コラム

 公開日: 2014-04-03  最終更新日: 2015-11-13

『正師を得ざれば学ばざるに如かず』

私が中国武術を学びはじめた動機は、命の普遍性を証明したかったからです。

それが唯一、生きている実感を得られる方法だったからです。

決して、「強い技を使えるようになりたかった」とか、「ミラクルパワーを身につけたかった」という理由ではありません。

なぜ中国武術でなければいけなかったのか、自分でも悩み迷いました。

最初に学んだのは太極拳でした。

しかし、学んだ流派が陳式太極拳という非常に激しい太極拳で、いつも自分の体力の限界との闘いでした。

女性であり、体も弱く、心も弱く、暴力が嫌いな性格なのに、なぜ朝から晩まで人を傷つける技を心身に鞭打って鍛練しなければならないのか、さっぱり訳が分からない時期もありました。

趣味であるならば割り切れるので良かったかもしれませんが、私は仕事も辞めて人生を懸けて中国まで渡り、太極拳発祥の地で陳式太極拳を学んでいたので、割り切れるものではありませんでした。

実際に太極拳武館を逃げ出して、ヨガセンターに通っていた時期もあります。

ヨガの世界は素晴らしい世界でした。

自分に合っているとも思いました。

「体が弱いくせに、中国武術なんて何を勘違いして私は夢中になっていたんだろう…」と興醒めするほど、ヨガは素晴らしかったです。

しかし、それでも私は武道を捨てられませんでした。

それは武縁があったことと、そしてあまりにも自分が武道に全てを捧げ尽くしてきたことにあると思います。

もう何も残っていないくらい全てを放棄して中国武術の修行に人生を捧げてきたので、神様も力を貸してくれたのだと思います。

「極めたい、その先に何があるのか知りたい、そして自分がなぜ生まれてきたのか知りたい」

その思いが、私を武道の門の中へと突き動かしてくれました。

太極拳では地元の大会で型の優勝もしましたが、それは私が求めたものではありませんでした。

「師を求め弟子入りしなければ、これ以上、型の先に進むことはできない…」

と痛感し、太極拳の師を探しましたが、しかし私の心身は八卦掌の動きに可能性を感じるようになりました。

多くの老師方と仲間が、私が八卦掌を学ぶことを勧めてくれました。

しかし、私は太極拳に愛情がありました。

初恋の中国武術でもありますし、苦労をして身につけてきた技術を手放す怖さもありました。

陳式太極拳の型は、河南省で孤独と不安に耐え、たった一人で歯を食いしばって鍛練して身につけた、私そのものであると感じていたからです。

しかし最終的には太極拳と河南省のアパートの荷物を全てを捨てて、北京の八卦掌の師のもとへ押し掛け弟子として移り住みました。

初めて麻林城老師より本物の八卦掌の練功法を学んだのはこの場所です。

八卦掌への想い 横山春光
[中国北京の留学時代、写真の型は獅子張口掌]

この場所は、私の師である八卦掌第五代継承者の麻林城老師が修行時代に練功されていた場所でもあります。

当年、北京の12月、極寒の公園で初めて八大単転掌の第二掌を教えていただいた時は、着膨れしていた服で殆ど厚みもない胸が圧迫されて、息ができずに困り果てました。
(第二掌の双捧掌は肘を寄せ両掌を前方へ突き出す型です)

型は難しかったですが、しかし夢のように幸せでした。

一つ一つの動きが本物であると、それまで筋肉で行う型ばかり練習していた体が歓声を上げるようでした。

「可能性を感じる」

正統な武道を学ぶ楽しさと喜びは、この一言に尽きると思います。

360度回転できなくても、たとえまだ180度でも、正統な八卦掌の螺旋運動には、童心に帰れるような楽しさがありました。

そして、「途方も無い膨大な練習量をこなさなければ上達などできない」、というあの迷信と脅しが嘘であると思いました。

確かに練習量は必要です。

時には少し目を離すとサボりだす弟子に、師が「途方も無い膨大な練習量をこなさなければ上達などできない」という言い方をすることもありますが、それは信頼関係があるからそういう言い方をするのです。

「真面目に一生懸命練習しろ!」と言ってもなかなか守れないから、そいういう言い方をするのです。

そういう言い方をしても嫌になって辞めてしまうことはない、と信じているから言うのです。

しかし、正統な武術の練功法は、単純な『根性論』ではありません。

『根性論』には、雑念が消える、という良い点もあります。しかし盲目になる、麻痺する、怪我をする、排他的になる、道理が学べない、徳が積めない、限界がくると挫折する、という悪い点もあります。

言葉は全てを表せません、だから人と人とが真剣に向き合う伝承という関係性と時間が必要なのです。

『根性論』だけでは自己満足しか味わえません。

『根性論』から『可能性』は生まれません。

私たちが安定した状態を保つことを選ばす、人間として生まれてきたのは、変化と成長を繰り返し、自分自身を客観的に知ることができるからだと思います。

見る者と見られる者が一体となったとき、私たちはこの世界と一体となることができます。

人体力学の法則を完全に体得したとき、私たちの体は完全なる自由を感じることができます。

法則を外に見るので不自由なのです。

しかし法則を無視して私たちは存在することができません。

存在していること自体、すでに宇宙の法則の体現であるからです。

法則から自由になる方法は、ただ一つ。

その法則と一体となることです。

法則が法則に縛られることはありません、この世界には完璧なる法則があり、だからこそ私たちは破綻することなく存在し得るのですし、破綻もまた実は法則の中の一つの状態でもあるからです。

「私たちが法則に基づいて存在しているならば、なぜあえて法則を学ばなければならないのだ? そんな無駄なことはやめて、今ある人生を楽しもうではないか!」

この使い古した我々の煩悩は、いつか人生の悔いとして残ります。

「全てのものに神性が宿るならば、なぜあえて修行するのか?」

多くの宗教でも同じことが大問題として取り上げられています。

答えは、

「学ぶこと自体が法則であるから」

です。

私たちの本性は、学びたい=自分を知りたい、という魂なのです。

「以動制静」(動を以って静を制す)

「不停地走!不停的動!」(決して停まるな、常に変化しろ!)

「動中求静!」(動じているのは誰か? 自分ではない、動かされているのは相手だ、自分の心は依然として動じていない)

麻林城老師の厳しい指導のお言葉を受け、全身全霊で八卦掌の動きを行っているとき、私は大いなる法則の片鱗に触れることができ、全ての苦しみから解放される瞬間を感じることができます。

真伝は常に伝承者の心の中、そして体の中にあります。

だから私たちは人間から学ぶのです。

高みを目指し、至った師から学ぶのです。

私の太極拳の動きは、努力で身につけたものです。

そして、その下積みがあったからこそ、現在の八卦掌の師に受け入れていただくことができました。

当会の太極拳クラス、八卦掌継承班は、私の生き様そのものです。

それ以上でもなければ、それ以下でもありません。

私は生きている限り師を求め続け、そして死ぬまで成長することを止めることはありません。

『正師を得ざれば学せざるに如かず』

これが、当会の核心です。

● 八卦掌・太極拳 ~教室のご案内~
● 横山春光 ~中国留学記~ (お読みいただければ幸いです)

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