コラム

 公開日: 2015-08-24 

経営危機管理コンサルタントのある一日

前日夕方に電話があった。
「以前にいろいろ相談にうかがった者ですが、どうにも資金不足は避けられない状況なので、助けてください」
「その資金不足は、いつごろ、どれくらい、起こるのですか」
「二か月後に、5,000万円ほどです」
「その債務の内容は」
「買掛金と手形決済がほとんどです」
「給与などは払えるのですか」
「はい、それは最優先で用意しています」
「その二か月後を何らかの形でクリアーできれば、その後の資金不足は解消されるのですか」
「いいえ。その後も資金不足は続きます」
「判りました。お急ぎですね」
「そうです。こちらから経営陣三人が東京に行って留守にするといろいろ不安に思われそうなので、こちらに来ていただけますか」
わたしは了解して電話を切った。
ネットで航空券を予約して、着時間を依頼人にメールした。

翌日。
10:20事務所発(徒歩で新宿駅に向かう)
10:40リムジンバスで新宿駅発(車中KFCで買ったコーヒーを飲む)
11:30羽田空港着(昨日手配したチケットを、機械を操作して入手する)
12:00羽田発(機中で空弁を食いウーロン茶を飲む)
13:45ある地方空港着(迎えのクルマに乗る)
14:15依頼人の会社着(会議室に迎え入れられ、直ちに打ち合わせに入る)

・事業内容(経緯)をヒアリングする。
  創業15年。資本金3,000万円ほど。年商五億円ほど。従業員15人ほど。
  会社所有の自社ビルあり。経営陣は同族で三人。

・二か月後前後の資金繰り状況をヒアリングする。
  ここ数年、利益は出せていない。粉飾決算でつないでいる。
  売上高は毎年減少。 利益率も毎年低下。金融機関は融資を断ってきた。
  個人資産の投入は限界に来ている。
  経営陣は疲労困憊、事業継続の情熱を失っている。

・事業継続断念の確認をする。
  経営陣全員一致で納得された。

・二か月後の月末にXディが到来することは確定。
  二か月後の20日入金分で優先性の高い支払いをし、その残分で破綻処理費用とする。
  事業停止はその月の月末とする。

・会社の破綻(法人の破産)はどのようなものかを説明する。
  経営者、株主、役員、社員(およびその家族)への影響。
  得意先(売掛先)への影響。売掛金、仕掛りの仕事への影響。
  買掛先(買掛先、手形の振出先、外注先)への影響。
  その他の債務(税金、社会保険、水道光熱費などの一般管理費)への影響。
  このこと(倒産、破産処理)は犯罪ではないことの説明。
  単なる会社という経済的なユニットの破綻に過ぎないことの説明。

・連帯保証している経営陣の破産は避けられそうもないことを説明する。
  破産しないとどうなるか。
  将来のある人は破産することを勧める。

・その個人の破産がどのようなものかを説明する。
  個人財産への影響。
  個人の債務への影響。
  個人の破産の影響。
  社会活動への影響。

・会社の破綻処理後の事業継続の可能性を説明する。
  個人事業での事業継続の可能性。
  別会社を設立して事業継続の可能性。
  協力してくれる会社での事業継続の可能性。

・会社の破綻処理後の経営陣個人がどのようになるかを説明する。
  単なる破産者と同じであることを説明。
  あらゆる可能性があることを説明。
  (事業を起こすこと、経営者になれること、どこかの会社に就業することなど)

・この破綻処理のおおよその手続きと費用を説明する。
  法人の破産の申立てをすること(可能な限り少額管財の実現を目指す)
  申立書に必要な書類などを説明  
  申立て代理人に弁護士が必要なことの説明
  申立てから終結(個人の場合は免責)までの手順の説明
  裁判所の予納金(少額管財を想定)
  弁護士費用
  ※ 地方都市の弁護士環境から東京の弁護士を確保してほしい旨まれる
  わたしの(コンサルタント)費用
  その他の諸雑費

・終結までの手続きと日程を説明する。  
  事業停止
  申立て代理人の弁護士介入
  申立て代理人の弁護士から債権者へ連絡
  申立て前処理
  地裁への(少額管財)破産申し立て
  免責の申立て
  破産管財人面接
  破産管財人とのやり取り
  債権者集会
  免責の決定(終結) 破産申立て後三ヶ月くらい

・個人の破産に関する留意事項を説明する。  
  連帯保証分についての説明  
  個人財産確保のアドバイス
  合法的に保持できる自由財産(現金99万円以内、預金など20万円以内)の説明
  個人の破産には面積があることの説明

・申立て代理人になる弁護士の確保を依頼される。
  地方都市の弁護士は東京に較べると数が少なく、破産に熟達している弁護士はほとんどいないのが実情だ。
  破産に熟達していない地方都市の弁護士に委任すると費用も時間もかかり、さらに依頼人の利益も守ってくれないことが多い。
  そこで事業停止前までに東京の弁護士を確保し依頼人とわたしとの三者打合せができるよう約す。

・二か月後のXディまでに何をするか(何ができるか)を説明する。
  人件費(労働債権)は最優先。解雇手当。退職金など。
  連鎖倒産はしそうな債権者は優先的に対応する。
  金融債務は必ずしも優先しない(この後の借り入れ返済はしない)。
  経営陣の再起のための費用は確保する。
  法人の破綻処理は用意する(法人の破産処理=少額管財を想定)。
  連帯保証のある経営陣も個人の破産処理はすること(高齢者はその限りにあらず)。

・次回打ち合わせまでにすることの説明。
  Xディ(二か月後)段階の会社の財産の一覧をつくること。
  Xディ(二か月後)段階の会社の債務の一覧をつくること。
  債権者の住所、社名、連絡できるFAX、電話、担当者名、債務金額、連帯保証など。
  連帯保証をしている経営陣個人の財産と債務の一覧をつくること。

18:10(会議が終わる。その間コーヒー二杯。全員疲労困憊)
18:15依頼人の会社発(クルマに乗る。途中で今回の費用をいただく)
18:45ある地方空港着(出発時刻の15分前。チケットは機械を操作して入手する)
19:00地方空港発(直前にお土産を買う)
20:45羽田空港着(機中ではパン一個と牛乳)
21:00リムジンバスで新宿駅発(バス車中で弁護士にメールし次の対応に備える)
22:15事務所着(新宿駅からタクシーに乗りかえり着く)

この間(おおよそ12時間)、飛行機、車(バス)、会議室、以外にはほとんど触れていない。
東京から500km以上離れた地方都市に行ったのに、その土地のものは一切口にしていない。その土地の店にも入っていない。
もちろんこのような一日(前日に電話をいただいて翌日日帰りの出張する)は大変珍しいことであるが、いままでもあったしこれからもあり得ることだと思っている。

この後は、電話、FAX、メールなどで連絡を取りながら破綻処理は淡々と進めていくことになる。

これでひとつの事業がうまくソフトランディングでき、その事業家が再起できれば、わたしは〝Good Job〝だったと思うことができるのだ。

※これら、[倒産]や[破産]についての詳しい情報は、わたしのホームページ
  『倒産と闘う!』http://nitemare.jp/を参照してください。

この記事を書いたプロ

内藤明亜事務所 [ホームページ]

経営コンサルタント 内藤明亜

東京都新宿区北新宿1-17-3 金元ビル202 [地図]
TEL:03-5337-4057

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