コラム

 公開日: 2016-10-07 

甘くなかった! 相続税節税対策

【今日のポイント】

 相続で思いがけず手にした不動産、でもそこで暮らす予定はなく、かといってそのまま放置すればただただ固定資産税を課せられるだけの「お荷物財産」に悩んでいる方は多いことと思います。 最近はそのような使途の無い土地に賃貸物件を建てて、税金対策と安定収入の一挙両得が図れますという建設業者等からの「勧誘」が加速しているようです。

その手段、本当に「両得」になるのかどうか? について紹介したいと思います。


 お元気ですか!
「すべての人が生活の安定と向上の為に法律を身近に、
気軽に活用出来る社会の実現を目指す」
新橋駅前の寺田淳行政書士事務所の寺田 淳です。


  

【賃貸物件のアキレス腱:空室率の問題】

 賃貸物件の場合、まずは立地条件が問題になります。 例えば公共交通機関の駅から近ければ近いほど、注目は集まります。 さらに複数の路線が利用可能な拠点であればなおさらですね。 
 また、アクセス面に若干の難ありでも、近隣に大学や工場等があり、学生寮、独身寮等の需要があるエリアであれば、長期に安定した入居者が確保できる可能性があります。

 賃貸物件の場合、空室率の上昇は安定収入を脅かす大きなリスクです。 

 もともとは2015年の相続税増税を受けて、所有する土地にアパートを建てて、まずは相続税を軽減し、その後は家賃収入で安定した収入確保が図れることから、子供にとってもありがたいプレゼント(?)になる訳です。 親子共に良い事尽くめの節税ノウハウとされてきました。

 ただ、当初の物件の建設費用は持ち出しになります。物件の規模にもよりますが、やはりそれなりの建設費用が発生します。 また果たして思惑通りに入居者殺到、満室御礼となるかどうかは、保障の限りではありません。

 そこで、建設業者はそのような不安要素をクリアする「一括借り上げ・家賃保証」といった契約を用意します。

 簡単に言えば、仮に入居者がゼロでも所定の家賃を保証します! という実にありがたい内容です。 これなら安心と、、多くの「土地相続者」は金融機関からの借り入れをして賃貸物件を建設しました。


【競合激化により状況が一変!】

 ですが、皮肉にも相続税改正が開始された2015年の夏頃から、早くも首都圏では空室率が急速に上昇したのです。

 少子化による絶対数の減少に加えて、学生の減少に伴うキャンパスの移転統廃合、企業の都合による工場閉鎖や移転、規模の縮小などで今までの様な入居希望者が集まらなくなり、さらには毎月のように増加する「新規賃貸物件」により、建設当初は最新の設備を誇った自分の建物も2,3年で陳腐化し、新しい設備や間取りを持った新規物件に需要を奪われます。

 対抗するには内装をリニューアルしたり、外装の改修等で対抗するか、家賃の改定(=値下げ)しかありません。

 ここで問題になるのが「家賃の値下げ」です。 家賃を下げれば、業者が約束した家賃保証の額も比例してダウンするのです。 そうすると、当初の想定していた収入は下方修正を余儀なくされます。

 毎月の家賃収入は減額されても、金融機関への返済は減額などされません。 家賃を下げても満室になる保証はなく、かといって家賃を下げなければ、周囲との競争に勝てません。

 下手をすれば家賃保証の収入がそのまま返済に回すしかない、プラスマイナスゼロの事態もあり得るのです!

 通常契約書にはこのような「賃料改定」の規約を記載はしてあります。 
ですが、なかなか当事者はそこまで読み取ることはなく、また業者も積極的にこの点を説明しているかどうか? 言った言わない、聞いていない等と言った業者との間にトラブル発生となることが少なくありません。

 さらに、年数がたてば外装のメンテや改修や補修なども必須になってきます。 固定費は増える、返済額は変わらない、でも肝心の家賃収入は減るばかり・・・ これでは何のための節税対策か! と愚痴の一つも言いたくなりますね。


【楽観は禁物】

住んでみたい街ランキングに選ばれた街(にある土地)だから
付近に大学、工場があって毎年学生や若手社員がやってくる(=需要は無限にある)から

 今は大いなる魅力ある土地であっても、それが10年20年確実とは言えないのが今の世界です。 先に書いたように大学も企業も統廃合が決まればさっさと撤退、縮小します。 世代交代が絶たれた街は、居住する住民の高齢化に比例して街自体も衰退化に進みます。

 終の棲家としての「イエ」であっても、収入の途としての「アパート経営の為の賃貸住宅」であっても「家」は完成直後から劣化が始まります。

 マイホームであれば我慢出来る瑕疵であっても、他人様に借りて頂く賃貸物件では、大きなマイナスポイントと見なされることになります。 

 一見、効果的な節税策と思える賃貸経営も、何もしないで、何のリスクも負わないで、毎月収入が確保されるというわけにはいかないのです。 賃貸物件の建設に伴うリスクについて、よく理解を深め、その上でどう決断するかは、あなた次第です!



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