コラム

 公開日: 2018-06-29  最終更新日: 2018-07-07

覚えておきたい! 今回の相続法改正のポイントは?




【今日のポイント】

 ここにきて再び相続に関する問い合わせが増えてきました。 特にようやく今回の相続法の改正内容について自分の家庭の場合にどう関係してくるかを気にするケースが目立ってきました。

 これらを受けまして、今回の相続法改正の中で特に我々の生活に身近な改正点について紹介していきます。


【主な改正点:配偶者居住権の新設】

 
〇 現行法の問題点
 例えば遺産の過半を占めるのが試算として評価額が高かった自宅の場合で、その住まいの名義人である夫が亡くなった際に遺された配偶者の妻と子供たちで遺産相続をすることになります。

 この場合、他の財産だけでは法定相続分の遺産分割が出来ないとなりますと、住み慣れた自宅を売却して相続財産に変えて分配を行う方法と、遺された配偶者に配慮して自宅の所有権を得ることで、そのまま住み続けられる方法があります。 ですが後者のやり方の場合、遺された預貯金等の金融資産は、法定相続分の関係で大幅に削減(相殺)されることとなり、住まいは確保出来たものの、当面の生活資金にも事欠くという事態を招き兼ねませんでした。

〇 配偶者居住権とは?
 今回新設された配偶者居住権は、一言で言えば「遺された配偶者が亡くなるまで今の住まいに住み続けることが出来る権利」となります。 

 ここのポイントは、「所有」でなくて「居住」の権利という点です。

 通常、居住権の算定評価額は所有権を下回ります。 なぜならば居住権には「住宅を売却する権利」は含まれていないのです。 その代わり、低めの評価額として算定されることから、所有権の場合と比べて差額が生じます。 この差額分は遺産分割の際に預貯金その他の財産分与に反映されますから、多めの金融財産の相続が叶う事となり、遺された配偶者の生活の保護に繋がります。


 

【主な改正点:自宅の生前贈与】

〇 現行法の問題点
 現状では自宅の名義人が遺言書で「自宅は遺産は含まない。」といった当事者の「特別な意思表示」が無い限り、自動的に「遺産分割の対象」とされてました。 後悔先に立たずで、口頭で意思を表示していたとしても、効力は認められませんし、まして急逝などで意思表示すらしないまま相続が発生していたら「遺産分割の対象の財産」とされてました。

〇 自宅の生前贈与
 この事態を受けて、今回「婚姻期間20年以上の夫婦」の場合は、「配偶者に住居を生前贈与、又は遺贈すればその住居は遺産分割の対象外とする。」という形式に改正されたのです。 上記の配偶者居住権と併せて、事実上配偶者にはその他の遺産の取り分が増える効果を生じさせるのです。

 双方に共通するのは、「遺される配偶者の生活保障」ファースト、という思惑です。

 ですが、注意すべき点もあります。

 上記の様な制度を活用し、配偶者への一次相続で財産のほとんどを相続させてしまうと、その次の二次相続(配偶者から子供へ)の際に子供の控除枠が大幅に減額されます。 そのまま子供たちの相続税負担は過重になるというリスクもよく検討する必要があります。 「渡し過ぎのリスク」にも留意しなくてはいけませんね。



【主な改正点:自筆証書遺言を法務局が保管する制度】

〇 現行法の問題点
 自分ひとりで作成出来、内容に問題や不備さえなければ作成に関して殆ど費用も発生しない等の理由から自筆証書遺言を選択するケースは今も少なくはありません。 ですが最大の問題は、「その遺言書をどう保管するか?」でした。 家族と同居の場合は、簡単に目につくような場所に置くことは盗難、改ざん、もしくは書き換えの強要などといった家族間の争いの火種になってしまいます。 この反対に一人暮らしの場合は、「どうやって保管場所を知ってもらうか?」が問題になります。 悪くすれば存在に気付かれないまま遺産分割協議によって自分の意向に反した形の遺産相続となるケースもあるのです。 「見つかりにくく、見つけやすい」 場所についての悩みが課題でした。

〇 法務省保管制度
 この流れを受けて、今回保管の安全性が確保され、かつ相続人が遺言書の有無を迅速に確認出来ることを目指して法務省が自筆証書遺言を預かるという制度が生まれました。

 これまでの最大の問題点だった自筆証書遺言の保管場所として、最大限の安心安全が確保出来ることにはなるのですが、要注意点があります。

 あくまでも法務省は確保するのは遺言書の保管だけです。 遺言書の内容までが保証されたのではないという点です。 相続発生後、保管されていた遺言書を確認し、内容を確認したところ、記載事項に誤記、不備があれば何の意味も持たなくなります。 自筆証書遺言の法的効力の有無はあくまでも作成者本人の責に帰すのです!


【主な改正点:仮払い制度の新設】

〇 現行の問題点
 現状では世帯主が亡くなったことっを知った金融機関は即時に名義人の口座を凍結、遺産相続が成立するまではおカネの出し入れが出来なくなります。 全ての生活費が故人の名義であると、葬儀費用はもとより、遺族の生活費にも多大な影響を引き起こすことが多々ありました。 この様な事態を避けるために、コツコツと生前贈与を繰り返し、配偶者や子供の口座に一定金額を用意するなどの事前対策が求められてきました。

〇 仮払い制度の新設
 この様な事態を受けて、今回遺産分割協議の前でも葬儀費用などの一定の支出に関しては引き出しを認めるという制度が新設されました。 


【その他】

 これまで問題視されてきた「長男の嫁の長年の貢献に対しての報い」に対しても、制度を用意しています。 相続人以外の(長男の嫁)への長年の介護や面倒等の多大な貢献への感謝として、相続人に対し一定額の金銭の請求が出来る制度を新設しました。 

 従来も寄与分、として面倒を看た嫁に直接ではなく、その夫である相続人の相続分への加算が認められるケースはありましたが、実際の事例ではなかなか嫁の貢献を具体的な金銭として評価することは難しく、不十分な対応が問題視されていました。

 ただ、あくまでも「請求できる」制度であって、必ず貰えるという制度ではありません。 他の相続人からすれば、これまでは「相続関係上は他人である」嫁の言い分として無下に扱ってきたことが今後はそうは出来なくなった点は注意すべきですね。

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