コラム

 公開日: 2014-12-08  最終更新日: 2015-03-31

遺言能力について ~認知症と遺言

 お元気ですか?
「すべての人が生活の安定と向上の為に法律を身近に、
気軽に活用出来る社会の実現を目指す」
新橋駅前の寺田淳行政書士事務所の寺田 淳です。


 前回は緊急事態時における特別方式の遺言について紹介しました。 今回はもう少し身近な、そしてある意味最も直面する可能性の高い問題について紹介したいと思います。

 それは、遺言者が高齢となり、認知症等で自分の意思表示が困難になった場合です。

 自筆遺言の場合は、自分ですべてを書きあげなくてはいけませんから、内容に合理性があり理解可能なものであれば、有効とされます。  公正証書遺言の場合は、遺言者が口述し、公証人が文章化します。不備や不明な箇所があれば確認が入りますので、偽造や改ざんはほぼ不可能です。

 ですが、どちらの場合も、遺言作成時に既に認知症等を発症していたら? その遺言書は有効なのでしょうか?

 通常、判断能力に支障が出た場合、その程度によって成年後見では後見、保佐、補助、の3段階に分けて対応します。 保佐、補助の場合の被保佐人、被補助人はそれぞれ保佐人、補助人の同意が無くても単独で遺言が遺せます。
(民法第962条) 被後見人になると単独での遺言作成は出来なくなります。

 よく裁判で争われるのが、自筆の場合は認知症の親に同居中の子供が自分に有利な内容の遺言を書くよう「洗脳」し、遺言者に書かせるケースです。 この時、日付だけは空欄にしておき、認知症発症前の日付を子供が書きこみ、遺言の作成時期の正当性を証明する強者もいるようです。

 公正証書の場合も、本人の口述を公証人は書き記すわけで、これも事前に用意周到に「台詞」を暗記させられている場合もあるのです。 こちらのケースでは遠隔地にいた子供がこの日付の時には発症していたと主張し、同居の兄弟と争うケースがありました。


 遺言作成に関しての唯一最大の問題、それが遺言作成時の遺言者の意思能力、判断能力の判定なのです。


 公正証書遺言の場合、通常公証人は事前の遺言者との面談でその意思能力を確認し、通院中であれば担当医師から判断能力についての意見を聴く、または診断書を求めたりして遺言者の意思能力の有無を判断します。 参考までに認知症の検査のうち、一般的なものの内容の一部を紹介しておきます。

 ・年齢の確認。
 ・面談当日の年月日、曜日まで。
 ・面談場所の確認。
 ・3つの単語を覚えてもらい、時間を空けて確認。
 ・100から7を引く、これを延々と繰り返していく。
 ・3つの数字を聞かせ、逆順に言ってもらう。
 ・ここで先の3つの言葉を言ってもらう。
 ・5つの品物を一定時間見せて隠し、名前を言ってもらう。
 ・知っている限りの野菜名(果実など)を言ってもらう。

 以上で、忘れたり、答えに詰まった、間違った答え、等のレベルに応じて判断を下すのです。 平均で70%の正解率を下回ると「疑いあり」だそうです。

 認知症は高齢者だけの問題ではありません、最近は40代で発症する若年性認知症も珍しくなくなってきました。 五体満足な状態でも、肝心の判断能力に支障をきたせば遺言書そのものの有効性が疑われるのです。 心身健康なうちにこそ、後顧の憂いを失くす行動をしなくてはいけませんね。 

 少しでも懸念がある方は、「先憂後楽」の精神で この点を熟考して下さい。

 



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