コラム

 公開日: 2012-12-26  最終更新日: 2014-07-31

冬季訪中修行(四)

2012年12月25日、早朝6時15分。

私は北京郊外のホテルで、目覚ましが鳴る15分前に起きました。

この日は、今回の訪中修行で師にお会いする第一日目です。

毎回、緊張の極みです。

課せられている要求を満たせたのかどうか・・・

上達していれば、しているだけ良いに決まっているのですが、
時間には限界があります。

私はいつも自分に厳しい評価を下す傾向があるので、当日はむしろ
腹をくくる気持ちになります。

「これ以上は、無理だった」

そう思えないと、とても申し訳なくて師に会えません。

いよいよ、日本から持ってきた非常食の活躍のときです。

訪中修行用の非常食

登山用の、お湯を入れるだけで食べられる非常食シリーズです。

これを食べると、どんなに疲れていても、どんなに眠くても、
すぐに練効ができる状態になれる、という大変ありがたい食べ物です。

日本の専門店で購入しているのですが、いつも置いてある場所が変わるので、
訪中前に見つからないと、お店の中で軽く狼狽します。

外を眺めると、北京の夜がゆっくりと明けていきます。

北京の早朝

今回泊まっているホテルから、師に指示された場所までは、徒歩30分かかります。

初日にお会いする場所ですが、毎回違います。

時には、師のご自宅であったり、公園であったり、師の経営する会社のオフィス
であったりします。

今回は、オフィスでした。

私は出かける前に、日本から持ってきた心意(お土産)のラッピングを、
もう一度きれいに整えました。

中国では、礼品が重要な意味を持ちます。

お金より、礼品のほうが大切なのです。

礼品が無ければ何も始まりません。

今回は、クリスマスということで、師母への贈り物を持ってきました。

ただ高いものを無差別に贈ればいいというものではありません。

贈る人が喜んでくれるものを一生懸命考えることに意味があるのです。

それは、日頃の何気ない会話や、身に着けているものに気を配って
いなければ、思い浮かんできません。

時には、積極的に“さりげなく”聞いてみることも必要です。

練功だけが学びではありません。

生活の中にこそ、真の学びがあります。

私は幼い頃から「完ぺき主義」「神経質」「心配性」「考え過ぎ」と
指摘されてきましたが、この道を歩み始めてから、これらの性格が
災いしたことは滅多にありません。

ラッピングにも決まりごとがあります。

日本だと、シックなモノトーンが好まれたりしますが、中国伝統の
習慣では縁起が悪いのでダメです。

国旗が表しているように、一番良いのは紅で、次に黄色です。

師母への心意

元気な色というのは、幸せな気持ちになれます。

贈り物を考えるのは、とても大変ですが、喜んで頂けたときの
嬉しさのほうが何倍も大きいです。

大事に大事に心意(お土産)を抱えて、極寒の北京の早朝の道を
30分歩いて師のオフィスに向かいました。

ドアを開けて下さったのは師母でした。

どうやら風邪を引かれているご様子です。

今年の北京の冬は30年に1度の寒さらしく、現地の人たちも風邪を引いて
いる人がたくさんいるそうです。

緊張しながら師のいらっしゃる社長室に入室すると、麻林城老師は
貫禄のある紫のシャツを着ていらっしゃいました。

麻林城老師は非常に厳格で威厳のある師です。

普段着でも迫力があるので私はしょっちゅう立ちすくんでしまうのですが、
正装をされているときは、特に圧倒されてしまいます。

モゴモゴしていると、弟弟子が到着しました。

師のご様子がいつもと少し違うので、どうされたのだろうと思っていると
どうやら師もご家族に風邪をもらってしまったようです。

しかし、

この時点、つまり AM 8:30 から PM 12:30 までの合計4時間、
師は私たちのために中国伝統武術の理論の授業をしてくださいました。

そして師の風邪の症状は30分ほどでみるみる消えてしまいました。

最初の1時間、

日本から持ってきた当会クラスの練習風景の録画映像を見ながらのお話。

2時間目、

太極拳の拳論について。
(師は八卦掌以外にも、あらゆる武術の理論を学ばれています)

3時間目、

動作の虚実の循環について。

4時間目、

中国武術の核心である、一秒満たない瞬間について。

簡単にまとめると、このような流れでした。

特に感銘を受けたのは、このお言葉です。

「技術は教えられるが、学生の悟る心を開くことができないのは、中級の教師である」

「技術、そして学生の悟る心、この両方を教えられるのが一流の教師である」

悟る心を、中国語で『悟性』と言います。

師のお話は、雛が卵から孵るのと似ています。

雛は、孵化の時期が訪れると、卵の殻を内側から突いて外の世界へ出ようとします。

親鳥は、殻の外側から突きます。

これが早すぎても、また遅すぎても成りません。

『師弟』という言葉にしてしまうと、私たちは何となくイメージで理解できたと
思ってしまいますが、そう簡単な関係ではありません。

お互いが真剣でないと成り立たない縁です。

私は、自分が求めて求めて、求め抜いた師に出会えて、本当に幸せだと思います。

四時間の授業はとても集中力が必要なので、弟弟子と私は少し放心していましたが、
この日はクリスマスということで、師と師母が食事に誘ってくださいました。

食事中も、もちろん武術のお話です。

そして、食事が終わったら、休むまもなく午後の練功です。

場所は、師の社長室から見える、ビルの中庭です。

練功場

そこで!

弟弟子が30分ほど逃走・・・

どこへ行ったのかと心配していると、戻ってきて一言、

「だめだ、集中力の限界だった、ちょっと外を散歩してきた」

そうか、こういう息抜きも必要なのだな、と思いました。

冷風吹きすさぶビルの5階の中庭で・・・

弟弟子と私は、「寒いよ~、寒いよ~」と繰り返し悲鳴をあげながら、
しかし最終的には歯を食いしばって一生懸命練功をしたのです。

つづく

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