コラム

 公開日: 2013-07-15 

転嫁法の前に知っておきたい消費税の納税計算

消費税転嫁対策特別措置法(以下「転嫁法」)についての記事が、7月15日の日本経済新聞の法務面に掲載されています。

そこで強調して説明されているのは、大規模事業者の下請け業者への「買いたたき」行為についてです。

記事から少し抜粋します。

「現在、納入業者がある商品を1個105円(本体価格100円、消費税5円)でスーパーに納めているとしよう。来年4月以降、税込価格が108円より低くなった場合は、『自由な価格交渉の結果と認められる特段の事情の説明がない限り、消費税の転嫁を拒む買いたたきに該当すると考える』(公取委の杉本和行委員長の国会答弁)」

買いたたきでないことの立証責任は、買い手が負うということも記事では紹介されています。

私が思うに、この買いたたき問題のひとつに、会社が消費税を納税するときの計算構造が理解されていないことがあるのではないかと思っています。

例えばスーパーなどの小売業では、お客様の売上の105分の5の金額を消費税として国に納めますが、ここから仕入れにかかる消費税を控除して納付することができます。

105万円(本体価格100万円、消費税5万円)で仕入れた食品を、126万円(本体価格120万円、消費税6万円)で売る場合、国に対する消費税の納付額は、6万円-5万円=1万円となります。

これが消費税率が8%になったときには、108万円(本体価格100万円、消費税8万円)で仕入れた食品を、129.6万円(本体価格120万円、消費税9.6万円)で売る場合、国に対する消費税の納付額は、9.6万円-8万円=1.6万円となります。

お客様への売上は税込で3.6万円(120万円x 増税分の3%)増えるわけですが、仕入れにかかる消費税も3万円(100万円 x 3%)増えていますので、差引6千円の消費税の納付額が増えています。

一方、仕入れの本体価格100万円を120万円で売ることに消費税アップの前後で変化はないことから、消費税が増税されてもスーパーの20万円の「儲け」に変わりはありません。

ひとりの消費者(すなわち消費税の最終負担者)として消費税を払うときと、流通経路の中途で企業担当者(消費税の最終負担者ではない)として消費税を払うときでは、考え方をガラっと変えなければいけません。

長々書いてきましたが、「それはあたりまえ」と思う人ばかりではなく、「なるほど」という方も少なくないと思います。立派なビジネスマンでも、経営者や経理担当(それも税金担当)でないと、このことは意外と知られていません。

上記の計算構造を理解しておけば、大切なのは「買い叩く」ことよりも、消費者に消費税の価格転嫁をきちんとすることだと答えられると思います。

平成元年に消費税が3%で開始されたとき、財布に1円玉が増えました。5%になり、総額表示も定着してからは、10円刻みの総額表示が増え、あまり1円玉を使わなくなりました。

8%になると、再び財布に1円玉が増えることになると思います。むしろそうでないと、きちんと消費税が適切に転嫁されていないことになります。

個人的には決して消費税の増税を望んではいませんが、8%になってしまうのであれば、増税分はきちんと価格に転嫁されないといけません。

転嫁しない場合には、企業の本来の利益の一部が消費税として国に納付されるだけのことです。それは結局、日本経済がしぼんでしまうだけのことで、給料も伸びず、決して国民が豊かになるわけではないのですから。

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