コラム

 公開日: 2015-08-20 

言葉のセクハラ

言葉のセクハラに対する判決

 言葉のセクハラに対して最高裁がどのような判断を示すのか、非常に注目していた裁判の判決が今年の2月26日に言い渡されました。

 今回の案件は、大阪市の水族館の運営会社で働く男性管理職2名が部下の女性にセクハラ発言を繰り返したことをめぐり、男性を出勤停止とした懲戒処分が重すぎるかどうかが争われた訴訟の上告審で、最高裁は、「管理職としてセクハラ防止を指導すべき立場だったのに、弱い立場の派遣社員の女性らにみだらな発言を繰り返し、強い不快感や嫌悪感、屈辱感を与えた」と指摘。発言が長期間に及ぶことや二人が管理職だったことを重視して、懲戒解雇に次ぐ重い処分の出勤停止とその後の降格は妥当と判断しました。

判決が与える影響と対策

 では、今回の判決が与えた意義と影響を考えてみましょう。

 まず第一に、男女雇用機会均等法では、事業主にセクハラ対策を義務づけています。その中には職場での「性的言動」の防止も含まれています。しかし現状では、言葉のセクハラは「言っただけで体は触っていない」と体を触るなどの身体的セクハラより軽くみられがちなことが多く、企業による対策が遅れている場合が多く見受けられます。今回の判決により、企業は言葉によるセクハラに対しても、より厳しい対応が求められることになるでしょう。

 また判決は、加害者に対して処分を決める際に、被害者が嫌がったかどうかを過度に考慮しなくても良いことを明確にしており、「悪気はなかった」という言い訳が通じなくなります。社内教育などによる、セクハラに対する認識の徹底が必要となります。

 次に、男性側は、「出勤停止は懲戒解雇に次いで重い処分。事前の注意や警告をしないで処分したことは不当だ」として提訴しました。通常、社員に対して懲戒処分を与えるには、懲戒事項と処分の内容を就業規則に規定しておく必要がありますが、基本的には懲戒事項に該当すれば即、処分を実行できるわけではなく、「段階的処分」(まずは口頭注意→始末書提出などの手順を踏むこと)を実施し、それでも改善の余地が見受けられない場合に、処分を実行するべきだと法的に解釈されています。現に男性側も「事前の注意や警告がない」ことを処分無効の争点としています。

 しかしながら判決では、就業規則にセクハラ防止規定及び違反した場合の懲戒処分について明記されており、なおかつ、男性側がセクハラ防止を徹底すべき立場の管理職であることを重視し、いきなりの懲戒処分を認めた判決となっています。
 

今後のセクハラ対策に向けて

 企業のセクハラ防止に向けた取り組みは、広がっていますが、その具体的な対応策は企業間で格差があるのが現状です。今回の判決は、従来から軽視されがちな言葉によるセクハラに対する懲戒処分を妥当としたところに影響を与えることになるでしょう。
 言葉のセクハラに対する対策が遅れている企業には危機感を与えることになる一方で、これまでは口頭注意にとどめていた企業側が、セクハラをした当事者に懲戒処分を出す動きが広がる可能性がありますが、臭いものには蓋をしるばかりではなく、企業として社内教育の徹底など、根本的な防止策を検討する良い機会として捉えていただきたいと思います。


***************************************************************
 やなぎだ労務管理オフィスは、メンタルヘルスを重点業務としています。
 ホームページ: http://www.office87.com
 (一社)産業保健法学研究会 正会員
 社会保険労務士/産業カウンセラー/心理相談員  代表:柳田 真
***************************************************************

【最新セミナー情報】 ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

 「ストレスチェック制度・集団分析からの職場改善の進め方」(2016年3月15日開催)

   詳細はこちら => http://mbp-tokyo.com/m-yanagida/seminar/3000/

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

この記事を書いたプロ

やなぎだ労務管理オフィス [ホームページ]

社会保険労務士 栁田真

東京都港区赤坂4-7-6 赤坂ビジネスコート4F [地図]
TEL:03-5575-2001

  • 問い合わせ

このコラムを読んでよかったと思ったら、クリックしてください。

「よかった」ボタンをクリックして、あなたがいいと思ったコラムを評価しましょう。

0

こちらの関連するコラムもお読みください。

<< 前のコラム 次のコラム >>
最近投稿されたコラムを読む
人事労務Q&A

A.この場合、基本給に残業代が含まれる旨を就業規則等に明記するとともに、基本給のうちどの部分が残業代に相当する部分なのかを明確に区分する必要があります。 ま...

プロへのみんなの声

全ての評価・評判を見る>>

 
このプロの紹介記事
社会保険労務士 栁田真さん

企業のよき相談相手を目指す社会保険労務士として(1/3)

 188cmの身長と物腰柔らかな雰囲気が印象的な栁田さんは、20年間システムエンジニアとして活躍してきた経歴の持ち主です。2000年に、当時勤めていた会社で成果主義が導入されると、それまでの和気あいあいとしていた社内が一変、殺伐とした空気の...

栁田真プロに相談してみよう!

朝日新聞 マイベストプロ

メンタルヘルス問題に強いカウンセラー資格を持った社労士です。

会社名 : やなぎだ労務管理オフィス
住所 : 東京都港区赤坂4-7-6 赤坂ビジネスコート4F [地図]
TEL : 03-5575-2001

プロへのお問い合わせ

マイベストプロを見たと言うとスムーズです

03-5575-2001

勧誘を目的とした営業行為の上記電話番号によるお問合せはお断りしております。

栁田真(やなぎだまこと)

やなぎだ労務管理オフィス

アクセスマップ

このプロにメールで問い合わせる
このプロへのみんなの声

一度諦めていた弟の障害年金が、先生の熱意と誠意のおかげで1級を受給することができました。

 弟が脳内出血で倒れたのが8年前のことで、さらに当時は年金...

K・F
  • 60代以上/女性 
  • 参考になった数(2

このプロへの声をもっと見る

プロのおすすめコラム
社員の様子がいつもと違うと感じたら~「職場不適応症」とは

 昔は五月病。今は職場不適応症。  少し前までよく耳にしていた「五月病」。そもそも五月病という病気は存在...

[ メンタルヘルス ]

ストレスチェックに正直に回答してもらうためには

 昨年12月よりストレスチェック制度がスタートしましたが、当初より受診者がストレスチェックの調査票に正直に回...

[ ストレスチェック制度 ]

ストレスチェック集団分析を職場環境改善にどう活用するか
イメージ

 ストレスチェック検査の結果を集団ごとに集計・分析することは、今回の制度では事業者の努力義務となっています...

[ ストレスチェック制度 ]

どこまで行えば企業は安全配慮義務を果たしたといえるのか?
イメージ

 安全配慮義務とは  労働者に対する安全配慮義務は、労働契約法第5条に「使用者は、労働契約に伴い、労働者が...

[ メンタルヘルス ]

ストレスチェック制度義務化がスタート!制度実施のポイントを確認

 12月1日から労働者50人以上の事業所を対象にストレスチェック制度の義務化が始まりました。実施に向けての準備...

[ ストレスチェック制度 ]

コラム一覧を見る

スマホで見る

モバイルQRコード このプロの紹介ページはスマートフォンでもご覧いただけます。 バーコード読み取り機能で、左の二次元バーコードを読み取ってください。

ページの先頭へ