コラム

 公開日: 2012-12-28  最終更新日: 2014-07-31

冬季訪中修行(六)

2012年12月27日。

北京に到着して早くも6日目です。

この日も、外が明るくなると同時に公園に向かいました。

入り口に足を踏み入れてすぐ、毎日同じ場所に立って鍛錬をしている
おじさんに、「ぎろり」と睨まれました。

おおおっ!!

いつにも増して薄着です!

青いジャージが輝いています!

にらみを利かせながら、でんでん太鼓のように体を震わせる鍛錬を行っています!

真冬の北京の公園で薄着で鍛錬をしているおじさん

気合いが入ってるな~、と思いながら指定の練功場所に行く途中、
もの凄い寒さに気がつきました。

前日は寒さを感じなかったので、体が慣れたのかと思いきや、気のせいだったみたいです。

「寒いー!!!」

しかし、公園では昨日より多くの人たちが太極拳や五禽戯の練功を行っています。

真冬の北京の公園で太極拳

私もメゲる訳にはいきません。

昨日、『采気功』を行っていた、赤いダウンコートの女性も、同じ場所で
采気しています。

師からの連絡も、弟弟子からの連絡も何もありませんでしたが、一人で練功を
始めることにしました。

まず、八卦掌の『熱身』(ウォーミングアップ)の走圏(円を歩く)を行って
いると、後ろから女性の声で名前を呼ばれました。

振り返ると、師のご友人の形意拳の老師である、李老師(女性)です。

李老師は、幼い頃から『伝統・形意拳』の師について学ばれていた、実力者です。

しかし、師は既に亡くなられています。

李老師の師の遺言で、麻林城老師(私の師です)に弟子入りして功夫を高めなさい、
と言われたそうですが、麻林城老師は色々なご配慮から、師弟関係を結ばず、
師妹として交流をしているそうです。

李老師は私より3つほど年上で、女性の武術家特有の凛とした雰囲気を持っていて、
とても話しやすい方です。

前回お会いしたときは、

「あなたも中国武術に魅了されて婚期を逃したのね、私はお見合いしたからいいけど、
 あなたの周りの人は煩く言ってくるんじゃない。その気持ち解るわ・・・」

という話題でお互い苦笑しました。

今回も、ざっくりと挨拶をすると、「邪魔はしないから、練功を続けて!」
と言って、颯爽と去って行かれました。

多くを語らなくても、心を通わせることのできる人がいるというのは、
嬉しいことです。

中国語で、『以武会友』と言います。

そんなことを思いながら、自分の練功に集中していると、一時間経ったあたりで、
弟弟子が来ました。

「麻老師から連絡あった?」

と聞いてきたので、

「ううん、ないよ。だから私たち自主練功していなきゃ」

と言うと、

「そうだね、君も続けて・・・」

と言って、少し離れた場所に移り、八卦掌独特の、上体を大きく捻って弓歩をとる
準備運動を始めていました。

30分後・・・

身を切るような、あまりの寒さに打ち震えていると、携帯電話が鳴りました。
なんとなく師からの電話ではないような気がして出てみると、中国茶店を
経営している友人からでした。

お昼前に寄るから、と言って電話を切って弟弟子をふと見てみると、静かに
まっすぐ歩く『直趟』という基本歩法を行っています。

八卦掌の基本功

私は、朝たべた非常食のお粥のエネルギーが切れてきて、どうしても寒くて
仕方なくなったので、激しい動きの練功に切り替えました。

しかし、いくら激しく動いても、どんどん体が冷えていきます。

「厳しい!!」

と思っていると、弟弟子が「小休憩!」と言って話しかけてきました。

動きを止めて一分くらいすると、不思議に体が温まってきました。

私は、弟弟子に、

「我覚得越松越冷」
(緩めば緩むほど、温かくなる気がする)

と言うと、

「力むと体が冷えるよ」

と言っていました。

小学生の頃、学校の先生が同じことを言っていたのを思い出しました。

弟弟子は、陽気な性格でとてもお喋り好きです、

「俺が歩く練功をしているときに、何を考えているかというと、
 一匹の虎になった気分になるんだ。
 それから獲物に気づかれないように気をつけて一歩一歩、歩くんだ。
 これ、俺が考えた独特の練功法!」

とニコニコして話しているので、私が、

「你很有創意」
(君って、アイデア・マンだね)

と言うと、続けて、こういう話になりました。

「俺さ、『動物世界』っていう番組を観るのが好きなんだよ」

「私も動物番組は好きだねぇ」

「動物ってさ、見えなくても敵とか獲物を見つける功夫があるんだよね」

「そうそう、人間って進化してるのか、退化してるのか、わからないよね」

「俺が思うに、練功ってああいう動物の能力に近づくために行うんじゃないかな」

「そうかもね」

「だから、武術の型の名称には、虎とか熊とか鷹とか蛇とか、動物の名前がついてるんだよ」

「うんうん、良いね、動物は良いよ、人間も動物だからね」

「動物と人間の違いって、人間は頭と心が離れすぎてるんだよ、でも動物はほぼ合一してる」

「確かに、現代社会って、頭ばっかり使わなきゃいけないよね」

「だから病になるんだよ、動物は自然と共に生きているから、合一してるんだ」

「確かに、野生動物には複雑な病気はないって聞いたことある」

・・・

そんな我々練功者にとっての世間話をしていると、もう我慢できないほどに
寒くなってきたので、

「ごめん、私今朝は早く来たから、もう限界。友人のお茶屋さんに会いに行くから
 また後で!」

と言って、公園を去りました。

ホテルの部屋に戻る途中で、師から電話がありました。

「午後2時に、2人で私のオフィスに来るように」

「はい!わかりました!」

大変です、のん気に中国茶を飲んでいるわけには行きません。

しかし、約束をしたので、顔だけは出すことにしました。

この日、中国茶芸師の友人に飲ませてもらったのは、二十年物の『老・鉄観音』です。

20年物の老鉄観音

人間が加工して作った味ではありません、時間が磨き上げた風味です。

今まで飲んだことのない、不思議な香りと舌触りにうっとりしました。

その他にも色々なお茶を淹れてくれて、長居するつもりはなかったのですが、
冷え切った体に、あったかい中国茶があまりにも美味しかったので、ゴクゴクと
何杯も飲んでしまいました。

(そろそろ戻らなきゃ・・・)

と思っていたところで、お客さんが来たので、

「あ、ごめん!今日は時間が無いから、また改めて出直してくる!」

と言って、急いでお昼ご飯を食べに行きました。

海老シューマイ、ウマイ、です。

北京のシュウマイ

グズグズしていると、冷めてしまうので、二分で完食して、次に運ばれて
きた麺を食べてホテルの部屋に戻りました。

師の指示通り、午後2時調度にオフィスに到着すると、珍しく弟弟子が先に
到着していました。

師は、我々に次の課題を明確に口頭指導してくださいました。

それから、師と共に三人で公園に向かいました。

練功の始めに、新たに体の柔軟性を高める基本功を指導してくださり、
それが終わると、

「よいか、おまえにはこれから“開手”を行う」

「これは将来おまえが弟子をとり、正式に伝承を行えるようになるまで、
 決して他言してはならない。ちゃんと理解したか?」

と、私を射すくめる迫力でおっしゃられたので、

「わかりました!」

と返事をすると、いよいよ技の稽古が始まりました。

・・・

(ここからは、書けません)

・・・

この日の稽古の最後は、敬礼の作法についてでした。

抱拳の作法だけで、数種類もあります。

このような伝統的礼儀作法は、「教えてください」と言って教えてもらえる
ものではありません。

必要なときが訪れないと、教えを頂くことはできないのです。

私は、師の全てのお言葉を、師の全ての動きを、自分の能力の限界まで
受け取りたいと切望します。

師の八卦掌は、中国が数千年もの歳月かけて磨き上げてきた、
全人類に誇れる、最高の人間哲学だと思います。

つづく

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