コラム

 公開日: 2014-05-12  最終更新日: 2015-08-21

時間外労働が70時間で安全配慮義務違反に!

 前回、厚生労働省の2つの認定基準より、長時間労働と企業の安全配慮義務違反の関連性を、「月100時間の時間外労働」はレッドカード、「月80時間の時間外労働」はイエローカード、という一応の目安として示しました。
 
 ところが最近の裁判事例をみると、単純な時間外労働時間数だけではなく、労働者へのさらなる支援を企業に求めているのです。

 「東芝(うつ病・解雇)事件」(最高裁平成26年3月24日判決)では、精神疾患発症前5か月の法定時間外労働時間数の平均は69時間54分でしたが、判決では、「上告人は,本件鬱病の発症以前の数か月において,前記2(3) のとおりの時間外労働を行っており,しばしば休日や深夜の勤務を余儀なくされていたところ,その間,当時世界最大サイズの液晶画面の製造ラインを短期間で立ち上げることを内容とする本件プロジェクトの一工程において初めてプロジェクトのリーダーになるという相応の精神的負荷を伴う職責を担う中で,業務の期限や日程を更に短縮されて業務の日程や内容につき上司から厳しい督促や指示を受ける一方で助言や援助を受けられず,上記工程の担当者を理由の説明なく減員された上,過去に経験のない異種製品の開発業務や技術支障問題の対策業務を新たに命ぜられるなどして負担を大幅に加重されたものであって,これらの一連の経緯や状況等に鑑みると,上告人の業務の負担は相当過重なものであったといえる。」として、過重労働と精神疾患発症の関連性を認め、企業の安全配慮義務違反を認定しています。

 裁判所は、労働の過重性を認定するに当たり、長時間労働に加え、①業務内容の変化、トラブル対応による業務量の増大、②切迫したスケジュール、③初めてリーダーになることによる負担増加、④減員による負担増加などから、質・量ともに肉体的・精神的負荷が生じていたとしています。

 つまりこれは、労働者の業務遂行(スケジュール、人員配置など)に対する企業の支援が強く求められているということなのです。

 メンタルヘルスケアの観点からいうと、仕事上のストレスが原因で疾病や障害に至ってしまう過程において、一方で様々なものが影響を与え、それを緩衝する作用があるとされています。例えば、性別、年齢、性格傾向、認知の傾向、行動パターンなどの個人的要因や緩衝要因です。特に緩衝要因としては、上司、同僚、家族や友人からの支援があることが重要です。

 この緩衝要因としての「上司・同僚」からの支援について、企業の取り組み姿勢(この場合、特に上司による支援が主であると思います)が問われているのです。
 人手不足による管理職のプレーイング・マネージャー化の増加など、本来の「管理」がなかなか出来ない状況であろうと思いますが、今後もこの傾向が続くと考えられます。

 労働時間管理と合わせて、「人の管理」がしっかりと出来る体制づくりが必要となるでしょう。


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