コラム

 公開日: 2018-03-06 

補助金の事業が年度内に終わらなくなったらどうする?~中小企業経営者のための補助金講座④~

前回は、補助金で行われる事業期間が実は12か月ではなく、実質半分になっていることをお話しました。

《事業は、会計期間に合わせてくれない》
今回は、この間に事業が終わらなかったらどうなるのかをお話します。
前回もお話しましたが、国の会計期間は4月1日に始まり、翌年の3月31日の終了することが、財政法という法律で定められています。
国のお金の出入は、原則としてこの期間内に終えることとされています。でも、そうはいってもいろいろなことがありますし、相手の都合もありますから、お願いしたものが入ってこないとか、現場の都合でどうしても無理ということも考えられます。

《年度を跨いでお金を使い仕組みはある》
そんな時は、普通、未収金・未払金、前受金・前払金を計上したり、大掛かりな工事などですと工事進行基準で費用計上を調整したりしますよね。
国の場合も、支出について同じような制度が設けられています。
国の予算については、先述したとおり年度内に事業を完了させ、終わらない場合はその部分を不用とするこることが原則とされていますが、例外として、翌年度に事業を繰り越して実施すること認めるこの制度は、歳出予算の繰越制度といいます。名前のとおり、歳出予算そのものを翌年度に繰越すので、工事進行基準の方に考え方が近いと言えるかもしれません。

《繰越してお金を使える仕組みとは》
ただ、これは全ての経費に認められているわけではなく、予算を作成する段階で事業の内容や経費の特性から繰越す可能性がある(かもしれない)経費をあらかじめ特定して国会の承認を得ておくのもので、この経費を繰越明許費といい、この制度による繰越を「明許繰越」といいます。
予算の原則から外れることを予定するかに見えるこの経費を予算計上するのは、どんな経費でも良い訳ではなく事業費を中心に、何をどんな条件で認めるのかなど財務省と各省と調整を経て決められます。当然、人件費や普通の事務費などは認められませんが、多くの補助金は繰越明許費となっています。

《予期しない事故の時にも繰越せる》
それでは、そんな厳しい条件をクリアできた経費以外は、絶対に繰越すことはないのかと言われれば、もちろんそんなことはありません。台風とか火事とかありますし・・・。 
そんなとき、繰越を認められるのが事故繰越です。この場合、事業費に伴って必要になる関連の事務費の繰越も認められます。

《繰越の手続きは面倒?》
では、そんな事態が起こった場合、どうすることになっているかということですが、国の財政手続の基本法である財政法などでは、繰越計算書を作成して、その事由と金額を明らかにしてその年度の3月31日までに財務大臣に送付、その承認を得ることになっています。
 年度内に事業が終わらなそうだったら、財務大臣に相談しなさいということなのです。

《予算の使い方は大臣の権限で決められる》
勿論、何でもかんでももち込んでいいですよというわけではないのですが、その事業の性質から言って、年度を超えてしまうということだけで、事業を途中で終わらせてしまうという判断は、多くの場合合理的でないことが多いので、各省の大臣の判断を基本的に尊重しますということなの(だろう)です。
何故かといえば、当該省庁の予算の執行権限と責任は全てその大臣が負うことになっているからです。いちいち、財務大臣の許可をもらわないと決められない大臣なんて大臣じゃないですよね。
今日のおかずを何にするか、隣の奥さんに許可をもらうようなもんですから・・・。

《霞が関では、どうしてるのか》
これを受けて、霞が関ではどんなことが起きているかといえば、予算の年度区分の原則を逸脱するものなので、ほとんどの場合、認められていないのが実態と言わざるを得ません。
財務省が認めないのではなく、財務省が認めないと思っている各省の官房又は官房が認めないと思っている所管局課が認めないのです。
何故でしょうか。予算の執行は自分達の権限や責任であることに対する理解が十分でないのです。うちの奥さんより隣の奥さんのほうが偉いと思っているのです。
そして、繰越は年度区分の原則を逸脱するものではなく、翌年度の歳出予算として翌年度執行されるだけのことという財政法上の整理に対しての理解が十分でないのです。

《それでは、補助金の場合はどうなるのか》
ここまで繰越についてお話しましたが、ここで前回の図-1をご覧いただきます。

事業実施パターンと年度区分

これまでのお話は、前回の「①通常のパターン」と「②補助金等の予算執行のパターン」で、どちらも国自らが予算を執行するものです。
問題は、「③現在よくあるケース」の場合です。
事業は、2月末までに終了することが求められていて、事業期間が翌年度とつながっていないので、何かあった場合には、終わらない部分は不用にするか、翌年度改めて申請し直して8月に再スタートさせるという、超非現実的な対応をするしかなくなるのです。

《今のままでは、補助金の繰越は難しい》
この場合、交付事務を行っている補助事業者は、交付元の担当者が官房や財務省に繰越の協議をためらう以上にためらうのは明白です。
財務省や官房に原則を逸脱する事態をもち込むことはできないのです。
なぜなら、間接補助事業者の事業状況の把握・監督が十分でないとされて、翌年には仕事がなくなるかもしれないのです。
補助金は、民法上の契約ではなく、その決定は交付という一方的行為によってなされるため、(補助金を受けられなくなることは、利益に浴することはできませんが、不利益ではないので)不服を申し出ることもできないのです。

《補助金を受ける方は、どうなってしまうのか》
それに対する対策は、「すべてのものは2月までに終わったことにしておいて、事業報告書は本当に事業が終わったときにこっそり差替えておこう・・・。(ここは憶測です?が)」となって、事業の実体がかくされることに繋がってしまうのです。

《補助金本来の成果に目が向かわない》
前回お話した経費に流用などと同じように、事業の成果よりも計画通り進めることに目が行き、繰越というわかり易い事態に、年度区分の原則という「印籠」をかざせば、みんないい人でいられて丸く収まるのです。

《国の予算の1/3に使い方が心配》
全てがこういうことになっているというつもりはありませんが、予算の1/3を占める補助金等の執行が、本来の事業目的ではなく、予算執行の形式だけにとらわれるとしたならそれは大きな損失でしょうし、財務省はさすがに優秀な人が多くいます。わざわざ、余計なおせっかいはしないかもしれませんが、財政法の条文の解釈はきちんとできていると思いますし、政策の効果が十分にあがることを願っているのです。

《多くの事業者は、まじめにやっている》
前回も言いましたが、最近また話題になりだしたM学園やPコンピュターを擁護するつもりはありませんし、不正行為にはもっと罰則を強化するべきだと思います。
一方で、補助金等を活用して、自らの事業を発展させ我が国社会に貢献している企業や法人、研究者の方々がたくさんいらっしゃって、今回の様な事例が起こるたびに、「補助金に群がる人間は、皆悪人」であるかのような風潮になり、法の運用を厳しくすることが「角を矯めて牛を殺す」事態になることを恐れるだけでなく、日本という国にとって大きな損失になると憂慮するところです。

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