コラム

 公開日: 2018-02-02 

2022年の生産緑地問題とは?

【今日のポイント】

 生産緑地、この言葉を聞いてピンとくる方は少ないかと思いますが、
近い将来に大きな話題になるであろう問題を抱えているのです。

 今回は今は耳慣れない「生産緑地問題」を採り上げてみました。


【生産緑地とは?】

 生産緑地は「都市農地」とも言われます。 皆さんの周りにも住宅地の中に唐突に野菜栽培をしている土地や収穫後の空き地になっている土地はありませんか? たいていは、ここでいう「生産緑地=都市農地」と思って間違いないでしょう。

 この生産緑地には次のような規定が定められています。

□ 土地の面積が500平方メートル以上であること
□ 農林漁業(この場合は農業)を営むうえで必要な場合は、建築物の新築、改築、増築等が出来る
□ 生産緑地としての告示日から「30年が経過した」場合は、自治体に買取りの申し出ができる
□ 主たる従事者が死亡などで従事できなくなった場合は、同様に買取りの申し出ができる
□ 自治体が買取らない場合は、他の農家などにあっせんする
□ 買取りを申し出た日から3ケ月以内に所有権移転されなかった場合は、制限が解除される

 詳細は省きますが、指定地区数、面積とも東京都が全国最多で、国土交通省の資料によれば全国合計のうち地区数の約5分の1、面積の約4分の1が東京都だそうです。 また、東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、愛知県、大阪府の6都府県=3大都市圏で全体のおよそ8割を占めるとされています。

 この事実からも分かるように、もともと三大都市圏の市街化区域を念頭に定められたのが「生産緑地」でした。


【生産緑地の持つ意味】

 そもそもなぜこのような規定が定められたのでしょうか? 発生の背景は何だったのでしょう?

 かつて不動産バブルの時代に天井知らずの地価の高騰を防ぐために都市部にあった農地に対し、所謂「宅地並み課税」と言われた固定資産税の課税強化を図りました。 これによって住宅地地域に(更なる地価高騰を期待し、耕作もしないで)温存されていた未使用の農地を強制的に放出させ土地の供給を拡大することで需要と供給のバランスを是正し、地価の安定を目指したのです。
 
 そしてこの時に同時に「実際に農地として使用していた土地」の所有者に対しては、「今後30年間の農地使用継続」を条件に宅地並み課税を免除し、固定資産税や相続税の大幅減額によって便宜を図ることにしたのです。

 生産緑地とは、所謂正直者が馬鹿を見ないように という考えからの施策であったと言えるのではないでしょうか?


【迫る30年の期限切れ】

 前項で「30年の農地使用」と書き、生産緑地の規定の中で、「30年を経過した土地は自治体へ買い取りを申し出ることも可能」と書きました。

 実はこの生産緑地の措置の大半が、1992年に実施されていたのです。 この為、約束の30年が経過する2022年には「農業地」から「宅地並み」扱いにされ、固定資産税が一気に跳ね上がるのです。 

 どのくらい跳ね上がるのでしょうか?

 所在地や地積、評価額によって大きく変わりますが、家屋がある土地と更地での固定資産税の差は6倍(家屋付を1とし場合、更地は6という意味)ですが、生産緑地と宅地の差は100倍前後が当たり前、場合によっては700倍の差になるのです!! 

 2017年6月にさらにその地で農業を継続することを条件として、10年毎の延長が可能にはなりましたが、後継者の問題や既に農地使用を断念するような場合は、あまり意味があるものにはならないでしょう。 となれば、次善の策としては、「将来子供や孫に厄介な資産を遺さないように」多くの生産緑地が一斉に自治体への買い取り申請をする可能性が高まるでしょう。

 東京に例を取れば、世田谷区、練馬区に生産緑地が多く存在しています。 今でも住宅地として話題に上るエリアですし、特に世田谷区などは人気のエリアです。 実際にこの地区を散策していると意外な場所に決して狭くはない広さの土地が見受けられます。 

 この様なエリアで想定出来るパターンとして、
特にアクセス面や生活環境において魅力のある場所であれば…
更に現時点で土地所有者がそこで暮らしていないのであれば…

 2022年を機に一斉に売りに出される可能性は少なくありません。 そうなるとその結果、どういう事態が想像出来るかと言えば、自宅近辺にこのようなケースの生産緑地があった場合は、一気にそのエリアの土地の評価額が下落する可能性が出てきます。 もともと農地としていたわけですから交通のアクセスや道路事情は(当初は)問題ではなかったものの、いざ宅地として売り出す場合にはこの点(アクセス面の悪さ等)は大きなハンデキャップになることは確実です。

 さらに高齢社会の進展に伴い、家を買う世代は郊外の戸建てから都心の駅近で利便性に秀でたマンションに関心が高まっています。 関心が薄まる中、供給は増えるものの、需要がなければどうなるか? 

 現在この様な条件の地域に暮らしているものの、近い将来に自宅を売却を予定している方にとっては、その影響は決して小さなものではないでしょう。  貴方の住まいの周囲にあった緑地に、突如「この土地売ります」の告知がされ、その価格が「格安」であればあなたが目論んでいた価格での自宅の売却はかなり困難になります。 下手をすればこれまで進めてきた売却話が白紙に戻される可能性もあるのです!
 
 
 2022年問題は宅地として手放す気が無い生産緑地の所有者にも厳しい選択を突きつけます。
何と言っても、土地神話は今でも根強く残っており、代々の農家であれば「先祖代々受け継いできた土地」を自分の代で終わらせることには相当な抵抗を感じると言われてます。 では高額になる固定資産税を負担して迄維持することに意味があるか? 先にも書きましたが子や孫の代には農地としての使用が望めない事が分かっているならば、自分の代である2022年までに決断をしなくては、という悩みを持つことになるのです。

 
 今年が2018年、タイムリミットまでは4年となりました。
生産緑地の周囲に暮らす人にとっても、生産緑地を所有する人にとっても、2022年は土地の所有に関して決断を求められる期限になるのです。 

この記事を書いたプロ

寺田淳行政書士事務所 [ホームページ]

行政書士 寺田淳

東京都港区新橋2-16-1 ニュー新橋ビル7F ハローオフィスC-3 [地図]
TEL:03-5157-5027

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