コラム

 公開日: 2016-01-25 

相続放棄と相続分放棄とは?

 いや~、寒い週末でした! 
雪は降りませんでしたが、ついにエアコンの暖房スイッチを入れてしまいました。


 お元気ですか!
「すべての人が生活の安定と向上の為に法律を身近に、
気軽に活用出来る社会の実現を目指す」
新橋駅前の寺田淳行政書士事務所の寺田 淳です。


 今回は予定を変えて、ある相談者との相続の相談での面談時に話題になった事柄について紹介していきます。

 同じ放棄でも「相続」と「相続分」では大きく意味が違うという、やや紛らわしい内容の話です。


【相続放棄】


 何度か採り上げてはいますが、改めて紹介します。

「相続放棄」とは、相続の開始によって発生した相続の効果を、確定的に否定、初めから相続人でなかった効果を生じさせるもの ~民法938条より

 一部だけを放棄、条件付きで放棄、期限付きで放棄などと言った「勝手な設定」は出来ないのです。

 「相続放棄は、相続開始前には出来ません。」 仮に「相続発生しても放棄します。」と意思表示したり、他の相続人との間に「相続放棄契約」と言った契約を取り交わしても全く効力はないのです。

 相続放棄は、家裁に対して一定の手続き(申述)を行う必要があります。


【単純承認】


 「相続発生後3か月」=熟慮期間内に意思表示をしなければ、単純承認したと見做されます。

 また相続人が相続財産の一部、又は全部を処分した場合は「単純承認」となります。  これは補足しますと、仮に相続放棄をした場合でも、相続財産の一部、又は全部を隠匿、相続債権者に被害を与える事を知りながらこれを消費したり、処分したと言った場合には相続放棄は認められず、単純承認と見做されるのです。


【熟慮期間】


 上記で述べた『熟慮期間」とは、「相続の開始があった事を」=被相続人の死亡を知った時から「3か月以内」となります。 ただ財産状態が不明、又は複雑なためこの期間内では精査が難しい場合は、家裁に対し利害関係人(相続人)や検察官の請求によって機関の伸長を図る事が可能です。

 さて、3か月の起点についてですがあくまでも原則は「被相続人の死を知って、自分が相続人になった事実を知った時」となります。 ですが、よく引き合いに出される例として、父親の債務(借金)の事実を3か月間相続人に伝えず、3か月経過後に債権者がその事実を伝え、債務の履行を迫るというものがあります。 「父親の死を明らかに知っており、3か月の期間も経過したのだから、息子にこの債務が相続された。 だから息子は債務を履行しなければいけない。」

 法的には、間違ってはいませんがあまりにも理不尽な話です。
実際には最高裁の判例で「相続財産の全部又は一部の存在を知った時、又は通常これを認識出来る時からを起算とする。」とあり、要は「財産の中に借金がある事」を知った時から3か月以内と言う解釈がされています。

 ~父親の死後半年後にローン債務の事実を知った場合、その事実を知った時(督促状を受け取った日等)から起算して3か月以内に相続放棄の判断が出来ることになります。


【相続放棄の効力】


 「相続放棄の効力はその相続に関してのみ」 ~民法939条より

 例えば、父親からの相続をこの自分が放棄したとしても、祖父から自分(孫)への相続は放棄した事にはならず、相続の権利は活きている事になります。


 先の説明で「相続財産の一部を処分した時は単純承認と見做す。」とありました。 

 では、亡父に預貯金がある事は知っており葬儀費用をそこから引き出して費用に充ててしまった。 その後多額の負債が発覚したら? これも単純承認=負債の相続と判断されるのでしょうか?

 葬儀費用の場合は社会的儀式としての必要性の見地から、ごく自然な行為と言える。 ために「不相応な額でなければ」これだけで単純承認と見做す事はありません。 なので、期間内であれば相続放棄は可能になります。

 但し! その金額の多寡によって、実例では判断が分かれているようです。 自己判断での消費は禁物ですね。


 

【相続分の放棄】


 民法905条に「共同相続人は遺産分割までの間に自分の相続分を他の相続人、又は第三者に譲渡することが出来る(但し第三者の場合は他の相続人は取戻権を有する)

 同様に「共同相続人は相続開始後、遺産分割までの間に自分の相続分を放棄する事が出来る。」とあります。

 相続放棄と相続分放棄?  何が違うのでしょうか?

 事例で以て説明した方が分かり易いので、以下の例を想定します。

 妻と子供3人が共同相続人の場合。
通常の遺産分割ならば、
妻=1/2
子1=1/6
子2=1/6
子3=1/6  となります。

ここで長男である子供1が相続放棄をした場合の妻と子供2、子供3の遺産分割は
妻1/2
子2=1/4
子3=1/4  となります。

 同じ条件で、子1が「相続分放棄」をした場合は
妻=1/2 =(3/6)
子2=1/6
子3=1/6
ここに子1の1/6の分を配分します。

妻と子2、子3の比率は 3:1:1となっています。 
妻には3/3+1+1=3/5
子2、子3にはそれぞれ1/3+1+1で1/5づつが従来の分割分に加算されます。

その結果、
妻=1/2+「1/6×3/5」=3/5 ・・・「 」内の計算に注意して下さい。
子2=1/6+「1/6×1/5」=1/5
子3=     同上

 
 通常の妻(母)と子3人での相続の場合は、子の相続分はそれぞれ1/6となります。
 子1が相続放棄した場合には子2と子3の相続分はそれぞれ1/4に増加します。

 これに対し、子1が相続分放棄をした場合は妻(母)が1/2から3/5へ増えるのに対し、子2、子3は1/5で子供3人での相続の場合よりは増えますが、相続放棄の場合よりは相続分は減少していますね。

 仮に子1が最初から相続放棄を考えていたものの、相続財産の確定やその他の理由で熟慮期間の3か月を経過してしまった場合、相続放棄は出来ない為、遺産分割の前であれば相続分放棄で当初の考えをある程度叶えることが出来るのです。
 

  相続分放棄を表明する為には「相続分のないことの証明書」の作成が一般的です。


 相続分放棄はどのような時に使われるでしょう? 例えば遺産分割協議や相続放棄の手続きを採る事なく、共同相続人の一人に特定の遺産(自宅等)を取得させる場合等に用いられることが多いようです。




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