コラム

 公開日: 2013-05-20  最終更新日: 2014-07-31

初夏訪中修行(九)

訪中三日目、落ち込んだ気持ちで天壇公園へ入り、練功者の集まる松林へ向かいました。

途中で、太極拳を練るおじさんを見かけました。

なんだか孤独が癒されます。

いつも泊まっている北京市郊外のホテルの近くにも、たくさん太極拳愛好者の方はいらっしゃるのですが、天壇公園は私が中国留学を始めたばかりの頃に、太極拳の仲間に連れてきてもらった場所なので、特別な場所なのです。

練功者は孤独です。

孤独の中に絶対なる境地を見出す、厳しい道です。

ですから、一人黙々と練功をしている姿を見ると、勇気をもらえます。

失礼だとは思いながらも、元気がなかったので近くのベンチに座り込んで、さりげなく見てしまいました。

「!」

すると、なんと陳式太極拳の老架一路ではないですか。

それも私が学んだ型の風格と良く似ています。

なんだか嬉しくなってきました。

そして、会心の当頭炮!(とうとうほう)

天壇公園 陳式太極拳老架一路を練る練功者

「おじさん、格好良い!」

最後の、金剛搗碓(こんごうとうたい)

天壇公園 陳式太極拳老架一路を練る練功者

「右膝が落ちてない! すごい!」

普段クラスの指導で受講生の皆さんに「金剛搗碓に入る前に右膝を落とさないようにしてください!」と連呼しているので、かなり興奮しました。

この姿勢の時に右膝を落とさないようにするのは、かなり気をつけて練功を積まないと難しいのです。

あまり見ていると申し訳ないので、老架一路が終わったあたりで、すぐに立ち去りました。

目的の松林にたどり着くと、太極拳のチームが推手を行っていました。

遠目に見た雰囲気で、健康目的の愛好者ではなく、本気で鍛錬を積んでいる動きだったので、写真を撮るのは控えました。

すこし離れた場所を歩くと、今度は別の太極拳チームがいましたが、雰囲気が和やかだったので、遠くから一枚写真を撮らせて頂きました。

天壇公園

近くに行って写真を撮るのは失礼にあたるので、あくまで背景の一部として収めさせて頂きました。

天壇公園の中も風は強かったですが、埃がなかったので、「よし! 私も練功しよう」と静かな場所を探しました。

天壇公園

本当に静かです。

街中の小さな公園と違い、頑張って集中しなくても、自然に心が落ち着きます。

そのうち焦りや迷い心が消え、八卦掌の歩法に没頭することができました。

時折通り過ぎる若者たちが、「お、あれ見ろよ、八卦掌じゃん!」と言っていましたが、天壇公園ではあまり珍しくないのか、じろじろと見られることもありません。

一通り練功を終えると、心が落ち着いてきたので、ベンチに横になって樹を眺めました。

天壇公園

私も自然の一部なんだと感じられる幸せな時です。

いくら太極拳や八卦掌の修行をしても、人が老い、死んでいくのは当たり前のことです。

生きる苦しみが消えることはありません。

だったら、なぜ修行などするのか?

また迷い心が芽生えそうになったので、練功を続けました。

ある程度体を動かせば、心身は整います。

暫しの心の静けさを感じていると、天壇公園内にいる「喜鹊」という白黒の鳥が四羽、私のすぐ近くに舞い降りて、二羽づつの対になって、はげしく鳴き踊りはじめました。

ガーンと頭を叩かれたような衝撃を受け、眠っていた心の目が覚めました。

大げさなようですが、四人の賢者が真理を語り始めたように見えたのです。

「小さい頃は、よくこんなふうに、風のにおいや、光の手触り、動物や植物の語ることを強く感じていたのにな」

「その真意がわからないことに随分苦しんだけど、私はまだ感じることができる」

「わかりたい、知りたい」

これが私の生きる動機であったことを思い出しました。

太極拳や八卦掌を学ぶことは、非常に素晴らしいことだと思います。

そのことに、迷いは感じません。

ただ、

「なんのために学ぶのか?」

それを見失いそうになると、とても不安になります。

さまよって、さまよって、苦しんだりしますが、心はとても怖がりなので、本当に優しく真剣に向かい合ったときにしか、真理を話してはくれません。

「本当に強い人とは、恐怖を知り、それを克服した人だ」という話は、一度でも武道を志した者ならば、必ず知っている先人の言葉です。

私は心を強くすることばかりに気をとられ、弱さを見つめることを忘れていました。

弱っているときこそ、普段見えないものを見ることのできるチャンスだ。

そう思えば、人生も少しは余裕があるじゃないか、苦しんだって大いに結構じゃないか、と帰りの地下鉄の中で思いました。

つづく

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