げられるのが、サイズ直しが難しいことです。大きくする場合はリングの内周を削ることで最大1号ぐらいまでの調整ができますが、小さくするのは相当困難です。ですので後述しますが、試作を作って事前に綿密なサイズ確認を行なうことをお薦めしています。

また、イリジウムの硬さは焼き入れ鋼並みの硬さがあり、それ故にデザインの融通性が低いことも挙げられます。シンプルな形状であれば問題なく出来ますが、複雑なデザインや、石を留めることが難しいです。

それ以外にも、イリジウムの指輪を作っているのは、世界にたった2社のみ。こちら代官山指輪工房と、アメリカのアメリカンメレメンツ社のみ。従って選択肢が少ない事もデメリットと言えるかもしれません。

また、プラチナと見た目がほとんど変わらないこともデメリットと言えるかもしれません。ほんのわずかに白いだけなので、見た目はほとんど変わらないのに、価格は4~5倍ですから、世の中の一般的な人たちに自慢しても共感してもらえることはほとんどありません。

あとは、イリジウムの硬さのために、突き指や骨折など指輪をしたまま指が腫れてしまった時に、危険だという心配をされる方もおられるようですが、男性の力でニッパーで切れば外す事が可能です。ただプラチナよりも硬いことは確かです。



開発の経緯


そんなイリジウムですが、僕がイリジウムの指輪の開発に至った経緯をお話したいと思います。これは他社がマネをしない理由が分かっていただけると思うからです。

はじめの動機としては、前述のとおり、イリジウムという素材に物質的な魅力と併せて、必然性を感じたからなのですが、実際に実現しようと思うと、言うほど簡単なものではありません。

今でこそイリジウムの指輪は実現しているので、指輪として存在するのが当たり前のように見えるのですが、鋳造が不可能で、世の中ではイリジウムは粉の状態でしか手に入らず、しかも材料費がものすごく高価、失敗の度に大きな損失を被るイリジウムの指輪の開発は、非常に大変なものでした。

圧粉の研究にはじまり、バインダーの研究、超硬金型の研究、プレスの研究、真空の研究、加熱炉の作成、真密度を上げるためには?、熱間鍛造の研究、などなど、かなり研究は込み入ったものになってゆきました。その過程は確かに困難ではありましたが、一方で非常にたくさんの副産物も産み出す結果にもなりました。これらは今の僕の事業のベースにもなっています。

開発を始めたのが、8年前の2006年の事、そして指輪として実現したのが4年前の2010年です。

ちなみに、こちらが第一号のイリジウムの結婚指輪です。
http://ringology.org/banana/81http://ringology.org/banana/810839



どういうデザインが可能なのか?


イリジウムは、他の金属とは違って曲げたり延ばしたりが出来ず、また鋳造も出来ないので、このような状態からダイヤモンド工具を使って削り出しで指輪のデザインを作ります。

イリジウム 材料
イリジウム デザインを削り出す前の状態


従って、出来るデザインというのは、「削り出しで出来るかたち」です。

実際には、こちらのホームページに掲載しているデザインを作る事が可能です。
http://ringology.org/muscat1b/

イリジウム以外にも、代官山工房では、タンタル、ハフニウム、ジルコニウム、ニオブなどの稀少金属素材は全て「削り出し」でデザインを作っているので、タンタル素材やハフニウム素材で実現しているデザインは、ほとんどどれでもイリジウムでも実現可能です。

ちなみに、イリジウムの指輪には基本的に石を留める事ができません。これはイリジウムには展延性がないことによります。石を留めるとしたら、その部分だけプラチナで置き換えて留める必要があります。



イリジウムの指輪の価格と、価格算出の考え方


イリジウムの指輪は、削り出しによって制作を行ないます。

従って、イリジウムの指輪の価格は、削り出し前の状態の地金量と、地金相場によって決まる事になります。

削り出し前の状態の地金量は、指輪サイズと指輪の幅によって変わり、特に指輪の幅が価格に対して大きな影響を与えます。デザインによる価格の違いは、ほとんど生じません。幅によって価格がほぼ決まると考えていただいてよろしいです。

ですので、地金相場の変動によって多少の変動はありますが、幅ごとに大まかに価格をお伝えすると、

2mm幅のリングが、1本で31万円~(税込)、
4mm幅のリングが、1本で39万円~(税込)、
6mm幅のリングが、1本で44万円~(税込)、

となります。(2014年9月現在)


その他、変則的に価格が決まる場合がありますので、以下に例を挙げて記載しておこうと思います。

こちらのように、男女でサイズ差が大きく、1つの材料から2つのリングに切り分けて材料取りできる場合、価格が割安になります。
http://ringology.org/banana/20

こちらのように、異素材と組み合わせる場合、組み合わせ方、材料取りの仕方によって、価格が異なることになります。
http://ringology.org/banana/20



注文の方法・手順


イリジウムの指輪は、その他の金属に比べて工数が多く、加工時間がかかる工程がありますので、お届けにはご注文から4ヶ月をいただいております。

また、前述のとおり、イリジウムの指輪はサイズ直しが困難ですので、試作をお作りして事前にサイズ確認を行なう事をおすすめいたしております。(試作はご注文いただく方には無償でお作りさせていただいております)

アルミニウムの試作

イリジウム 指輪

アルミニウムの試作(上)とイリジウムの指輪(下)


ですので、ご注文の流れを書くと、次のようになります。

1.お問い合わせ
2.仕様とデザインを打ち合わせ(メールのやり取りでも可)
3.試作の制作
4.ご注文の確定(入金をもって)
5.材料手配
6.イリジウム成形
7.デザインの削り出し
8.仕上げ・完成(ご注文から4ヶ月)

ご注文の確定から完成までに4ヶ月がかかりますので、お急ぎの方は、先にご入金をいただいて注文を確定し、材料手配と試作制作を平行して行い、時間短縮を図る事も可能です。ご相談ください。



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〒150-0034
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ホームページ:http://ringology.org/
担当直通TEL:080-7826-6811(365日 8時~23時)
MAIL:taiyo.chikyu@gmail.com
問い合わせフォーム:http://ringology.org/grape1/(365日 24時間)

*土曜日・日曜日・祝日は、予約枠が埋まりやすいので、お早めにご連絡ください。

*ご来店いただかなくても、メールのやり取りだけで遠方からでも、ご注文可能です。お気軽にお問い合わせください。

この記事を書いたプロ

東京ダイヤモンド株式会社 [ホームページ]

ジュエリーデザイナー 廣瀬一京

東京都渋谷区代官山町20-6-203 [地図]
TEL:080-7826-6811

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