コラム

 公開日: 2018-04-06 

適当な年金受給開始時期とは?

 【今日のポイント】

 近い将来に「年金受給70才開始」になるんではと言われています。 つい最近までは60歳で定年退職し、その後は年金生活で悠々自適、が当たり前と思われていたことを思うと隔世の感があります。

 さらに年金の受給開始年齢を固定するのではなく、「繰り上げ・繰り下げ受給の選択」が可能な制度になりました。

 さて、我々の世代は長きにわたって「持ち家がいいか賃貸がいいか」という論争を重ねてきましたが、もうこの年齢ですと今から家を買おうとは思いませんし、今から賃貸を探してもいろいろな制約から最適な物件への入居も難しい状況です。

 結局論争は痛み分けで自然消滅と思いきや、今度はこの「年金受給開始年齢をどうするか?」に関する論争が始まりつつあるのです。

 今日は、適当な受給開始年齢について考えてみました。


【年金受給開始年齢】

 現在の制度では、基礎年金(国民年金)の部分は支給開始年齢が65才からとなります。同様に厚生年金の「定額部分」も65才からの支給開始です。 厚生年金の「比例報酬部分」については順次引き上げる予定で、2025年までに65才支給開始とするとしています。

 細かな計算は省きますが、65才より早く60才から「繰り上げ受給」を選択すると月額で概ね3割減になる計算で、その差は長生きすればするほど拡大していき、77才まで生きたとすれば年金の受取額は65才受給に比べ総額で下回ることになります。 逆に70才からの「繰り下げ受給」とすれば、トータルで30%以上、金額では1,000万前後の「増額支給」となるようです(100才まで生きた場合)

 まるで42,195キロのフルマラソンの最終コーナーに差し掛かった時に、ゴールを50キロに変更する分、完走者への賞金を増額します、さらにゴールを70キロにして完走した場合は賞金倍額!? といっているような制度と思うのは私だけでしょうか?

 

【個々の事情で異なるメリット・デメリット】

 当然ですが、受給開始年齢を変えることによるメリット・デメリットは個人の事情によって変わります。

 ここに総務省統計局発表のデータで「家計調査報告」~2017年版、というものがあります。
これによれば、2人以上の世帯で世帯主が60~69才の場合の平均的な消費支出額は月額で約29万円とされています。
これが世帯主が70~74才の2人以上の世帯になると約23万5千円、さらに75才以上の場合は約21万5千円になっています。 消費金額は年々縮小し、10年前後で月額7万円以上もの差が出ているわけです。

 必要な経費が減少するのに、受給開始時期を繰り下げてまで高額の年金受給を望む?

 この点が論争の焦点となりました。

 さて、意外に知られていませんが、国民年金は受取開始前に亡くなると、年金の支給はされずに「死亡一時金」の支給に切り替えられます。 これが仮に420ヵ月(35年!)以上キチンと毎月保険料を納めた場合でも僅か32万円の死亡一時金が支給されるだけです!!

 支給開始時期は自分で決められます、定年直後の60才の段階で仮にまだまだ元気だからと受給開始年齢を70才として69才で亡くなれば、上記したように僅かな額の「死亡一時金」の支給となるのです。

 前項でマラソンを例えにしましたが、ゴール延長を決めた後に途中リタイアした場合は当初のゴールラインであった42,195キロを完走していても、何の表彰も賞金も与えないということになります。


【セカンドライフありきの年金】

 現状公的年金だけでセカンドライフを送れるというケースは少数派でしょうが、それでも生活資金のかなりの部分を年金に依存することは否めません。 ですが、今は我慢、節制をして75才からの人生に楽しみを取っておきたいとしても、その前に病気や事故で楽しむことが出来ない状態になる可能性は決して低くはありません。 

 とはいえ、早くから支給を開始して月額で差がつくのはどうも抵抗があるという気持ちも分からないではありません。

 定年後も新たな職場に恵まれて再就職や転職が叶ったのであれば、年金を繰り上げる必要性は低くなります。 自営でも生活面で安定した収入が確保出来るのであれば同様です。

 少数派と言いました悠々自適なセカンドライフを満喫できるような場合であれば、繰り下げる必要があまりないと思えます。それならば繰り上げ支給を選択し、余暇に充てる資金の上乗せ分として、より満足のいく内容を楽しめばいいのです。

 要は、どういったセカンドライフを立てているのか?
 自分の健康寿命を想定しているか、想定する為の行動(健康診断等)をしているか?
 月々の生活費からの年間の消費支出等のマネープランを精査しているか?


 繰り上げ、繰り下げの選択も個人の思惑と置かれた環境によってメリット・デメリットは分かれます。 
我々世代の新たな課題であるこの論争もイエ問題同様、結論が出ないままにうやむやになりそうです。

この記事を書いたプロ

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行政書士 寺田淳

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