コラム

 公開日: 2016-07-06 

箱庭療法と時間の経過 ~成長による気付き~

パウル・クレーは1925年に『花ひらく木』という油彩画を描きましたが、それから9年後の1934年に、同じ構成・色彩の絵を90度左に回転し、サイズを拡大して『花ひらいて』という油彩画を作成しました。
それは、1925年に『花ひらく木』を描いた当時には分からなかったことを9年後に悟り、その感覚にフィットするように改めて絵を描き直したように見えます。

絵ではなくて箱庭作品の場合も、作った当時には分からなかったことが時間が経過してから分かることがよくあります。
時間の経過と共に心が成長し、制作当時に無意識にしていたことを意識化出来るようになって来るのだと思われます。
具体的な事例として、2010年6月に制作した自作の箱庭について1年後の2011年6月に新たな気付きを得た体験をご紹介します。

≪引用1≫は2010年6月制作当時のブログの記事より、≪引用2≫は2011年6月に投降したブログの中の新たな気付きについての追記の部分です。

≪引用1-始まり≫

今日は久しぶりに自分で箱庭を作ってみた。
何となく真ん中に水のある風景を作りたいという気持ちがしたのだ。

砂をかき分けているうちに、トマトを逆さにしたような湖が出て来る。
湖に流れ込む川を作りたくなって2本の角のような川を作る。



左の川の源流には滝、右の川の源流には火山。
中央の奥には深い森に鎖された山脈。
その前に2頭の恐竜が向かい合い、リンゴを守っている。

湖の右手前にはトンネルを抜け出て来たウルトラマンが立つ。
向かい合うのはティラノサウルス。
何となく対峙する両者を見守る者を置きたくなって大仏を置く。
そして、湖の彼岸のリンゴに向かい合うように、ウルトルマンとティラノの間にオレンジを置く。

ウルトラマンの背景には家とクルマ。
ティラノの背景には原始的な動物達に宗教施設。
人工の世界と非人工の世界の対比。
向こうの山脈は、それら人工の世界と非人工の世界を超えた包括的な自然、宇宙の真理を象徴しているもののように見える。

ウルトラマンは私の分身として置いた。
トンネルの手前には子供がいて、トンネルは私の成長(変容)過程を表している。
一方、対峙しているティラノサウルスも私自身だろう。
私の影。無意識の自分。
それは、洞窟の中から、地中から抜け出て来ている。
対立する両者を見守っている大仏もまた自分自身。

プロセス指向心理学的に言えば、
ウルトラマンがプライマリー・プロセス(意識している自分)、
ティラノサウルスがセカンダリー・プロセス(無意識の自分)、
大仏はオブザービング・セルフ(プライマリー・プロセスとセカンダリー・プロセスの両者をメタ認知している自分)
ということになろうか。
つまり、ウルトラマンとティラノサウルスと大仏の三位一体で自分を表しているのだろう。

出来あがった箱庭を反対側(山脈の後ろ)から見てみると、この箱庭が左右だけでなく、上下にもシンメトリーに作られていることに気付く。
先程、宇宙の真理たる山脈の在った位置には大仏が在る。
思わず、「あっ」と言う声が出た。
宇宙の真理は見ている自分自身の中にある。
私はケン・ウィルバーの文章を思い出す。
『この「目撃者」こそ、「スピリット」に他ならない。それは、それが作り出した世界を見ているのだ。』

箱庭の面白さは、文章で読むと分かりにくいことが、イメージの世界で直観的に掴めることだ。
私は満足して箱庭を元に戻したが、湖のほとりに置かれたリンゴとオレンジが何を意味するかは分からなかった。
それが分かったのは、数時間経ってからだった。

トマトを逆さにしたような湖の形が気になっていたが、それが人間の2つの器官を象徴しているのではないか、と気付いた。
ひとつは子宮だ。
火山と滝から流れ下る川は、火と水という2つの卵巣から子宮へと結ばれた卵管だ。
従って、果実のひとつは新しい生命を意味するものだろう。

連想されたもうひとつの器官は脳だ。
従って、もうひとつの果実は、火と水からインスピレーションを得て創造された新しい想念(世界を捉える知恵)を象徴するものではないだろうか。

世代をつなぐ新しい生命と新しい知恵を産み出して行くこと。
それが、今生を生きる人間としての課題である、ということを暗示しているかのようだ。

≪引用1-終わり≫

≪引用2-始まり≫

当時は納得して書いた文章だが、今日箱庭を見直してみると、リンゴとオレンジと言うふたつの果実が分かれて存在していることが気になる。
これらの果実が、新しい生命と新しい知恵を表しているだけでなく、身体と頭を表しているようにも見えるのだ。
もし、そうだとすれば、頭と身体が別々に分かれていることが問題となる。

しかし、改めてリンゴとオレンジの間を見れば、そこには何度か喩えられているように、トマトの形をした湖が横たわっている。
このトマトは頭と身体をつなぐもの、つまり、心、或いは、魂を表しているのだ、と考えるとしっくり来る。
リンゴとオレンジとトマトの三位一体、頭と身体と魂の三位一体が箱庭の中心部に形成されているのだ。

トマトの湖に焦点を絞って見れば、それは子宮であり、脳であり、そして魂である。
ひとつで三重の意味を持っている。
この箱庭は魂の湖を中心としたマンダラを構成しているのだ。

魂は自らの場所を箱庭作りの最初に定めた。
しかし、それに気付き見出されるのは最後になった。
最初から在るのに最後に発見される、正にそれは根源的なものの性質のメタファーのように思われる。

≪引用2-終わり≫

上記の文章を読んで頂くと、箱庭に関する気付きには時系列的にいくつもの段階があることが分かると思います。

箱庭を制作している最中に意識していること。
箱庭を作り終わった直後に気付くこと。
箱庭制作後数時間経過してから分かること。
箱庭制作後1年経過してから分かること。

実は、1年経過後のブログでも書いていないことにその後で気付きました。
それはトマトの湖の形がハートの形に近いことです。
つまり、トマトの湖は身体器官として、脳、子宮及び心臓を表している、ということです。

また、3つの果実が象徴しているものは、
リンゴ ― 世界を捉える知恵(霊的なもの)
オレンジ ― 新しい生命 (身体的なもの)
トマト ― 心(魂的なもの)
であり、霊・魂・体を象徴しているものであることに気付きました。

この先、私が新しいことを学び、成長して行くに従って、今分からないことに気付くかも知れず、とても楽しみです。
箱庭というものは大変に奥が深いものなのです。

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