コラム

 公開日: 2014-11-12  最終更新日: 2015-11-26

知識伝達型学習と参加体験型学習について

紅葉の季節到来だというのにお天気が不安定ですね。



今日は、知識伝達型学習と参加型学習について考えてみたいと思います。

『知識伝達型学習』とは?
読んで字の如く、教師が生徒に定型の知識を伝える一方通行形式の学習法。学習の基礎を構築するのに適しています。

『参加型学習』とは?
生徒が学習過程に参加し体験することを重視しており、『参加体験型学習』とも呼ばれる学習法。応用力がつく。私はこの『体験』という言葉を使った後者の呼び方が好きです。

いろいろと調べ物をしているときにこの言葉を発見し、「なるほど納得!」と膝を打つ思いでした。

太極拳と八卦掌の教室を開講してから、私はずっと『参加体験型学習』を行いたくてうずうずしていました。

なぜならば、中国で武術留学していたころは、中国語の難解な武術専門用語が理解できるまで数年かかったので、殆どを参加体験型学習法で学んでいました。その時の楽しさが強く印象に残っているのです。

留学中は理論も学びたかったのですが、それは日本に帰ってからでも学べますし、中国の武術界という世界が、あまりにもエネルギッシュでドラマティックで感動の連続だったので、とても本やインターネットで理論を調べる気になれなかったのです。

加えて、子供の頃から本の虫で、小学校の図書館にあった本を卒業までに全て読破したり、学校帰りに歩きながら本を読んで自転車に轢かれたり、読む本がなくなって家にある家庭の医学やタウンページに至るまで読み漁ったり、終には本を書き写したり、読書感想文コンクールを総なめにしたり、友人とのお喋りが上手くできなかったので、友人を主人公にした短編小説を書いて本人に渡したり、辛くて寂しいときは一晩中思いをノートに書き綴ったりと、とにかく言語を使った活動しかできなかったことも関係しています。

当時は、知りたいことは全て本に書いてあると本気で信じていましたし、新しい本を開くときのワクワクや、真っ白な原稿用紙に向かうときのウズウズが、「ここに我あり!」という感覚があり、没頭していました。しかし、心はひと時の開放を得られていましたが、実生活の殆どは外の世界から自分の殻に引き篭もって生きていました。

過疎地で母子家庭だったので周囲の偏見があったことと、私自身の生まれ持った個性の強さから、登校拒否やうつ状態になり、周囲と協調できないことも大きな理由になっていたと思います。そのような状況の私にとっては、不協和音の日々の中で唯一心地良い旋律を聴けるのが、言語思考という活動法だったのです。

しかしそれも18歳で高校を卒業して就職しなければならないときに限界を迎えました。

「私は知識ばかりで、生きる能力が何も備わっていない・・・」

ということに、さすがに気づいてしまったのです。

上京し、社会に出てからは本を読むことをやめました。

とにかく、チャレンジ!チャレンジ!経験!経験!の修行を自身に課しました。

両親からの教育を受けられず、学校にも殆ど通っていなかったので、その不足分を取り戻すのに必死でした。

無理をして対人恐怖症になったりしましたが、生きる能力がないこと、それによって自分の夢をかなえる力もないことのほうが恐ろしかったので、病などには屈せず社会に飛び込んでいました。

素晴らしい人や、尊敬できる人や、興味が湧く人に出会ったら、本で得た知識を頼りに、自分が理解できなかった問題や、もっと知りたかった内容への質問を、情熱のままに投げかけていました。

現実世界で生きている人たちと話をする体験では、本では得ることのできない、痛み、苦しみ、悲しみ、喜び、温かさ、恐怖、感動、希望、エネルギーを感じることができ、しかもそれらの体験を乾いたスポンジのように自分が吸収していくのを感じられるので、大きな充実感がありました。

書いてみると危なっかしい青春時代でしたが、人間というものは、いえ、生き物は全てそうだと思いますが、「学びたい、成長したい」という本能に突き動かされているのだと思います。

このような経緯から、知識伝達型学習は基礎である、という理論にうなずけます。

私がまともな子供時代を過ごしていなかったのに社会に出てからも多くの素晴らしい人たちに出会い学ぶことができたのは、本をたくさん読んで基礎となる知識を学んでいたからだと思います。

子供は条件に恵まれなくても、本能的に自分で探して学ぶのだと思います。

そして、日本の学校教育のベースになっているのがこの知識伝達型学習です。

では、大人になって太極拳や八卦掌を学ぶという工程を考えてみます。

「太極拳は子供は学べない」、と中国の太極拳武館で聞いたことがあります。太極拳を学ぶには少なくとも人格形成の第一段階が完了している必要があるからだそうです。

八卦掌の大会に行ったときも、子供の演技を見ていた先輩が、「成長期が終わって身体が安定し、内面ができてからでないと練習にならない」、と言っていました。

もちろん運動は子供の頃から鍛練していたほうが身体能力の開発にかける時間が圧倒的に増えるので、そのほうが良いです。

ある種のスポーツでは、それが選手の将来を決定します。

しかし、こと太極拳や八卦掌などの内面を練る中国武術は、それは決定打ではありません。

太極拳や八卦掌が目指す「人格の完成」という目標は、大人になってからでないと鍛錬できませんし、身体能力という基礎の不足分は戦術という応用で乗り越えられるからです。

すなわち、基礎はあくまで基礎であり、必要不可欠だけれども必要最低限という程度のものであると認識しなければなりません。

日本人は大変真面目で基礎を強く重要視する傾向があります。

言い換えると、重要視し過ぎていて基礎から出れなくなるか、または「この年齢ではもう間に合わない」と諦めて疎かにしてしまう人が多いです。私も潜在的には前者です。

応用を見据えた基礎学習を行えば、基礎は開花します。

応用となすなわち具体的な目標です。

「太極拳で強くなりたい」、「太極拳で健康になりたい」、「太極拳の理論を仕事に生かしたい」、「八卦掌で華麗に翻ってみたい」、などなど・・・

大人になり、経験を積み、ある程度自分を知った人間は、経験から自分の能力がわかります。

だから具体的なイメージが湧きます。

イメージを見つけたら、太極拳や八卦掌の動きに、自分の人生を投影します。

単なる動きとしてではなく、ありのままの自分(アナ雪大好きです)を投影するのです。

そこに目標が見えてきます。

応用が見えてきます。

これは見ようとすれば殆どの人が見えるものだと思います。

ですから私は、参加体験型学習法で伸ばせる応用性を重視しています。

成人以降の太極拳学習において実践する参加体験型学習法では、これから経験して知るものよりも、もうすでに学んできたものや、自分の中にあるものを発見することのほうが多いからです。

自分自身を知っている大人が、自分を完成させるために、有限である肉体の冷静な判断(基礎)と、無限である魂の大胆な要求(応用)を一致させたとき、それは本当の意味での素晴らしい人生のスタートだと思います。

大人になってから自分に許された限られた時間の中で、太極拳や八卦掌を学ぶのは困難なことがたくさんあると思います。

何が応用で何が目標か明確にできないときも多々あります。

そんなときは、通われている教室の授業中に下記の簡単な3つの行動を試してみては如何かと思います。

1)学ぼうと思った動機を先生や仲間に言葉にして伝えてみる
2)自分の体が強く何かを感じた動きについて質問してみる
3)套路で苦手な動きについて必要な基本練習を先生に質問してみる

武術の鍛練は厳粛な雰囲気が殆どなので、質問のタイミングを掴むのも難しいことが多いですが、上記3つは即効性があります。

私たち大人の学習者にとって大切なのは、応用を踏まえた堅実な基礎練習です。

この設定は自分の経験をフルに生かしてシビアに行うべきだと思います。

是非、『情報伝達型学習』で基礎を学ぶだけでなく、『参加体験型学習』で応用力を伸ばして、豊かな修行生活を送っていただければと思います。

● 八卦掌・太極拳 ~教室のご案内~
● 横山春光 ~中国留学記~ (お読みいただければ幸いです)

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