コラム

 公開日: 2018-02-20  最終更新日: 2018-04-04

急落相場「今、売っておかないともっと下げる」に注意 富裕層の投資戦略は?

2018年2月5日、6日の米国株式は記録的な下落となりました。しかし富裕層は株価急落時にも慌てることなく、大きな損失を計上していないケースもあるのです。グローバル投資で長く運用で成功している富裕層の投資家は、相場下落にどう対応しているのでしょうか?いくつかのポイントを紹介します。

■インカム戦略では影響は限定的


富裕層はグローバルな投資を行い、様々なアセットクラスに分散投資を行っています。債券から株式へという動き、「グレート・ローテーション」の流れが数年前から加速しました。しかし資産の100%を株式投資に振り向ける富裕層は知り得る範囲では少数派です。

今回の株式下落時に米国市場では逆に価格が上昇したセクターがありました。例えば、米国投資適格社債、米国物価連動国債、米国短期債などでした。仮に相場が株式上昇の後に下落となり、投資した価格=取得価格とほぼ同じ水準であったとします。しかし株式や債券の配当(インカム)は着実に増加してゆくのです。

債券や高い配当の株式などのインカム戦略を考慮した資産配分=アセット・アロケーションを用いた運用では、株単体に投資している場合よりも下落の影響は限定的だと考えることができるのです。

■下落の要因を探り、把握する


2018年2月の米国株式の大幅下落の要因は、10年物の米国長期金利が一時2.88%(2/5)まで切り上げ、金利上昇の悪影響(企業の資金調達コストの上昇、個人消費が減退するなど)が想像されたことが理由との見解がありました。世界株式は安定的な上昇で適温相場(ゴルディロックス)を続けてきました。金融緩和による資金供給によって「高い利回りを求める資金」は、一部では過熱感があった部分は否めないでしょう。特定の新興国や、ハイ・イールド社債市場には資金が入り過ぎてきたと筆者は考えています。

そして下落相場になった場合、コンピュータのプログラム売買では、更に売りの指図が出され「売りが売りを呼ぶ」ために、大きな下落となる場合も考えられるのです。

ずっと上昇基調であったものが、調整として時に下落することは決して不思議な事ではありません。NYダウは1日で4.6%もの下落(2/5)でしたが、前年との比較では依然としてプラス21.3%で推移していました(2/5)。長期投資をしている富裕層は株価下落で大きなダメージを受けているというわけでもなさそうです。一方レバレッジを利用している投資家は下落時に追加担保の差し入れが必要となる場合があります。しかし、過度なレバレッジのリスクを十分理解している富裕層にとってダメージは限定的と考えられます。

世界経済は景気後退に入ったのでしょうか?筆者は例えば米国の経済などは、必ずしも景気後退期に入ったわけではないと考えています。

■富裕層は販売者の言う事を鵜呑みにはしない


相場が下落した場合にパニックに陥ってしまい、良く現状分析や判断をせずに、「みんなが売っているから」といった曖昧な理由で、投げ売りしてしまうことは避けたいものです。証券や銀行などの営業員にとって株価の急落の場面は、理由の付く「今、売っておかないともっと下げますよ」といったセールスの材料にもってこいだとも考えられます。売却時に手数料のかからない投信の売却であったとしても、セールストークかも知れないのです。

顧客が売却して資金化していれば、次の投信、次の株式などの金融商品を顧客が購入する時に手数料のチャンスがあるからです。資金化により、今後の取引見込み先にノミネートされても不思議はないのです。

富裕層は販売者の言う事を鵜呑みにはしません。自らの資産が増えるために最善を尽くす「契約資産額×報酬率」、いわゆる残高連動方式のアドバイザー(RIA:投資助言業)や、残高連動方式の信託の運営者の助言などを重んじるのです。日本では投資助言業はわずか500事業者ですが、本場米国のRIAは2万6000事業者にも及んでいます。

■沈没船ジョークで日本人に効果的な言葉は?



余談ですが、沈没船ジョークを聞いたことがあるでしょうか?豪華客船が沈没しかかっており、救出用ボートは人数オーバーだとします。船長が乗客を海に飛び込ませるために使う言葉が、国民性によって効果が違うことを想像した冗談です。



女性好きとのイメージがあるイタリア人に対して効果のある言葉は「海で美女が泳いでいますよ」

品位あるジェントルマンを目指すイギリス人に対しては「紳士はこういう時に海に飛び込む行動が求められます」

規律を重んじるドイツ人に対しては「規則ですので海に飛び込んで下さい」

そして、日本人に対してはこう言うのです。「みんな、もう飛び込んでいますよ」

相場下落局面で日本の国民性、行動経済学を理解したセールスマンが、「みんなが売っていますよ」と言うことは不思議ではないのかもしれません。



安東隆司 著書に『個人型確定拠出年金iDeCo プロの運用教えてあげる!!』等がある。

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