コラム

 公開日: 2015-01-20 

メンタルヘルス不調の労働者を休職させるには

 厚生労働省「平成24年 労働者健康状況調査」によると、過去1年間(H23.11.1~H24.10.31)にメンタルヘルス不調により連続1か月以上休職又は退職した労働者がいる事業所の割合は、8.1%(23年調査9.1%)となっており、おおよそ10社に1社の割合となっています。

休職させるための要件

 では実際に労働者を休職させる際に考慮しておかなければならないことをお話しましょう。
 
 過去の判例を基に休職をさせるための法的な要件を整理すると、次のようになります。
1)就業規則などに休職命令の発令について規定されていること
2)客観的に休職させる必要性があること
3)休職の必要性と休職により労働者が受ける不利益のバランスが取れていること

休職の必要性について

 疾病による休職の場合、専門医により①疾病への罹患、②当該疾病のため業務に支障が生じる可能性が高いこと、又は業務に従事することにより、当該疾病の憎悪もしくは治療への悪影響等が生じる可能性が高いこと、③当該疾病が、欠勤など短期間では全快が困難な程度に継続する可能性が高いこと、が合理的に確認された場合には、おおむね休職措置の必要性は認められることになります。

 この際に本人が拒否するか、緊急性が高いなどの事情から、専門医の判断を仰ぎえない場合には、上司または人事労務部門(使用者)の判断による休職命令も可能となります。
ただし、就業規則にそのような制度が規定されている場合でも、まずは傷病欠勤など、労働者の不利益の少ない措置を先行させます。規定がない場合にも、先行させる努力は必要です。
 産業医による行動観察、当該労働者を交えた協議が可能な場合は、原則としてそうした措置を講じた上で実施する必要があります。これは後々トラブルが発生し、裁判となった場合に会社側の「良心的手続きを行った」という証明になります。文書等に「5W1H(いつ、どこで、だれが、何を、どのように、どうした)」形式で主観を交えず客観的な記録を残しておくべきでしょう。

休職により労働者が通常受ける不利益の具体的な内容

 休職することによる不利益には、企業ごとの就業規則の規定や契約内容等によって事情が変わるものがありますが、およそ次のものが考えられます。
①所定賃金の不支給ないし減額
②昇格・昇給機会の喪失
③退職金・退職年金の減額
④休職期間満了による(自然)退職への接近
⑤職業経験その他キャリアの中断ないし蓄積機会の喪失
⑥休職履歴の記録
⑦復職段階での審査ないし審査を余儀なくされること

 使用者側が、上記の労働者側の不利益を緩和する措置を講じ、そのことを休職させる際に対象者に説明すれば、その分だけ休職の法的要件は緩和されます。実務取扱い上、難しい内容もあるとは思いますが、⑤以外の緩和措置は可能と思われますし、⑤についても、復職後のOJT(職場内訓練)やOffJT(職場外研修)によってある程度の緩和は可能であると思います。

求められる慎重な対応

 精神障害については、診断の難しさ、病態のわかりにくさ、症状の不安定性、再発への懸念などから、職場への影響や本人への発症・症状憎悪などのリスクなどを予測しにくいため、休職の判断について憂慮されている使用者も多いと感じています。
 本人の職務能力の低下や職場秩序への影響が明らかで、本人の同意を得ている場合には問題はありませんが、本人同意なしで一方的に休職させることについては、今回お話させていただいたように、本人の健康や生活、金銭的な問題、キャリアへの影響、法的リスクが想定されますので、より慎重な対応が必要となります。


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