コラム

 公開日: 2013-08-19  最終更新日: 2014-07-31

真夏の太極拳に想うこと

夏、真っ盛りです。

外気の暑さに圧倒され、道端で意識朦朧としていると、蝉しぐれに覚醒させられます。



『真夏の太極拳に想うこと』

それは仲間との連帯感です。

この時期、一人ではなかなか辛抱できません。

頭では、「太極拳を練習すれば体が楽になる」と思っても、堪えられる暑さにも限界があり、限界を超えれば動けません。

東京の夏は厳しいです。

人工的な暑さから人間の体を守る為に過剰に管理された冷房体制の中、「汗をかけば涼しくなる!」という本来備わっている自己体温調整機能は、年々加速度的に弱まっていきます。

人間の一日の過ごし方は、朝の心身の状態で大きく左右されてしまいますが、

まず、朝の時点で、就寝時の冷房の温度設定とタイマーの調整がうまくいっていないと、体が冷えているか、暑さでぐったりしているかのどちらかです。

どちらにせよ、冷房のスイッチを入れると「寒い……」

消すと「暑いっ!」

入れると「寒い……」

消すと「暑っ!」

「寒い」

「暑い」

「寒」

「暑」

……

もう訳が解からなくなります。

これだけでも精神的にかなりストレスを感じますが、体が受けている肉体的ストレスはそれ以上に深刻です。

とは言え、どうすることもできず、ただただ夏が過ぎ去って行くのを待つだけ、という状態に陥りやすいです。

私は九州宮崎出身の南国育ちですが、東京の暑さは本当にバテます。

子供の頃は、夏休みになると実家の近くの川で一日中泳いでいました。

川の辺で生まれた子供達は、小学生になる頃には、ほぼ全員泳ぎを覚えています。

一通り泳げるようになった後は暇をもてあますので、川原に自生しているヨモギの葉を石で刷り潰して一眼水中メガネの“曇り止め”にする、という技術取得に夢中になったり、友達同士でオリジナルのゲームを考えたり、ストイックな子供は自力で“漁”を始めたりします。

私は『ヨモギの葉で曇り止め』に成功し、弟と共有で使っていた一眼水中メガネで川の中を観察したことがあるのですが、目の前をでっかいスズキが泳いでいて(海が近かったので海水魚も泳いでいるのです)、そのスズキに「ギロリ」と睨まれ、それまで小さな川魚しか見たことのなかった私は、緑色に曇った川水の中で、銀色に光る生きたサーベルの如く殺気立ったスズキが恐ろしくなり、二度と川で水中メガネは使わないようになりました。

はっきり言って、トラウマです。

でも、あの背筋が「ゾクリ」とする恐怖感は、確実に涼しくなります。

水中メガネを放棄してからは、主に裸眼で川底に投げた白い石を見つける、名付けて『石拾い』で遊んでいました。

『石拾い』は、個人種目・団体種目、どちらにもなります。

チャレンジャーな仲間がいると、水深の深いところに白石を投げたりするので、年長生が注意します。

川の水は流れているので、川底から水面までの直線距離で計算してしまうと息が続きません。

子供なりに、経験と観察から自分たちの身体能力の限界値を知っていました。

スイカ割りに及んでは、連日の如く行っていました。

川で冷やしたスイカは、本当に美味しかったです。

川水の温度は低いので、長時間水に漬かっているとスイカだけでなく人間の体温も下がります。

唇が紫色になったら慌てて川原にあがって日光浴をします。

いま思えば、かなりサバイバルです。

そして、一番興奮したのが『ノボリコ漁』です。

『ノボリコ』とは、ハゼの稚魚なのですが、夏のある日、突然川下から1~2本の帯状の大群が川上に向かって昇って行くのです。

そのスケールは、荒れ狂う黒龍のように巨大かつ雄大で、恐ろしく、そして美しくもありました。

しかしながら、地元民はたくましいです。

『ノボリコ出現』の一報が流れると、大人たちが網を持って駆けつけます。

網が用意できないときは、タオルでも捕まえられます。

ノボリコは短い間しか出現しないので、それはそれは大興奮です。

私は母と弟と交代で、何度も空振りしながら、食べられる分だけ捕獲していました。

黒龍の体の一部を削り取って、家に持って帰って、天麩羅にして自然の恵みを頂きます。

当時、田舎の母子家庭は何かと偏見がありましたが、数少ない楽しい思い出の一つです。

太極拳の発祥の地である河南省も夏は気温が40度を超える日が多くありますが、空気がカラッとしていて湿度が低いので持ちこたえられます。

トマトやキュウリなどの夏野菜もハウス栽培でないものが多く元気一杯で、トゲトゲした部分に触れるだけで元気が出ます。

スイカも安いので、スポーツドリンク代わりに毎日気軽に食べていました。

このように、大変素朴な幼少期の夏体験と、中国河南省の40度超えの夏体験を経ていますが、それでも東京の夏は厳しいです。

毎年、冷房のスイッチのON・OFFの無限ループを繰り返し、夏バテしています。

今年も例外ではなく、東京独特の酷暑にバテましたが、太極拳クラスの皆さんに助けられました。



「今日はとても笑顔になれない……」と思う日でも、皆さんと一緒に太極拳で体を動かしていると自然に笑顔になれます。

笑えると、心も体も緩みます。

冷房で冷えた体に、温かい血液が流れるのを感じると、仲間のありがたさが身に沁みます。

『太極一家』という中国の言葉が胸に響きます。

そして、『太極神韵』という太極の道にある天人合一の境地を遥か彼方に想うと、太極拳が持つ共鳴力の素晴らしさに心を打たれます。

人工物に囲まれた、東京という街。

大自然の恵みを享受できない、ある意味大変厳しい生態系なのかもしれません。

それでも、

「如何に人間らしく生きていけるか!」

このことに対する問いかけを止めてはいけない、と思いました。

そして、それを日々実践している太極拳という名の下に集まった仲間を、心からありがたいと思います。

『真夏の太極拳に想うこと』でした。

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