コラム

 公開日: 2017-09-08 

持ち主不明の不動産のツケは誰が払う?

【今日のポイント】

 所有者は判明している空き家問題以上に厄介なのが、所有者すら不明になった空き家や、土地の問題です。 なぜ、そのような状態になってしまうのか? そのままにしておくと発生するリスクとは? 相続時の不動産登記の重要性について紹介します。



【なぜ所有者が不明になるのか?】

 まず、所有者が分からない土地はどのくらいあるのか? この6月に「所有者不明土地問題研究会」から発表されたデータによるとその広さは約410万㌶。 これだけではピンとこないと思いますが、九州全土が368万㌶と言えば、その膨大な広さがイメージ出来るのではないでしょうか?

 なぜこれほどの土地が「持ち主不明」になってしまったんでしょう。

 「一人っ子で、子もいない。 両親共々、郷里に土地があるが、自分の後に相続させる相手がいない。」

 「祖父の話では郷里でもない縁も所縁もない場所に土地や山林があると聞いていたが、父も自分もっ実際の現場には行ったことが無い、祖父が亡くなった今、事実確認すら出来ないままだ。」

 「突然実家のあった自治体から、初めて実家以外にも土地があることを知らされた。 今更相続する気も無いし、ましてや税金を払う気もないので、相続放棄したい。」

 上記は実際に相談に訪れた方から出た言葉の一部ですが、このような背景から、故意にまたは意図しないままに所有者がいなくなる=不明の土地が続々と増えているようです。


 

【義務ではない相続登記】

 通常は、居住している自宅や土地は相続発生時には速やかに所有者が決まると相続登記を行い、不動産名義の変更手続きを行います。

 ですが、この相続登記は義務ではありません。 名義変更自体をするかしないか、するとしても何時するのか? すべては新しい相続人の胸先三寸、ということになっています。

 なぜ、相続登記をしないのか?

 土地の存在自体を知らなければ、致し方ありません。 ですが多くは知ってはいたが、怠ったというケースです。 この問題のポイントは、相続時にかかる費用がその土地の評価(資産価値)には関係なく一律に発生することと、手続きの手間も同様にどんな土地であっても同じ手続きになる点にあります。

 土地は「地目」によって 山林・農地(田畑)・宅地・原野等といった区分がされ、地目ごとに評価額が定められます。現状は何年も放置され森林と化している田畑や宅地がありますが、地目上の評価は変わりません。 

 例えば過疎化によってインフラが破たんして、住困難となった「宅地」でも、インフラ整備が十分な場所の「宅地」でも手続き上、費用上は「同一」なものになります。 手間と費用に見合う「資産」であれば、黙っていても手続きをしますが、資産価値を上回るような手間と費用となれば、どうでしょうか・・・?

 これとは別に、故意に、又は意図しないで相続登記がされないままの状態であれば、不動産登記簿上の名義人死亡のまま、相続人(場合によっては相続人以外の第三者)らが事実上の所有者として当該の不動産を使用しているケースもあります。 当初の経緯を知っている人物が健在なうちはまだしも、 このまま次代、次次代と同じことが繰り返されれば、世代交代ごとに法定相続人がねずみ算式に増えていきます。

 仮に何らかの事情でその土地を公的に利用する計画が持ち上がっても、僅かな面積の土地に3桁の法定相続人が存在するという事態に直面すれば、計画は頓挫する可能性が高くなります。

 所有者不明ではありませんが、実際には「所有者が多すぎて誰も手が出せなくなっている土地」もその意味合いは同じことと言えるでしょう。


【問題が顕在化する空き家問題】

 誤解を招くかもしれませんが、山奥の土地や郊外の単なる空き地であれば、周辺への影響はそれほどではないかもしれませんが、問題なのは住宅街にある「所有者不明の空き家」でしょう。

 空き家物件は何も山奥にある郷里の実家だけではありません、23区内にも一戸建ての空き家は続出しています。子のいない夫婦、あるいは子が独立し、老夫婦だけの暮らしの末に空き家となった等々、背景は様々ですが、結果として家を相続する人物が現れず、そのまま無主の家、無人の家となってしまったのです。
 
 空き家と言っても、その中には行楽地や観光地にある別荘のように、所有者が分かっている「季節限定の空き家」も含まれます。最近の調査では全国には約820万戸の空き家があるそうですが、本物の空き家と、こういった空き家の区別は出来ていないようで、正確な事態はこれからの調査に拠るとされていました。

 詳細は省きますが、これまでは個人財産という名目から周囲からの苦情や要請(雑草除去やごみの処理、家屋の解体等)にも適切な対応が出来ずにいましたが、空家法の制定によって放置することが危険と判断された空家を行政によって処理出来るようにはなりました。 ですがこの費用は結局は税金から支出されたものです。 個人の迷惑行為を周辺住人が面倒を見るという理不尽な状態はいずれまた壁にぶつかるのではないでしょうか?


【ツケが次代に与える影響とは?】

 不動産の登記、現在の法律では不動産所有者の情報管理はその目的とされていません。 あくまでも所有権を第三者に明示して、取引の際の安全性を保証するものでしかないのです。

 ですから前述した様に「登録する価値を認めない」土地を「安くはない登記費用」を負担してまで登録することに意味を見出さないというのも頭から否定は出来ません。

 ですが、正確な不動産登記によって正確な固定資産台帳が作成され、固定資産税のシステムが整備されます。
同様に正確な農地台帳が整備されることで、農地台帳システムも整備されます。
正しい地籍調査にも繋がることで自治体による土地管理にも貢献するのです。

 極端な話かもしれませんが、固定資産が不明確なままで年月が経過すれば、固定資産税の税収不足と所有者不明の土地の管理や処分等の費用捻出の為に、他の財源への課税強化という結果を招くかもしれません。 

 放置された空家や無主の土地の存在から周辺の地価の下落や街のスラム化も既に一部の地域では現実化しています。

 今後、団塊の世代が後期高齢者になればますますこの手の問題は増加するでしょう。 少なくとも、「この手の問題は、今後は増やさない」ようにすることを現在の土地や不動産の所有者は真剣に考えるべきではないでしょうか?

この記事を書いたプロ

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行政書士 寺田淳

東京都港区新橋2-16-1 ニュー新橋ビル7F ハローオフィスC-3 [地図]
TEL:03-5157-5027

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