コラム

 公開日: 2013-01-07  最終更新日: 2015-08-21

健康診断の実施だけでは不十分な社員の健康管理

 労働者の健康管理に関しては、労働安全衛生法は会社に対して、常時使用する労働者に1年以内ごとに1回の定期健康診断の実施を義務付けています。これは一方で、労働者側にも受診の義務があります。(受診命令に従わない場合には懲罰を課して、必ず受診させるのが賢明です。)

 では、健康診断を受診させれば、労働者の健康管理義務を果たしたと言えるのでしょうか。

 前述の労働安全衛生法には、健康診断の結果、異常の所見のある場合には労働者の健康を保持するために必要な措置について、医師等の意見を聴かなければならないと定められています。さらに会社は、医師等の意見を勘案して、その必要があると認められるときは、その労働者の実情を考慮して、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少等の措置を講ずるなど、適切な措置を講じなければならないと定めています。

 以上のような措置を講じることは、会社が国に対して負っている義務ですが、さらに、労働契約法第5条の「安全配慮義務」に基づき、その労働者に対して信義則上負っている労働契約上の義務でもあります。
 
 裁判では、この「安全配慮義務」違反として、健康診断の結果、高血圧であることを会社も認識していた社員に対して、業務の軽減措置などを講じずにその社員が脳出血で死亡したケースにおいて、会社側に損害賠償責任が認められてしまいました。(ただし、本人も精密検査や通院を行っていなかったため、本人側の過失相殺として損害額の半分が減額されました。)

 実際に法律に則り、健康に問題がある労働者に対して労働時間短縮の措置をとる場合、短縮分の賃金が減額されるなどの理由で、労働者側がそのような措置を望まないことが多いでしょう。このように労働者が自ら健康を害することを認識しながらも、会社の措置に応ずることを拒否した場合には、本人の責任を認める判決が出ています。(ただし、会社側の損害賠償責任も認められています。)また、配転によりこれまで従事していたことと違う業務を行うことには不安もあることでしょう。

 このように、健康診断後の措置については、労働者側の利益損失が存在し、非常に難しい問題であることは事実です。しかしながら、労働安全衛生法では、労働者にも「健康保持努力義務」が課せられていることを考慮すれば、会社の措置に従わない者に対して、軽い懲戒や査定ポイントへの影響などのペナルティを課すなどをして、軽減措置に従わせることが現実的な対応だと思います。


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