コラム

 公開日: 2015-03-31 

国外転出課税

平成27年税制改正の中でも最も注目されるのが「国外転出課税」です。

これは1億円以上の有価証券等を保有する者が、平成27年7月1日以降に国外転出をする際に、その有価証券等を譲渡したのものとみなして所得税を課税するという制度です。

日本の税制上、実現していない利益について課税をするというのは極めて珍しいケースです。なぜこのような「強権」な課税をするのでしょう。

日本が締結している多くの租税条約では、株式の譲渡による所得は居住している国でのみ課税されることとなっています。日本と違い株式の譲渡による所得に対する課税がない国(香港、シンガポール、ニュージーランドなど)に出国したあとで、株式を譲渡することで一切の税金を逃れることが可能となります。

「国外転出課税」は、これを防ぐ趣旨で設けられた税制です。

ここでいう「国外転出」というのは、日本国内に住所を有しなくなることをいいます。永久的に日本を離れて海外で暮らそうという人ばかりではなく、会社に有期で海外勤務を命じられた人も対象者に入ってきます。

従って、この税制の適用を受けた方が5年以内に帰国した場合には課税を取り消すことができますし、また出国後10年間は担保を提供した上で納税猶予を受けることができる制度もあります。

ここまで理解すると、有価証券譲渡の課税を逃れることに対抗する制度としてある程度の納得感が出てくるのではないでしょうか。

さて「国外転出課税」はこれにとどまりません。

同じく1億円以上の有価証券等を保有する者が、平成27年7月1日以降に、「相続」や「贈与」で非居住者に有価証券等を移転した場合にも、その有価証券等を譲渡したのものとみなして所得税を課税することとされました。

理解できましたでしょうか。

すなわち、1億円以上の有価証券等を有している方自身が日本を出国していなくても、この方から「相続」や「贈与」で有価証券等を取得する人が非居住者であれば、国外移転課税による、所得税課税を受けます。

この場合、所得税ばかりではなく、相続税や贈与税の対象にもなってくるため、「二重課税」となります。贈与税ならば、二重課税を理解した上で贈与をするにしても、相続は好き好んでするわけではないので、酷な気もします。

しかし、税の考え方は「課税の公平」です。

非居住者に移転する時点で所得税課税をしておかないと、この「相続」「贈与」で有価証券を取得した非居住者は、有価証券の譲渡による所得税の課税を逃れることができてしまうからです。つまりご本人が海外転出できなくても、海外にいる子供が相続や贈与で取得することで、所得税を避けることができるようなことのないように手当がされていることになります。

「相続税」「贈与税」と「所得税」は、異なる税法であり、ひとつの取引にそれぞれの税金が課税されても、「二重課税」とは考えません。専門家以外の方にはわかりにくい世界がそこにはあるのです。

結論: 有価証券等を1億円以上保有する方は、ご本人が海外に転出するケースばかりでなく、海外に子供がいるケースでも、「国外転出課税」への備えが必要である。

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