コラム

 公開日: 2016-10-01  最終更新日: 2016-10-05

ついに日銀が動くが、メガバンクは住宅ローン金利を引き上げず

とうとう日銀が動いた。長期金利ゼロ%誘導に向け国債買い入れ減額に

日銀が9月21日の金融政策決定会合において、(固定型住宅ローンの基準となる)長期金利をゼロ%程度に誘導する目標を立てましたが、その後も長期金利が下がりゼロ%から遠ざかっている状況が続いていました。


金融政策決定会合から1週間が経過した9月28日には、▲0.1%目前の▲0.090%まで下落、市場は「日銀がいつ動き出すのか」と下限を探りながら国債を買っている様子をお伝えしました。

そして昨日9月30日に、日銀が10月に購入する国債の予定額を発表し(残存期間5年超10年以下の)国債買い入れ予定額を1回あたり「4,100億円」とし、前月9月より▲200億円減額しました。

少ない減額幅▲200億円は、板挟みの中で難しいかじ取りを行っている結果

▲200億円という減額幅は大きいとはいえません。長期金利(10年物国債利回り)をゼロ%付近に上昇させるには、一気に買い入れ量を減らせば達成できます。

しかし、大きく国債の購入量を減らせば市場におカネを供給する効果が薄れ、量的緩和の方針とは逆行してしまいます。年間国債買い入れ額は80兆円を目安としているため、急な減額は市場に円高不安などを与えてしまいます。


かといって、国債買い入れ量をこのままに据え置くと、金融機関の収益を圧迫することになり反発を受けてしまいます。市場がもっと国債を買う方向に進みどんどん長期金利がマイナス金利を深堀りしてしまうためです。

留まるのも深堀りし過ぎるのもどちらも痛みを伴い、難しい状況の中で出した答えが今回の購入量の小幅な減額なのですね。

それでもメガバンクは10月の住宅ローン金利を据え置き

3大メガバンクは、10月に適用する住宅ローン金利を据え置きました。


具体的には、(長期金利の基準となる10年物国債と同じ10年間固定をする)「固定型10年の最優遇金利」で比較すると、三菱東京UFJ銀行が0.60%、みずほ銀行が0.70%、三井住友銀行が0.80%(いずれも年利)となっています。

足元の金利が実際に低下しており、減額幅も小幅。他行に先駆けて金利を上げられない

日銀が、固定型住宅ローンの基準となる長期金利をゼロ%に誘導する目標を発表すれば、「いまより金利があがるから住宅ローン金利も引き上げよう」となりそうなものです。

しかし実態として、目標発表後から1週間、日銀の目標に反して長期金利が▲0.1%目前まで低下したことに加え、10月の(残存期間5年超10年以下の)国債買い入れ額の減額幅も▲200億円と微妙な額に収まったことなどを考え、据え置いたのです。


背景には銀行間の住宅ローン獲得競争がとても激しいこともあるでしょう。そのような状況下で安易に金利を引き上げることは、顧客が他行に奪われる恐れがあり、まずは静観している状況なのです。

国債買入額を減らすことで長期金利(住宅ローン金利)が本当に上昇?

日銀は約400兆円もの国債を所有しており、これは国債発行残高の1/3超をも保有していることになります。巨大な国債購入者である日銀が買い入れ量を減額したことは、他の市場参加者に少なくない影響を与えるでしょう。


国債を買う量を市場全体で減らせれば、国債の価格が下落(利回りが上昇)し、長期金利を今の▲0.1%付近から誘導目標のゼロ%に近付けたいという日銀の狙いがあるのです。

これからの固定型住宅ローンの動向は、日銀のスタンスを市場参加者がどう捉えるかにかかってくるともいえそうです。

市場の受け止め方次第では、さらなるマイナス幅拡大(金利下落)も

日銀としては、おカネの供給量(国債買い入れ量)をあまり変化させずに、若干の国債買い入れ現象の姿勢を示すことで、他の市場参加者が日銀の意図を読み取って買い入れを控えることを期待している構図が透けてみえます。

市場がこれを、「日銀は本気でゼロ%への誘導を考えていない。まだまだおカネを市場に供給するつもりだ」と捉えれば、来週以降も長期金利がマイナス幅を大きくする可能さえあります。


日銀も市場参加者も互いに様子見をしながら、柔軟に日銀が姿勢を変化させ、最終的な着地点を探る展開となるでしょう。

決定会合でも意見が割れた。今後も柔軟な方針変更が予想される

日銀が9月30日に公表した「金融政策決定会合における主な意見」をみると、決定会合の中でも委員の意見が割れており一枚岩とはいえない状況であることがうかがえます。

「国債の買い入れ量の増減は当然生じうる」「ゼロ%程度という10年金利の操作目標は、次回会合までの調節方針であり、長期金利を将来にわたってペッグする趣旨ではない」など、とりあえずの目標であり、量も金利も柔軟に変化させるべきとの意見があります。

誘導目標そのものに対してリスクや懸念を指摘。国債の指値買い入れは「異例の措置」

長期金利のゼロ%目標に対しては、「マイナス圏で長期間固定することになりかねず、金融仲介機能への影響が懸念される」「狙い通りに国債買入れペースが低下して、政策の持続性が高まるかは不確実であり、長期金利上昇などを受けて逆に買入れペースが高まるリスクが相応にある」と、誘導目標の副作用やリスクを指摘しています。


さらに、日銀が利回りを指定して長期国債を買うことも発表していることについては「指値による国債買入れオペなどの導入は、市場機能を著しく損ねる恐れがある異例の措置である」と懸念を示す委員もいます。

今後も、市場の動きをみながら日銀は柔軟に政策変更をしてくるとみられます。今回のゼロ%誘導目標は絶対ではなく、継続的に注視していくことが必要です。

【補足】日銀は購入予定額を発表。ローンは「5年超10年以下の国債」が鍵

日銀は、原則として毎月最終営業日に翌月の国債購入オペレーション(公開市場操作)の計画を発表しており、次回は11月1日の発表が予定されています。


不動産業界の視点からは、固定型住宅ローンの基準となる新発10年物国債の利回りが特に重要です。10年物国債は日銀の発表する利付国債の内、「残存期間5年超10年以下」に該当するため、この買い入れ予定額が注目されているのです。

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