コラム

 公開日: 2016-12-30  最終更新日: 2016-12-31

米国が1年ぶりの利上げ。来月から始めるトランプ政権への期待と不安

米国が1年ぶりに利上げ。来年も2~3回のペースで緩やかに上昇

2016年12月14日、米国の連邦準備理事会(FRB:Federal Reserve Board)は、1年ぶりに政策金利を引き上げました(利上げ幅は0.25%)。

具体的には、短期金利の指標であるフェデラル・ファンド金利(Federal funds rate)の誘導目標を年「0.25~0.50%」から「0.50~0.75%」へと引き上げました。既に12月15日から適用されています。


背景には、米国の失業率が4.6%と9年ぶりの低水準になり、またインフレ率も目標の2%に近付いたことがあります。FRBのイエレン議長は、物価と雇用が改善したとみており、米経済が本格的に好転する兆しを嗅ぎとったものといえます。

今後の利上げペースは、2017年に2~3回と示唆し、2016年9月時点に示した年2回から上昇ペースを引き上げています。

利上げペースは加速する?!足元の活況と期待先行の危うさの綱引き

FRBのイエレン議長は「ごくわずかな調整」「今後数年間にわたって緩やかな利上げを続けるのが適切だろう」とも述べており、緩やかな金融引き締めを行う姿勢です。

しかし足元では、米国がドル高・株高・金利高と、一見景気上昇のスタートを切ったようにも映ります。実際、米株式相場はダウ工業株30種平均が2万ドルを伺う展開を見せています。


そこにトランプ次期大統領の大規模な財政政策構想によって、さらなる成長が期待されています。本格回復が現実味を帯びれば利上げペースを4回に加速させることもありえるでしょう。

一方で、期待先行の現況が一転、先行き懸念が勝る状況になれば利上げも延期されることが予想されます。

景気状況によっては年4回もあり得るという意見と、期待外れによって様子見になる可能性の両方を専門家が指摘しており、現時点で正確な先行きを見通すのは時期尚早といえます。

●過去には年に4回の利上げを計画するも、実際には1回きりだった
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事実、依然として企業の設備投資や生産性は弱く、トランプ次期大統領の政策の実現性などに不透明感も根強くあり、現在の状況は期待先行の危うさもはらみます。

過去にFRBは、2016年に4回の利上げを予定していましたが、実際には今回の1回きりに終わった事実もあります。


2015年12月に9年半ぶりの利上げに踏み切った翌月に、(中国発の)世界同時株安が発生したことや、その後の英国の欧州連合(EU)離脱決定などが要因といわれています。

今回も新興国からアメリカへ資本が流出しており、通貨安を招いています。米長期金利の上昇は、住宅市場に悪影響をおよぼす可能性もあります。予定通りの利上げができるか、不安要素は残ります。

トランプ次期大統領への期待と、楽観シナリオへの不安

トランプ次期米大統領は、大規模な公共事業を増やす一方、法人税や所得税を大幅に減税することでアメリカ経済を成長させることを掲げています。

具体的には、高速道路や港湾・空港整備などのインフラ投資は1兆ドルを割き、減税額は10年間で4~5兆ドルを表明しています。「すべての所得層に対して減税する」と力強く語ってもいます。


つまり、支出は大きく増やし、収入を大きく減らすといっているのです。しかし、それを埋め合わせる合理的な財源を具体的に述べていません。政府の債務が膨張すれば、公共サービスの質の低下や、福祉のカットにつながる恐れもあります。

ムニューチン次期財務長官は「米国経済の底力は強く、レーガン大統領時のように、成長とともに税収も上がるでしょう」と述べ、楽観シナリオにおける未来の税収増をあてにしているようです。

もちろん、トランプ氏の掲げる財政政策が功を奏し、米国全体が潤うことで税収が大幅にあがれば米経済にとってそれが一番です。しかし、トランプ次期政権に対する不安があるのもまた事実でしょう。

●口先介入で企業の意思決定を歪める?政党との健全な連携も必要
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トランプ氏は保護主義的な政策を掲げており、すでに口先介入によって民間企業の活動に大きな影響を与えています。

雇用を守るという大義名分はありますが、アメリカの民間企業に対し「工場を海外に移転すれば、米国に輸入する際に高額の関税を課す」と脅しとも取れる発言で、民間の意思決定を歪めています。薬価引き下げや政府調達品(ボーイング社の次世代大統領専用機)も話題になりました。


ビジネス経験が豊富であるトランプ氏。「株式会社アメリカ合衆国」のCEO(最高経営責任者)として米国を導いていくことは心強い面もありますが、政治家としての振る舞いも求められます。

また、大型公共事業などトランプ氏はニクソン大統領のような「大きな政府」を志向している節があります。これは、共和党が目指す「小さな政府」とは真っ向から対立します。

大統領一人で政策を実施するわけではなく、政党をうまく巻き込みながら政権運営していく必要があります。これらを指して、政策の実効性に不安を覚える向きもあります。

来月には正式にトランプ次期政権が発足。期待から現実へ

次期政権は、ウォール街出身者や大企業経営者、軍人など、大局的に物事を捉え、決断と実行を繰り返した経験のある陣容となっています。

特にビジネスの場などで交渉にたけた布陣であり、「強いアメリカ」を取り戻すために一丸となって取り組めば大きな成果をあげられるかもしれません。政治家としての経験のないトランプ氏だからこそできる改革もあるでしょう。


一方で、トランプ氏の表明する政策が二転三転することや気性の荒さなどから政権の安定性を疑問視する声もあります。

いろいろな指摘がなされるトランプ政権。いずれにしても現段階のなにも始まっていない段階では、懸念点も期待感もいくらでも論じることができてしまいます。

それよりも来月にはトランプ政権が発足、いよいよ期待から現実への転換が始まります(いい意味でも悪い意味でも)。実際に政権運営が始まった時、市場がどう反応するのか今後とも注視していきましょう!

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