コラム

 公開日: 2016-01-19  最終更新日: 2016-01-20

冬季訪中修行10日目 ~前へ進む!~

2016年1月16日 北京

急遽予定を変更して、河南省から北京に戻りました。

道の途中で感じたことは、前に進むということです。

この3年間、私はずっと失ったもののことばかり考えていました。

人生の絶頂期に、2年連続で計3箇所の骨を武術とは無関係の事故で損傷し、八卦掌の要とも呼べる頚椎の可動域を一つ失い、主治医には「カムバックできるかは不明だと」宣告され、絶望し、死ぬことばかり考えていた時期もあります。

どんなに探しても怪我の理由は見つからず、反省すべきことや、注意すべきことも見出せず、毎日毎日迷路のような世界に閉じこもっていました。

誰に話しても「不運だった」という言葉しか聞けず、自分で納得ができず、今後の運動は自己責任という状況に怯え、何もできないでいました。

このままではダメだと思えたのは、実の母親の言葉です。

「お前の不幸が大きすぎて助けてあげられない」

その言葉を聞いて、

(そうか、誰も助けられないんだ)

と実感しました。

怪我をしても、不幸になっても、自分で何とかするしかない...

しかし、前に進む力はなかなか湧いてきませんでした。

「もうダメだ」

怪我をしてから、数限りなくそう感じました。

神様は私に何をしろと言うのだろう。

私は欠点の多い人間です。

でも、いつも自分の能力の限界以上まで頑張ってきました。

だから、これ以上頑張るという力が湧いてきませんでした。

思い上がりなら反省したい、謙虚さが足りないのなら改めたい、間違いを犯したのなら懺悔したい。

罪を犯したのなら、罰を受けたい。

教えて欲しい。

なぜ再起不能になるのか、理由を知りたい。

ずっとずっと、そのループでした。

大変女々しいですが、それが実体です。

「過去を捨てて、前に進む」

今まで簡単に出来ていたことが、こんなに難しいことだということを、生まれてはじめて知りました。

だから今回の訪中では、私が一番失いたくなかった、中国での修行の日々を見つけに来たのだと思います。

実際は、もう取り戻せないものなんて何もありませんでした。

過去の経験は、私の中にありました。

努力の汗、流した涙、体が震えた感動、思いきり笑ったこと、喜んだこと、学んだこと。

全部私の中にあって、失ってなんかいませんでした。

私が今回見つけたものは、失ったものではなくて、新しい中国です。

日常会話はもういいんだ、これからはもっと高度な中国語の勉強をしたい。

ノスタルジックな中国はもういいんだ、これからはもっと広い視野で中国を勉強したい。

遅く来た青春も、もう過ぎて行ったんだ、これからは成熟した人間になって中国の文化を学びたい。

何も失っていない、過去は私の中で生きている、世界は広くて、死ぬまで学んだって学び尽くせないんだ!

原点に立ち返り、理屈や慰めや妥協や思い込みではなく、実体験としてそう感じました。

そして、師である麻林城老師の言葉を思い出しました。


私 :老師! 練習すればするほど自分のダメなところを発見して落ち込みます。

老師:それは喜ぶべきことだ。

私 :どうしてですか?

老師:不足していることが分かるという時、人はまだまだ向上できるんだ。

私 :... はい、そうですね!

老師:練習しても、練習しても、自分の不足している部分が見つけられなくなった時、それは不幸なことだ。

私 :... どうしてですか? それは喜ぶべきことではないですか? 不足を感じる時、私たち学生は、みんな出来ないことに苦しみ、不足がなくなるように努力します。 不足がなくなれば高い境地に至ったということになり、苦しみは終わるのではないですか?

老師:自分の不足している部分が見つけられなくなった時、それはもう向上することが出来ないということとだ。それこそが最も苦しいことだ。だから人は永遠に自分より高い境地にいる師を求めるんだ。

私 :... 老師、わかりました!


この言葉を聞いた時は、「老師はあんなに凄いのに、まだまだ上を目指しているなんて、なんて謙虚で誠実な方だろう」としか思っていませんでした。

しかし、怪我が原因で学びの道を見失って、初めて老師の言葉が痛切に蘇りました。

私は完璧ではありません、不足も感じています。

でも、不足を過去に見るのではなく、未来に見る時、不幸を幸福に変えることができるんだ!

言葉にすると、とても簡単なことですが、そう思えるのに長い月日が掛かりました。

過去に自分が一生懸命学んだ土地に来て、新たに学びたい気力が湧いてきて、やっと止まっていた時計が動き始めました。

留学当時は、練習練習で周囲が目に入らず、閉ざされた世界で生きていました。

何かを極めようと思ったら、そういう時間も必要だと思います。

でも今、両目を開いて、周りを見回して、こだわりを捨てて、肩の力を抜いて中国の街を歩いていると、不思議に自然体になれます。

今は過ぎ去ったことを悲しく思う中国での武術修行時代は、きっと私の礎となっているだろう。

「過去の段階は中断したのではなく、完了したのだ。

 悲しむな、嘆くな、前へ進め!

 お前はまだ未熟なのだ!」

武術の神様がいたら、きっとそう叱られるだろうと思いました。

【おまけ写真】
初めて京劇を観に行って大感激しました。
女性と男性の体の使い方の違いが、本当に参考になります。
武術界の中にいると、ついつい勇ましくならなければと思ってしまいますが、女性らしさを失うのは大変もったいないことだと再確認しました。
京劇を観に行きました 横山春光

北京最大の骨董品市場「潘家園」なんでも売っています。
潘家園
氷点下でもお坊さんは寒さ知らずで颯爽と歩いていました。
潘家園 お坊さんもショッピング
「門鈴」思わず衝動買いしそうになりましたが、重くて持てなかったので諦めました。
潘家園 門鈴

【おまけ動画】

ただの観光のようですが、観光がいかに過酷か、数日後に知ることとなりました。

続く

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● 横山春光 ~中国留学記~ (お読みいただければ幸いです)

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