コラム

 公開日: 2017-11-17 

「働き方改革」で中小企業がやるべきこと

10月に行われた総選挙は、いろいろなことがありましたが結局は与党、特に自民党の圧勝で終わりました。
現政権の主要政策は、「経済再生」。バブル崩壊から我が国の経済は、「失われた10年」と言われ、いや「失われた20年」と言われてきました。

バブル景気が終わったといわれる1991年から今年で27年、選挙のころには、景気の拡大が2012年12月から4年9か月続き、「いざなぎ景気」に並んだとのニュースが流れました。そういえば、選挙戦での安倍首相の街頭演説では、有効求人倍率が全ての地域で1.0を超えたと言っていました。(有効求人倍率とは、求職者数に対する求人数の割合。なるほど、私のふるさと北海道でも1.08)
しかし、同じニュースで景気拡大の実感がないとも報じています。
その根拠として、労働者の実質賃金の減少、労働分配率(付加価値(大雑把に粗利)のうち賃金の割合)の減少などを挙げています。
いわく、「利益を会社がため込んで社員に還元されていない」と。

確かに、バブル崩壊以降の実質賃金はマイナス傾向が続いていますし、先ほどのニュースで景気が拡大しているといわれる期間(2013~2015)の最終家計支出は△1.6%(GDP成長率は、2.9%)とやはり低迷。
そこで、「日本経済再生の最大のチャレンジは働き方改革」となった訳です。
具体的には、処遇の改善(賃金引上げと労働生産性向上が中心)、制約の克服(長時間労働の是正など)、キャリアの構築(女性・若者の活躍、高齢者の就業促進など)の3本柱のもとに19の対応策が挙げられています。
これらの政策を進め、消費を拡大によってGDPアップを図ろうという訳です。

GDPといえば、一国の経済活動大きさを付加価値の総量として表したものですから、粗利の総量ともいえるわけです。
会社で考えてみると、粗利は、従業員の給料と設備費(減価償却費)、支払利息などの経費と利益ですから、GDPとは従業員の給料(労働力)と、会社運営費用(資本力)と利益の総量と言えそうです。(相当に大雑把なお話ですが)

ここで「働き方改革」の内容について考えてみましょう。
①賃金引上げと労働生産性向上…賃金(労働分配率)を上げて生産性を向上させようとすると、(粗利の総量はかわらないので)その分だけ資本量を減らすことになり(トレードオフの関係)、GDPは増えないのです。
②長時間労働の是正…気が付かれた方もいらっしゃるかもしれませんが、労働時間が単純に(給料が上がらずに)減少すれば、労働の総量が減少するのでGDPは減少します。(実際に、労働時間を削減する法改正があると、GDPの伸びにマイナスの影響を示すという報告があります)
そこで、総労働量を確保するために③女性・若者の活躍、高齢者の就業促進が意味を持ってくることになりますが、生産性という意味では逆の効果の可能性が高くなります。(粗利のうちの資本量が減少する)
「働き方改革」のいちばんのスローガンがGDPの成長に結びつくためには、①から③がバランスよく行われることが大事なのですね。

しかし、問題はまだあります。GDPの成長要因である労働生産性の関数である資本力と労働力は、トレードオフの関係にあると述べましたが、今回説明した3つの政策はつまるところ労働力増なので、GDPアップには寄与しないことになってしまいます。

これだと給料は上がっても会社が潰れることになりはしませんか?

そこで登場するのが全要素生産性(TFP)です。

もともとは、数量(お金)で表すことができない残差と呼ばれていたのですが、生産性を上げる「質」の要素といわれ、先進国の経済成長の本質は、このTFPによる部分が大きいということがわかってきました。(一般的に言われているのは、技術革新、正規雇用が寄与しているといわれています)

そこで、「働き方改革」では、正社員化も求めています。それは、正規雇用の方が、非正規雇用より労働の「質」が高いことが、統計的に言われているからでしょうが、両者の差のもとは、やる気や会社への忠誠心、知識の蓄積にあるとされます。

「働き方改革」で中小企業に求められるのは、こういった質の改善の取組みです。賃金アップに対する優遇税制などいろいろな施策を活用しながら、働き方の質を改善することで成長のチャンスをつかむことなのです。

ここで、銀座九兵衛店主今村洋輔さんのお話です。
「仕事というのはもちろん報酬を得るためにやるというのもあるけれども、やって楽しいとか、この道を突き詰めたいというような気持ちがなければ続かないと思うんです。会社というのは、そういう社員一人ひとりの思いを実現するための手段だと私は考えています。そのためには商売も上手くいっていなくてはいけないし、それによってまた社員の生活がよくなるし、表裏一体なわけです。私が、円を描いて二つに割ったら、社員とお客様しかいないんです。けれども、それはどこにも売っていない。どこの店もお客様はいくらでも欲しいし、訓練された社員も欲しいでしょう。でもそれは、自分が努力して獲得するしかないんですね。」(「致知」(2016.2)「天ぷら「みかわ是山居」主人早乙女哲哉 との対談」より)
なるほど!


中小企業にとって最大の経営資源、「人と組織」から考えます。
http://www.oka-masa.info/

外国人研究者のための法人を立ち上げました。留学生やワークショップにも大手不動産会社と連携して支援します。
また、地域文化と外国人、地元企業と首都の企業の協働をプロデュースして、地域から日本を発信します。
http://www.glcc.or.jp/

この記事を書いたプロ

岡部コンサルタンツ [[[ホームページ http://www.oka-masa.info ]]]

経営コンサルタント 岡部眞明

東京都千代田区神田錦町3-21 ちよだプラットフォームスクウェア [地図]
TEL:090-6959-9897

  • 問い合わせ

このコラムを読んでよかったと思ったら、クリックしてください。

「よかった」ボタンをクリックして、あなたがいいと思ったコラムを評価しましょう。

1
<< 前のコラム 次のコラム >>
最近投稿されたコラムを読む
 
このプロの紹介記事
岡部コンサルタンツの代表の岡部眞明さん

経営も事業展開も社長の「心の在り方」が変わればすべて変わる(1/3)

 「中小企業は、いわゆる“経営学”がそのまま成り立たないと実感しています。なぜかと言いますと、社長の人間性や個性、人と人との結びつきやご縁など、ひっくるめたものが経営に直結します。ですから、経営を盤石にし継続的に発展・安定させるには、社長自...

岡部眞明プロに相談してみよう!

朝日新聞 マイベストプロ

財務、人・組織、経営基盤、ビジネスモデルを総合的に診断、支援

屋号 : 岡部コンサルタンツ
住所 : 東京都千代田区神田錦町3-21 ちよだプラットフォームスクウェア [地図]
TEL : 090-6959-9897

プロへのお問い合わせ

マイベストプロを見たと言うとスムーズです

090-6959-9897

勧誘を目的とした営業行為の上記電話番号によるお問合せはお断りしております。

岡部眞明(おかべまさあき)

岡部コンサルタンツ

アクセスマップ

このプロにメールで問い合わせる
プロのおすすめコラム
補助金不正の裏側にあるあまり言われない問題~経営者が知っておくとチョット得するシリーズ①~

昨年末にスーパーコンピューター開発に対する補助金の不正受給に係る詐欺事件で社長が逮捕される事件がありました...

経営理念を実践する

経営理念は、会社の向かう方向や考えを示すために必要なものです。でも、それをどう実践できなければ意味があり...

籠池問題に補助金等を考える~補助金を有効に活用するための基礎知識~

今年の国会は、森友学園が、大阪豊中市に建設していた小学校をめぐって、国会は、そしてマスコミも大騒ぎといった...

深山の桜~古典から経営を考える日本人の心~

桜の季節になりました。東京では3月21日に開花宣言が出されました。満開は、3月末頃になるとのことです。今回は...

トランプ大統領とブッシュ元大統領~本当に強い経営者の答えはないけれど、想像できる~

トランプ大統領の発言に関連して何度か取り上げさせてもらいました。入国規制の問題や貿易についてなど、発言の内...

コラム一覧を見る

スマホで見る

モバイルQRコード このプロの紹介ページはスマートフォンでもご覧いただけます。 バーコード読み取り機能で、左の二次元バーコードを読み取ってください。

ページの先頭へ