コラム

 公開日: 2017-04-15 

今後増える高齢者。一方、バリアフリー設備がある賃貸住宅はわずか

高齢者向けの設備がある賃貸アパートは3割以下。部屋が狭いと設備も陳腐

2013年の「住宅・土地統計調査の集計結果」(国交省・総務省)などによると、「持ち家」と「貸し家」では床面積(㎡数)ごとの戸数に大きな偏りがあり、対照的であることがわかります。

一戸建てや分譲マンションなど、自分で所有する持家の場合には70㎡以上の家族で住みやすい広さの物件数が多いのに対して、ワンルームアパート・マンションのような貸家の場合には、70㎡未満の戸数が多くなっています。




さらに、玄関やトイレ、浴室、脱衣所、廊下、階段などに高齢者のための設備がある戸数やその割合(設備付帯率)をみてもその違いは明確です。

持家の場合には平均「約66%」(=2,114万戸/3,217万戸)の世帯に高齢者向け設備があるのに対して、貸家の場合にはその半分以下の平均「約29%」(=541万戸/1,852万戸)しかありません。

しかも30㎡未満の狭小アパートではわずか「19%」と、5戸に1戸にも満たない水準です。部屋の小さな賃貸アパート・マンションでは若者の一人暮らし向けに作られているという(ある種当たり前な)結果が統計からも読み取れます。

若者減少でも「狭い」賃貸物件が増加。入居者ニーズのマッチングが重要に

賃貸アパートで住むなら小さくて設備は抑えめ、持ち家なら広めで設備充実という、ある意味棲み分けがなされたわかりやすい結果ともいえます。

小さなワンルームや1Kのアパート・マンションは若者向けに作られたものであり、また、部屋が小さいとバリアフリー化する余裕もないことが多いでしょう。


今後も賃貸アパートの需要は根強く残ると考えられますが、これから投資アパートを建設する際には、そのニーズの変化を先取りしてマッチングしていくことが求められます。

少子高齢化がますます進展し若年層が減っていく中、一方で収入の乏しい高齢者や一人親世帯、生活保護対象者などの「住宅セーフティネット」として家賃の安いアパートニーズは残るでしょう。

例えば高齢者ニーズを取り込むためには、後からバリアフリー化できる余地を残すためにも、ある程度「広さ」に注意を向ける必要があるなど、エリアに応じて新たなニーズを取り組んでいくことを考えていく時期に来ているのかもしれません。

●増える狭小住宅。足元では30㎡未満のワンルームアパートの建設が増加している
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足元では特に30㎡以下の狭小アパートの建設が増えています。地方で節税対策の貸家の着工戸数が増加していることが一因と考えられます。


面積別貸家着工戸数(季節調整値・2012年1月=100)(内閣府:国土交通省「建築着工統計」より作成)


特に地方アパートの空室率は上昇しており、既に過当競争の様相を呈している地域もあります。

「サブリースで賃貸経営リスクがない」などの誤解を与えるような営業によって、アパートオーナーとなった方もいるようで、日銀や金融庁が地銀へ調査へ乗り出したほどです。


2015年度「住宅経済関連データ」(国交省)より作成)

1996年~2015年の時系列でみても、2015年時点の平均床面積が「82㎡/戸」、持ち家は「123㎡/戸」であるのに対して貸家(賃貸アパート・マンション)は「48㎡/戸」となっています。

住宅の種別によらず床面積は小さくなっている傾向が読み取れますが、貸家の場合にはその狭さが際立ちます。

豊島区はワンルームマンション税で狭小住宅が減少。他自治体も追随?


2017年1月に内閣府の政策統括官のスタッフが発表した『経済財政分析ディスカッション・ペーパー「貸家建設と潜在需要」』によると、「豊島区が実施するワンルームマンション税は、30㎡未満のアパートの建設を抑制する効果がみられる」と結論付けています。

「ワンルームマンション税」とは、2004年に豊島区が独自に導入した税制で、30㎡未満の住戸が9戸以上ある共同住宅を建築した建築主(賃貸アパート・マンションのオーナー)に「1戸あたり50万円」を課税するものです。


30㎡以下の貸家着工戸数の推移(内閣府:国土交通省「建築着工統計」により作成)


30㎡以下の貸家着工戸数シェアの推移(内閣府:国土交通省「建築着工統計」により作成)

30㎡以下の貸家着工戸数も、着工に占める割合(シェア)も、いずれも他の区が上昇しているのに対して、豊島区は減少を続けている様子が分かります。税制導入による狭小住宅の抑制効果がみてとれます。

もっとも、豊島区はワンルームを抑制するとともに、単身高齢者向けの住宅供給を推進する政策をあわせて実施しているなど、他の要因もあると考えられます。

狭小住宅の抑制は賛否両論ありますが、いずれにせよ自治体が主導して街づくりを行うなかで特におカネに直結する政策はその効果が高そうです。人口減少・少子高齢化の現在、他の自治体も豊島区にならって、エリアの特色に合わせた税制を打ち出す可能性もあります。注視していきましょう!

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