コラム

 公開日: 2015-04-14 

休職社員の本格的な復職の前に~試し出勤制度とそのリスク

 休職社員の職場復帰に際し、「リハビリ出勤」などの復職前出勤制度を導入するケースが増えています。

 厚生労働省も「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」に「社内制度として、正式な職場復帰の決定の前により早い段階で職場復帰の試みを開始することができ、早期の復帰に結びつけることが期待できる。また、長期に休業している労働者にとっては、就業に関する不安の緩和に寄与するとともに、労働者自身が実際の職場において自分自身及び職場の状況を確認しながら復帰の準備ができるため、より高い職場復帰率をもたらすことが期待される」として、同制度の導入を企業に促しています。
 
 また、企業側も労働者の状態を日々確認することが出来るため、その後の支援体制の有効性の判断に役立つ制度です。

試し出勤制度とは

 試し出勤制度の内容は、企業の実態等により様々な内容となっていますが、前述の「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰の手引き」では、以下の3つのパターンに分類しています。

1. 模擬出勤
 勤務時間と同じ時間帯にデイケアなどの模擬的な軽作業を行ったり、図書館などで時間を過ごすことにより、時間的拘束に対する状況を確認します。
 
2. 通勤訓練
 自宅から会社の近くまで通勤経路どおりに移動し、会社付近で一定時間過ごした後に帰宅させることにより、安定した出勤が可能かどうかの判断が出来ます。

3. リハビリ出勤
 職場復帰の判断等を目的として、会社に試験的に一定期間継続して出勤します。この場合、会社が仕事の指示をすれば賃金支給が必要になり、具体的な仕事の指示をしないのであれば、賃金支給は不要になります。

試し出勤制度の法的リスク

 試し出勤制度を実施する上で、法的に問題となるリスクが高いのが、労働基準法上の「労働者性」との関係になります。特にいわゆる「ボランティア勤務」(賃金、通勤費支給無)の場合には、注意が必要です。
 試し出勤として、業務内容が従前のままで短時間勤務をさせたり業務内容そのものを軽減する場合に、労働しなかった時間分の賃金を控除したり、雇用契約に定められた労務提供が出来ないという債務の不完全履行として賃金を控除することは違法とはいえません。
 
 一方、ボランティア勤務の場合には、次の点を注意する必要があります。
 
 本来の雇用関係が存在する中で、会社施設内で、会社側が策定したか、会社側と相談のうえ策定された作業計画に基づき、会社の職場秩序の遵守を求められる状態(簡単に言うと、会社の指揮命令の下)で作業していると認められる場合には、その労働者性が認められ、「ボランティア」として扱うことはできません。
 また、労働者性が認められるということは、当然、就業規則、個別契約等に定めがある限り、通勤費の支払義務も発生し、労災や通勤災害の適用の他、安全配慮義務等の責任も負うことになります。

 以上の点を念頭に置いて、ボランティア勤務の作業内容についてその労働者性を厳格に判断し、適切に運用するようにしてください。


 試し勤務制度の導入にあたっては、その目的があくまで本人の療養と復職を判断する上での参考であることを明確にし、長期間の活用は避けることが賢明です。その上で、賃金や交通費などの支給や労働災害(業務・通勤)が発生した際の対応など、労使間で十分に検討してルールとして就業規則などの文書に定めておくなど、慎重な取り扱いが必要となります。


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