コラム

 公開日: 2015-06-03 

メンタルヘルス対策における労働時間管理のポイント

 長時間労働は過労死やメンタルヘルス不調などの重大な問題を引き起こすことから、労働安全衛生法(時間外労働が月100時間を超える一定の労働者に対する医師による面接指導の義務化)等の法令により従来より配慮がされており、メンタルヘルス対策を考える上でも重要課題の一つであることは疑いのないことです。
 それではメンタルヘルス対策としての長時間労働=労働時間管理のポイントを、事例を交えて考察していきましょう。
 

自己申告制による労働時間管理

 労働時間管理の方法として、労働者による自己申告制を採用している会社も少なくないと思います。そのような状況で労働者が精神疾患に罹患して自殺をし、遺族が実労働時間に異議を唱えて会社を訴えたところ、会社側は労働者の実労働時間は自己申告された労働時間によるべきだという主張しました。果たしてこの主張は認められるのでしょうか。
 
 このような場合、形式的には自己申告の記録しか会社側に無い場合であっても、メールの送受信時間、携帯電話の通話記録、ファイルのプロパティ情報、入退室のセキュリティ記録、交通機関のICカードの情報などの資料で実労働時間が概ね把握できる場合が少なくありません。そのため、会社側の「自己申告の記録が労働者の実労働時間」との主張は認められない場合が多いです。

管理監督者や裁量労働制の労働時間管理

 では事例をあげて検討してみましょう。
 専門業務型裁量労働制を導入している会社があります。みなし労働時間は1日8時間とされていましたが、タイムカードによる勤怠管理も行われており、9時の就業開始時間に出勤していない場合には遅刻扱いとされていました。
 その会社に勤務する管理職の技術職である労働者の時間外労働時間は1月あたり180時間を超える状態が続いており、その後うつ病に罹患して自殺しました。
 会社側は、この労働者が専門業務型裁量労働制の対象であるから労働時間は1日8時間に過ぎないと主張し、仮にこの主張が認められない場合であっても、管理職としての裁量があるのでタイムカードどおりの労働時間で過重性を判断するのは誤りであると主張しました。
 
 まず専門業務型裁量労働制が適法なのかという点で、導入前の就労状況、業務に裁量が存在するか、みなし労働時間と実労働時間との乖離などを問題とした判例があります。さらに労働者が、①労働条件の決定その他労務管理について、経営者と一体的な立場にあるか、②勤務内容が労働時間規制になじまないこと、③賃金等でその地位にふさわしい待遇をされているか、という労働基準法上の「管理監督者」にそもそも該当するかという問題があります。
 
 一方で割増賃金の基礎となる時間外労働時間と、過重労働の判断の基礎となる時間外労働時間は異なるという問題も存在します。例えば、持ち帰り残業は、割増賃金の対象となる時間外労働時間と認められる場合は極めて限定されますが、業務によるストレスを受けている以上、過重性を判断する時間外労働時間としては算入されるのです。つまり管理監督者として割増賃金(深夜勤務を除く)の対象とはならない時間外労働時間も、過重労働を判断する場合には対象となるということです。

労働時間管理のポイント

 以上の事例を参考にすると、メンタルヘルス対策としての労働時間管理のポイントは、次のように考えることが出来ます。
 ①可能な限り労働時間を客観的に管理できるシステムを構築する。(タイムカードなど労働者の主観が入らないような手段)
 ②自己申告制を採用している場合でも、定期的に客観的な労働時間を把握するようなシステムを構築する。
 ③専門業務型裁量労働制や、管理監督者制度を導入している場合は、労働基準法上適法な導入が行われているかチェックするようなシステムを構築する。


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