コラム

 公開日: 2016-08-22  最終更新日: 2016-10-05

【不動産価格の求め方】取引事例比較法を使って、販売価格を求めてみよう(3/3)

取引事例比較法は検討項目をいくらでも多くできる

【不動産価格の求め方】取引事例比較法を使って、販売価格を求めてみよう(1/3)」では、取引事例比較法に対する基本的な考え方、次の「(2/3)」では、実際に算出すべく、簡略化した事例を見てきました。

以上の具体例は、本当に簡易的な方法をご紹介したに過ぎませんが、実際にはもっと詳細な検討が必要となる場合が多いものです。最後に、本格的に実施する場合の雰囲気を少し感じてみましょう。取引事例比較法について、「不動産鑑定評価基準(国土交通省)」には以下のように記されています。
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取引事例等は、次の要件の全部を備えるもののうちから選択するものとする。
【1】次の不動産に係るものであること
① 近隣地域又は同一需給圏内の類似地域若しくは必要やむを得ない場合には近隣地域の周辺の地域(以下「同一需給圏内の類似地域等」という。)に存する不動産
② 対象不動産の最有効使用が標準的使用と異なる場合等において同一需給圏内に存し対象不動産と代替、競争等の関係が成立していると認められる不動産(以下「同一需給圏内の代替競争不動産」という。)。
【2】取引事例等に係る取引等の事情が正常なものと認められるものであること又は正常なものに補正することができるものであること。
【3】時点修正をすることが可能なものであること。
【4】地域要因の比較及び個別的要因の比較が可能なものであること。
-------------------------------------------------------------------------------------
難しい言葉が並びますが、身構える必要はありません。これらは先ほどの簡単な具体例でもすでに言及したものです。

比較対象は原則近隣。でも特殊な場合は他の地域が適切

【1】については、ピックアップする不動産は近隣地域を原則としますが、価格を形成する要因や競争関係が他の地域の方が適切だと考えられる場合は、周辺の地域も選びなさい、といっているのです。


例えば、池袋の商業ビルに対して取引事例比較法を用いる場合、隣駅の目白駅や北池袋駅の住宅と比較するよりも、新宿駅や渋谷駅のビルと比較する方が適切だと感じると思います。

なにぶん、この“適切さ”は主観的な要素が入るため、不動産鑑定士の間でも意見の割れるところではありますが、それだけ慎重に考えなければならない検討要素は多いということです。

特殊な取引は排除、補正できるものは補正して利用

【2】については、売主の事情で売り急ぐことで特別に安く売られている取引事例や、買主が買い急ぐことで普通ではありえないほど高値で購入しているようなものは除きましょうということです。

一方で、仮に通常よりかなり安値(高値)で売られた取引があったとしても、合理的に補正できるものなら補正したうえで使うことも述べています。安易に除外することなく取引の実態を見抜きましょうといっているのですね。

取引された時点を意識して補正

【3】については、不動産価格は常に変動しているため、いつ取引が行われたのか、その取引が行われた時の経済状況はどうだったかなどを検証することで、今の時点と過去の時点で補正しましょうということです。

取引の裏に隠れる要因も比較検討

【4】については、「地域要因」と「個別的要因」も比較しましょうといっています。それぞれの要因は具体的に述べると何冊も本がかける程膨大な量になります。以下に住宅地域と商業地域の場合のみ、一例を示します。
-------------------------------------------------------------------------------------
【地域要因】
1.住宅地域
住宅地域の地域要因の主なものを例示すれば、次のとおりである。
(1)日照、温度、湿度、風向等の気象の状態
(2)街路の幅員、構造等の状態
(3)都心との距離及び交通施設の状態
(4)商業施設の配置の状態
(5)上下水道、ガス等の供給・処理施設の状態
(6)情報通信基盤の整備の状態
(7)公共施設、公益的施設等の配置の状態
(8)汚水処理場等の嫌悪施設等の有無
(9)洪水、地すべり等の災害の発生の危険性
(10)騒音、大気の汚染、土壌汚染等の公害の発生の程度
(11)各画地の面積、配置及び利用の状態
(12)住宅、生垣、街路修景等の街並みの状態
(13)眺望、景観等の自然的環境の良否
(14)土地利用に関する計画及び規制の状態

2.商業地域
前記1.に掲げる地域要因のほか、商業地域特有の地域要因の主なものを例示すれば、次のとおりである。
(1)商業施設又は業務施設の種類、規模、集積度等の状態
(2)商業背後地及び顧客の質と量
(3)顧客及び従業員の交通手段の状態
(4)商品の搬入及び搬出の利便性
(5)街路の回遊性、アーケード等の状態
(6)営業の種別及び競争の状態
(7)当該地域の経営者の創意と資力
(8)繁華性の程度及び盛衰の動向
(9)駐車施設の整備の状態
(10)行政上の助成及び規制の程度

【個別的要因】---------------------------------------------------------------------------
Ⅰ 土地に関する個別的要因
1.宅地
(1)住宅地
住宅地の個別的要因の主なものを例示すれば、次のとおりである。
① 地勢、地質、地盤等
② 日照、通風及び乾湿
③ 間口、奥行、地積、形状等
④ 高低、角地その他の接面街路との関係
⑤ 接面街路の幅員、構造等の状態
⑥ 接面街路の系統及び連続性
⑦ 交通施設との距離
⑧ 商業施設との接近の程度
⑨ 公共施設、公益的施設等との接近の程度
⑩ 汚水処理場等の嫌悪施設等との接近の程度
⑪ 隣接不動産等周囲の状態
⑫ 上下水道、ガス等の供給・処理施設の有無及びその利用の難易
⑬ 情報通信基盤の利用の難易
⑭ 埋蔵文化財及び地下埋設物の有無並びにその状態
⑮ 土壌汚染の有無及びその状態
⑯ 公法上及び私法上の規制、制約等
(2)商業地
商業地の個別的要因の主なものを例示すれば、次のとおりである。
① 地勢、地質、地盤等
② 間口、奥行、地積、形状等
③ 高低、角地その他の接面街路との関係
④ 接面街路の幅員、構造等の状態
⑤ 接面街路の系統及び連続性
⑥ 商業地域の中心への接近性
⑦ 主要交通機関との接近性
⑧ 顧客の流動の状態との適合性
⑨ 隣接不動産等周囲の状態
⑩ 上下水道、ガス等の供給・処理施設の有無及びその利用の難易
⑪ 情報通信基盤の利用の難易
⑫ 埋蔵文化財及び地下埋設物の有無並びにその状態
⑬ 土壌汚染の有無及びその状態
⑭ 公法上及び私法上の規制、制約等

Ⅱ 建物に関する個別的要因
建物の各用途に共通する個別的要因の主なものを例示すれば、次のとおりである。
1.建築(新築、増改築等又は移転)の年次
2.面積、高さ、構造、材質等
3.設計、設備等の機能性
4.施工の質と量
5.耐震性、耐火性等建物の性能
6.維持管理の状態
7.有害な物質の使用の有無及びその状態
8.建物とその環境との適合の状態
9.公法上及び私法上の規制、制約等
-------------------------------------------------------------------------------------
頭がくらくらしますね。これを馬鹿正直にすべて検証するのではなく、実務上は評価する不動産の属性によって、優先順位をつけ検証します。

取引事例比較法のまとめ

ここでは、販売価格の手法の一つである「取引事例比較法」についてみてきました。この方法は、周辺の過去の取引事例を基に価格を決めるもので、その考え方がわかりやすく、よく利用されます。一方で、評価しようとしている不動産の特徴をしっかりと理解していないと、不適切な比較を行う危険性もはらんでいます。

販売されている不動産が周辺相場と近い金額だからといって、それが適切かどうかはまったく別の話です。本来比較すべきは遠方の地域かもしれません。

実際に購入しようとしている不動産価格が適切かどうかを確認する際には、あなたが頼りにしている不動産仲介業者としっかり条件や特徴を精査し、おかしなところがあれば売主側と交渉し、適切な金額での売買に持ち込みましょう。

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