コラム

 公開日: 2015-09-14 

破産管財人と申立代理人 その役割

法人の破産の申立てには代理権のある弁護士は欠かせないが、その手続きには破産管財人の弁護士が出てくる。なぜ二人も弁護士が出てくるのか、と聞かれることが多い。
この役割分担はどうなっているのか。

破産管財人は、地方裁判所に破産申立てがあってから地裁から依頼されて設定されるものだから、破産申立て段階では存在しない。

申立て代理人の弁護士は倒産者が探すものだが、破産管財人は地裁によって選ばれる。
どのように選ばれるかというと、地裁に破産管財人がやりたいと届け出のある弁護士から地裁が選ぶことになっている。
まず破産者と〝利害相反〝がある弁護士には依頼できない。これは債権者の顧問(金融機関の顧問など)や債権者の代理人(大手企業の弁護士など)では、その案件の破産管財人はできなくなる。
そのような利害相反のある弁護士は、申立て代理人をお願いしても受けられないのが原則である。
だが、実際には受ける弁護士もいるように聞く。倒産者にはわかるわけはないからだろう。債権者の顧問弁護士が倒産者の申立て代理人をやるとどうなるか、考えるだに空恐ろしいことだ。

地方都市で弁護士の数が少ないと、破産管財人はなかなか決まらないことが多い。わたしが見たケースでは破産管財人が決まるまで半年以上もかかったことがある。
余談だが、地元金融機関の顧問をやっているのはおおよそその地域のボス弁護士だから、そのボスは当然のことながら破産管財人にはなれない。
ところが、地方都市では地元の弁護士会の集まり(酒席ですね)で、このボス弁護士と破産の申立て代理人の若手弁護士が同席することがままあり、そうした席で若手がつぶされることがよくあるとうかがったことがある(…弁護士の世界はかなり〝体育会系〝であることは間違いない…)。

申立て代理人の弁護士は、地裁に対して破産の申し立て作業を行わなければならないのは言うまでもないが、それと同時に破産管財人が設定されるまでの間をつなぐ役割を持っている、と理解したほうがいいだろう。
申立て代理人と破産管財人の両方にかかわる作業としては、まず債権の換金。売掛債権を集金したり、会社の財産を売却したりする。そして換金した会社の財産を優先債権に充てる処理。労働債権(社員の給与や退職金、解雇手当など)、税金、社会保険への支払いだ。
申立代理人の弁護士がその作業をして破産管財人が決まった段階で引き継ぐことになる。

次なる作業は債務の確定である。債権者に対して債権調査をしてそれぞれの債権を確定していく。
そのようにして倒産会社の債権を換金し、債務に平均に配当しなければならない。それが倒産処理の原則である。にもかかわらず、偏った返済をしたりするとそれは偏頗(へんぱ)な返済として、破産管財人から否認され返却の対象となる。

申立て代理人の弁護士はそれらの作業をしながら、地裁に任命された破産管財人が決まるのを待つことになる。
これらの引継ぎ作業があるため、申立て代理人の弁護士は倒産者の利益代表のはずだが(倒産者が費用を払うのだから当然だろう)、破産管財人にチェックされて「No!」と言われないように慎重に振舞うことになる。まぁ、同業者でもあるわけだし…。

破産管財人の費用は予納金と会社の財産を換金したなかから支払われることになる。ということは要は破産者が支払うことになるのだから、破産者は破産管財人に対して強気に出てもいいようだが破産管財人は地裁から任命されているので、いわば半ば公務員的地位を持っているのでそうはいかないのが現実である。

そのため、連鎖倒産を避けるために入金した売掛金を特定の債権者に支払ったりするような、倒産者が当然と思うようなことは、原則的にはできない。
そのような倒産者の意図を実現するためには、時系列的には申立て代理人に委任する前にしなければならない。
しかしそれも、うまく対応しなければ破産管財人に否認されて返還を求められることもあり得ることは覚えておいていただきたい。

…とはいいながら、こうしたグレーゾーンには裏ワザもあるのだが、申し訳ないのだがここでは書けない。お知りになりたければ相談にきていただくしかない。

倒産すると、倒産会社の社長(代表取締役)は〝当事者能力〝を失うことになる。
よって倒産会社の処理は[代理人]に任せなければ混乱が起きる。

その代理人には代理権の認められている弁護士しかなれない。
そうでない者が代理人を名乗ると、債権者(特に金融機関など)は委任状の提示を求め、代理権がない者だと交渉には応じない(弁護士を雇え、と言われる)と突っぱねてくる。
そのために、代理人を雇わなければ倒産処理はスタックしてしまう。
倒産会社が[法人の破産]を申し立てる場合には、その代理人の弁護士は[申立て代理人]と呼ばれる。

一方、[破産管財人]は倒産会社が[法人の破産]を裁判所に申立ててから、裁判所に選任されてはじめて設定されるのであるから、倒産時には破産管財人は存在しないことになる。
この破産管財人も弁護士でなければなれないので、当事者も債権者も混乱することが多い。

これが[任意整理(私的処理)]だと、裁判所の手続きではないので、破産管財人は最後まで存在しないことになり、倒産会社の代理人が破産管財人と同じ役務を果すことになる。

申立て代理人は倒産会社が雇うのであるから、倒産会社の利益を守る立場にあるようだが、弁護士という職業倫理の面から、必ずしもそうでないことが多い。
弁護士によっては、依頼人である倒産会社の社長を犯罪者扱いするようなこともある(わたしの場合がそうだった)から、そのような弁護士に委任すべきではない。といっても、弁護士になじみのある人は多くないので、この段階は〝当たるか外れるか〝非常に難しいのが常だ。

法的処理(法人の破産)に移行する場合には、代理人は破産管財人が選任されるまで、倒産会社の債権(売掛金の回収は最優先の作業だ)と債務(債務調査はもっとも大事な作業だ)を整理し、売掛金の回収や在庫品の売却など、債権(財産)を換金し、優先権のある債務に充てる作業などを担務することになる。
社員の給与や解雇手当、退職金の支給などは優先債権なので、破産管財人が選任される前に申立て代理人が行う場合が多い。
それは[申立て前処理]とよばれ、その処理ができていればいるほど破産管財人が出てきた段階での対応がスムーズにいくことが多い。
もちろん、そのような作業をしないで破産管財人が選任されるまで待っているゆるい代理人もいる。

私的処理(任意整理)の場合は、これらの作業は代理人が行うことになる。やることの内容は法的処理とほとんど同じである。
任意整理の場合は代理人が破産管財人のやるべき作業のすべてを行うことになる。

申立て代理人と破産管財人は敵対して、代理人は倒産会社を守るのか、と思われる向きもあろうが、現実はそのようなことはほとんど起こらない。
特に地方都市では、同じ弁護士であるのだから(弁護士会ではきっと仲良しなのだろうから)そうそう対立はしてくれないものだ。

そのような意味では、弁護士の少ない地方都市の倒産のケース(法的処理)では、東京など大都市の、倒産処理になれている弁護士を委任したほうがいい(倒産会社のために働いてくれる)と、わたしは思っている。

※これら、[倒産]や[破産]についての詳しい情報は、わたしのホームページ
  『倒産と闘う!』http://nitemare.jp/を参照してください。

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