コラム

 公開日: 2017-08-25 

意外な盲点です! 相続と貸金庫の関係

 

【今日のポイント】

 お盆の時期に郷里の親や、離れて暮らす兄弟姉妹と一堂に会するケースは少なくないでしょう。
50代ともなれば、親世代は80代前後でしょうか? そろそろ遺言や相続に関する話も出てくる頃ですね。
今回と次回の2回に分けて、親や兄弟と話す「相続」で意外な盲点になる事例について紹介していきます。

 本日のテーマは、「貸金庫に眠る相続財産」 です。



【問題は隠匿貸金庫の存在】

 以前別のコラムでも書いたのですが、貸金庫の契約はあくまでも契約の当事者と金融機関との間で取り交わされるもので、を金融機関の側から契約者以外の人物、それが配偶者や親族に契約の事実を連絡することはありません。 仮に何らかの事情で同伴、同席の場合は別ですが、一般的には単独での契約が普通です。

 特に、子供が独立し、夫婦二人、又は一人暮らしになり高齢に達した時に用心の為にと貸金庫を契約するケースや、子供同士が仲が悪く、相続財産を安易に手にすることが出来ないようにと自宅から密かに貸金庫に移すケースは増加傾向にあります。 さらに低金利の市況、マイナンバーによる入出金の情報が丸裸にされる?等の危惧から現金自体を貸金庫に保管するケースも増えてきています。

 上記のような事情の場合、ほぼ第三者にはその旨を話すことがありません。 その存在を秘密にしたいがために借りる訳ですから、家族と言えども安易に口外することはないのです。



【所在不明の財産の温床に?】

 過去の事例でも「以前は〇〇銀行を使っていたはずなのに通帳や印鑑が見当たらない、勘違いとは思えないが…」
「雑談中に不意にどこそこに実は土地があると話していたけど、肝心の権利書は見たことすらない。 冗談だったのかな?」
「お気に入りだった骨董価値のある美術品がない! 兄弟の誰かが勝手に持ち出したか?」 など等、不確実な情報に翻弄される相談者が存在しました。 その多くは、貸金庫については想定すらしておらず、生前に契約の事実を聞いていない、又は確認はしていないとのことでした。 

 恐らく契約者自身は頃合いを見て家族にその事実を公表するつもりだったのでしょうが、突然の別れの場合が来てしまい、誰にも伝えないままとなったのでしょう。 皮肉なことに入院や通院するような場合では、万が一を考えることになり、生前にその事実を伝えることが出来たりするのです。

 具体的には、どういった相続財産が貸金庫内に保管されるのでしょうか?

 代表的なものでは、預金通帳、保険証書、不動産の権利書、債券関係があります。
人によっては複数のゴルフ会員権、貴金属や小型の美術品なども保管されていました。
さらに先述したように現金そのものというケースもありました。

 当然ながら、その価値は相続財産の範疇に含まれるだけのものがあったことは言うまでもありません。


【言わなければ分からない存在】

 貸金庫を利用された方はお分かりでしょうが、契約の場合も解約の場合も金融機関が対応するのは、あくまでも契約者本人だけです。 また金融機関の側から正当な理由もなく契約者の家族等に契約の事実を伝えることはありません。

 ですから契約者死亡時も通常は契約者の家族からの連絡でその事実を知ることとなり、契約の解除の手続きを進めることとなるのです。 契約者が一人暮らしで、契約時に自分以外の連絡先等を伝えていなければ、貸金庫はそのまま「生き続けることになります。」 

 一般的に貸金庫の使用料は年間契約で一括引落しとなっていますから、引落し用の口座に一定の残額があれば、相当期間「持ち主のいない金庫使用」が続いてしまうのです。

  仮に残高不足になったとしても、先に書いたように一人暮らしで、その他の連絡先が不明であれば、残高不足の通知を出しても無意味ですし、金融機関側も打つ手なしとなります。

 手続き上の問題以外にも、下手をすれば深刻な家族同士の争いにもなり兼ねません。 貸金庫の存在が念頭になければ、あるはずの財産がない=誰かが密かに入手したに違いない、と考えてもおかしくないからです。

 仮に全く想定していなかったままに兄弟間で遺残分割協議を行い、何とか遺産分割協議書にまとめていたとしてもその後に貸金庫の存在が発覚し、改めて遺産相続の協議をすることになると、以前の協議で不満を持っていた相続人から問題を蒸し返してくる可能性も出てきます。

 存在が知られないままでも 遺族間に疑心暗鬼を生じさせ、存在が知られても、そのタイミングによっては新たな遺族間の火種になってしまう。  どちらに転んでも厄介事の発端になってしまうのです。
 

【なぜ隠す?ではどうする?】

 相談者の方に上記のような話を伝えても、即家族に話すという方は意外に少ないのです。
なぜでしょうか? さらに質していくと「実は、扱いに困るような私物、も金庫に預けて(隠して?)あるから。」というケースが出てきました。 詳細は省きますが、青春の思い出の品や火遊びの証拠品、他人に知られたくない趣味の品々といったものでした。 

 もう一つの理由は、「一時的に保管しているだけ。」「時機を見て適当な場所に移すつもり。」というものでした。 ですが保管期間を質してみると、最低でも1年以上、最長では12年という「一時的保管」を続けている方がいました・・・

 あえて 意図的に隠しているという方もいました。 
 最近急に足繁く実家に出向いてくる子が出てきた、どうも実家の権利書や以前話をした債券関係が目当ての様で、配偶者もうまく取り込まれてしまったようだ、このままでは配偶者が勝手に手渡すかもしれないと思い、他の子供たちの為にもと密かに貸金庫を契約し、保管したため安易にその事実は公表しないという「確信犯的」行為だったのです。

 
 確かにそれぞれの事情を伺いますと、家人に伝えていない理由にも一定の理解は出来ます、ですがその結果は家人に無用な争いや、余計な手間と時間を強いることになるのです。

 いきなり遺言とは言いませんが、せめてエンディングノートなどに完全版の財産目録を作成するとともに、それとなく貸金庫の存在も記録しておくことで、財産調査の際の「きっかけ」だけは明らかにしておくべきでしょう。

 高齢になれば、保管したことで安心してしまい、後々になって何を保管したかを忘れてしまうケースも出てきます。 これを防ぐためにも毎年定期的に保管物の明細を更新するとか、家人には重要な案件だけは伝えておく等で致命的なミスを避けることが出来ます。 

 貸金庫の持つ最大のメリットは「安全性と機密性」ですが、それがデメリットにもなるということを よく認識しておいて下さい。

この記事を書いたプロ

寺田淳行政書士事務所 [ホームページ]

行政書士 寺田淳

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