コラム

 公開日: 2015-02-06 

百日修行(四十四日目)〜国会中継〜

大きなニュースに毎日動揺して考え込んでいました。

私も周囲の心配を押し切って中国に何年も住んでいたので、完全に自己責任でいたのかと振り返ると、果たして勇気だったのか蛮勇だったのか明言できず、ただ「それしか生きる道がなかった」という思いだけが強く浮かんできます。

中国に行くまでは、たった一人で生きていると思っていました。

働いて、部屋を借りて、食べて、寝て、生きる意味を探して、苦しんで...

たとえ死んだとしても、少なくとも自分の足で歩き、自立して生きていた、という幼稚な充実感だけはありました。

しかし、その後中国へ渡り、生まれて初めて「日本人」という自分の人格以外の立場を背負うことになりました。

自分がちゃんとしている、というだけでは中国では通用せず、きちんと日本人としてどういう心構えで中国で学んでいるのか、ということを中国人に言葉や態度で説明して納得してもらわなければ、たやすく自分を出すわけにはいきません。でも私は説明ができないので、ただただ中国人を真似て、中国人の振りをして、日本人だということをなるべく隠して学んでいました。

海外で自分探しをするのは非常に難しいと思います。

自分である前に、外国人として国を理解し、ルールに従い行動しなければ、個人の考えは成立しないからです。

しかし私は中国伝統武術界という狭くて保守的で厳しい掟のある、ある意味守られた世界で暮らしていたので、外国人として社会的な証明はさほど必要なく、ただただ一心に老師の教えを学び守るだけでよかったので、やっていけたのだと思います。

厳しい掟の中で老師が教えてくださる「天人合一」という境地は、「自然と人は独立したものではなく、本来調和のとれた統一体である」、という境地で、その境地を学んでいる限り国籍に縛られることはありませんでした。

一人で自立して生きている、という幼稚な充実感より、自分は大自然の一部であるという生き方のほうが、はるかに豊かで幸せでした。

老師が作ってくださった安全で幸福な学びの場にいれたことは、幸運であり幸福だと思います。

中国伝統武術は護身術です、そして争いを止める術です。

相手はどこにいるのかというと、己自身です。

打ち克つべき本当の相手は、自分の中にいるという前提なのです。

具体的には、中国伝統武術は体の動きだけではなく、本質的な法則を学びます。「なぜ自分は存在しているのか?」という人間なら誰しもが抱くあの疑問です。

そして学ぶ過程において厳しい掟があるのが特徴です。

厳しさがなければ本当の上達はあり得ません。

法則を学ぶのは人間だからです、厳しさは人間性を磨くからです。

そうでなければ、いくら正しい法則を教えてもらっても、私たちは自分のエゴで好き勝手に解釈してしまうからです。

厳しい掟と鍛錬によって磨かれた人間性を、「徳」という言葉で表現します。

「武徳」とも言います。

徳がなければ、学べる内容はほんの少しの限られたものだけです。

徳とは、他の為に行って初めて徳と呼べるので、たった一人で誰にも迷惑を掛けずに学んでいても、先には進めません。

誰も独走できないのです。

己の弱さに打ち克って、他の為に働くのです。

「自然と人は独立したものではなく、本来調和のとれた統一体である」

という言葉は、誰もが受け入れられる常識だと思います。

学校教育を受けている日本人なら、知識として「それは、そうだろう」と答える人が殆どだと思います。

そして、その素晴らしさと美しさを、私たちは想像できます。

でもこれを、我が事として考え、実践できる人は多くないと思います。

しかしこれを、「自分はできないから、できるようになりたい、できる方法を知りたい」と思った人が、発心し、学生になり、学び、精進し、実践できるようになっていくのだと思います。

私は今年初めて国会中継を見るようになりました、いままで全然興味がなく、見てもちんぷんかんぷんだったのですが、世界で起こっている大きなニュースを見て、もっと世界を知らなければならない、自分の国を知らなければならない、と感じるようになりました。

私もどこかで、自分と世界を切り離して考えていたことに気がつきました。

中国伝統武術を学んでいなければ、私は一生国会中継を我が事として真剣に見ることはなかったと思います。

一番苦手で、面倒くさいとか、手に負えないとか、難しくてわからないとか、自分に都合の良い理由をつけて見ようとしなかったものを直視できるようになることは、人間として強く成長できるきっかけになると思います。

百日修行と銘打ってはじめたことですが、何かを知るには百日どころか何百年も掛かると思った、四十四日目でした。



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