コラム

 公開日: 2012-12-24  最終更新日: 2014-07-31

冬季訪中修行(二)

2012年12月23日、朝8時。

前夜に隣の部屋のドアが「ガチャガチャ、バタン!バタン!」と
何度も開け閉めされており、その度に自分の部屋のドアが開けられた
ような気がするので何度も目が覚めたのですが、明け方には静かに
なったらしく熟睡できていたので、目が覚めたときは、前日の
疲労困憊は嘘のように回復していました。

正直、今回の訪中修行の前半は寝込んでしまうのではないかと心配して
いたので元気になったのが嬉しくて、練功用の服を着込んで、
まず朝ご飯を食べに外に出ました。

今回は、お馴染みのホテルがやっと改装が終わって泊まれるようになって
いたので、とても便利です。

自主練功ができる公園と、行きつけの軽食チェーン店と銀行が目の前
にあるので、遠くに行かなくて済みます。

ちょっと寝坊をしてしまったので、人気の豆乳は案の定売り切れており、
仕方ないのでワンタン・スープと包子を食べました。

食べた瞬間、あまりの美味しさに体が少し震えました。

私はニンニクや香辛料が苦手なので、日本に居るときは殆ど食べないの
ですが、中国に来たらそんな選り好みは言っていられないので、何でも
食べます。

少しニンニクのきいた野菜の包子と、スパイシーなワンタン・スープで
ホカホカに体が温まったので、さっそくすぐ隣の公園に練功に行くために
店をでました。

すると、これまたよく甘栗を買っていた小売店の“糖葫蘆”(タン フー ルゥ)
が目に留まり、食欲に火が点いていた私は、ついつい買ってしまいました。

“糖葫蘆”(タン フー ルゥ)山査子(サンザシ)

気温は氷点下で極寒でしたが、お天気が良くて、体調も良くて、
なんだか気分もウキウキしてきたので、満面の笑みを浮かべて公園で
糖葫蘆(サンザシ飴)を食べていると、通り掛りのおじさんが、

「良さそうな糖葫蘆たべてるねぇ、いくらした?」

と話しかけてきたので、

「うん!三元」

と答えると、

「そいつはよかった」

と声を掛けてくれて、一気に現地人に戻りました。

唯一、練功をしていても野次馬に囲まれないのがこの場所です。



小さい松の木が何本か生えていて、ちょうど隠れられるようになっています。

お腹が一杯だったので、激しい動作はできず、ゆっくりと深呼吸をするように
八卦掌の基本功で、しばらく体を動かしました。

しかし、銀行へ行って両替をしてホテル代を払って、練功服の職人さんに
会いに行く列車の切符を買いに行かなければならなかったので、午前中は
早めに切り上げて、用事を済ませに向かいました。



午後、一番暖かい(と言っても氷点下ですが・・・)時間帯、
公園には多くの人たちが様々な活動を行っています。

広場の中央に集まっている人たちは、私が勝手に名づけているのですが、
『手叩き足踏み・念仏の会』です。

「パ~チ、パ~チ、パ~チ、パ~チ」

と全員揃って手を叩きながら、

「のうりょく、ぞーきょー」

「せいしん、アーップ」

「しこ~りょ~く、ほうふ~」

「ふろ~、ふ~、し~」

「経絡、スムーズ」

といった、とても健康に良さそうな文言をひたすら唱え続ける
集まりです。

最初は5~6人から始まるのですが、いつも終わる頃には大人数に
膨れ上がっています。

同じリズムで、簡単な言葉を唱え続けるのは、傍から見ていても
トランス状態になりやすいです。

そんな集いのすぐ横で、私は黙々と八卦掌の八つの型をとりながら
ひたすら円を回っています。

とてもシュールです。

・・・

この時期、屋内と屋外では、気温差が30度近くあります。

少しずつ体を慣らさないと参ってしまうことは明白だったので、
私はいつもより気をつけて体の状態を見ていました。

練功を始めて30分後...

体が冷え始めたので、無理をせず近くのケンタッキーに行って
おやつを食べました。



中国のケンタッキーには豆乳があります。

甘くて美味しいです。

私の体質は燃費が悪い車のように、すぐガソリン切れになります。
特に極寒の北京では、体温を保つだけでかなりのエネルギーが必要です。

過度の疲労を避けるため、お腹が空いたら、すぐ食べるようにしています。

豆乳とチキンで体を温めて、またすぐ練功場所に戻りました。

しかし、体を動かしていても、いつもと感覚が違います。

「なんだろう?これは・・・」

毎年この時期の訪中修行では、寒さで体がつらくて逆に気合が入るのに、
なぜだか何も感じません。

どうやら、体が麻痺しているようです。

私はまず、12月に入ってから軽い痛みが発生していた左肩甲骨の神経痛
(OL時代に長時間パソコンを使ったことによって傷めた古傷)
を整えるよう調整しながら、八卦掌の歩法を行いました。

しばらくすると、左肩甲骨の痛みは、左腰まで下りてきました。

今度は、その左腰の痛みを流そうとしたのですが、どの動きも、
どの型も、その痛みの核に届きません。

「おかしいなぁ」

内面の筋肉を使って、かなり強い負荷を掛けて何度もアプローチ
したのですが、あらゆる動きを行っても、まったく届きません。

私は考え方の角度を変えて、左腰に力を流して揉むのではなく、
左足を上げた時に、逆に腰に流れる力を緩めてみることにしました。

これが正解でした。

三歩目で、左足を地面に置いたときに温かい熱を感じました。

「これだ」

繰り返していると、徐々に左手と左足の裏に、ほぼ同時に熱が伝わる
感覚が得られるようになりました。

「通った!」

実に、3分ほどで左腰の痛みは消失しました。

恐らく、ある程度の動きを行える筋肉は既に十分についており、
これから必要なのは、その筋肉を使って熱量を発し、しかし最小限の
消費で運動を行えるように“緩めること”が求められるのではないかと
思いました。

ホッカイロは真冬の北京では役に立たないので、持ってきていません。

自力で体温を上げるしか、方法はありません。

腰を意識的に、もう一段階緩めることで、不思議と左足はホッカイロを
踏んでいるような熱を感じます。

左手も、熱いお茶を入れた湯のみを触っているように熱くなります。

氷点下の室外で体を緩めながら体温を上げるのです。

中国伝統功夫とは、実に深遠です。

しかし、今日はここまでです。

これ以上、この感覚を追い求めるのは誤りになります。

それは、欲になります。

もっと体を治したい、という欲です。

私は過去、欲ばって何度も失敗をしています。

途中まではいいのですが、一気にやりすぎると体が疲労するのです。

それを経験で知っていたので、腰の痛みが消えると、また何も考えずに
いつもの練功に戻りました。

一度知れは、潜在意識が“体の自己調整機能”として憶えてくれるので、
意識的に故意に働きかける必要はありません。

「体がある」

ということは、とても苦しいことでもありますが、
楽しむ方法を知れば、これほど興味深く楽しいものはありません。

当たり前のことですが、私たちは、この一生を、死ぬ最後のその日まで
この体と共に過ごします。

私は幼い頃から、

「私の細胞は哲学でできている」

と感じていました。

そして、大人になって、その意味を自分で証明することになりました。

私もコンプレックスは、たくさんあります。

でも、いまはそのコンプレックスから、たくさんの学ぶ楽しさを
与えてもらっています。

『自力・ホッカイロ現象』を体験できたのも、体の動きの偏りが
“冷え・痛み”という症状を起こし、その治癒ができたからです。

これは、師より教えを受けた言葉です。

「最も良い状態は、常温である」

この「常温」を目指すため、未熟な私は熱くなったり冷たくなったり、
試行錯誤を繰り返しますが、しかし感覚とは生きている証拠であり、
有り難いことです。

この日は、まだまだ体調が万全ではなかったので、早めに晩ご飯を
食べて(食べてばかりいるようですが、食べてばかりいます)
ホテルに戻りました。

↓定番の『紅焼牛肉麺』


弟弟子から電話が掛かってきて、

「北京に着いたの?いつから老師のところにくるの?」

と聞かれたので、

「12月は日本は忙しくて、ちょっと疲労してるから、二日間回復に努めて連絡する!」

と言うと、

「それが懸命だ、元気がないと老師も心配してしまうから、まずはゆっくり体を休めて!」

と言ってくれて電話を切りました。

・・・

そして、この夜、私はドライヤーを忘れてきたのを忘れて、髪を洗ってしまったのです。

つづく

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