コラム

 公開日: 2016-11-04  最終更新日: 2016-11-09

やはり戸建住宅は新築も既存も耐震等級3が必須か?(1)

平成28年4月の熊本地震では建築基準法でも想定していない前震、本震で震度7を二度記録しました。前震で倒壊を免れた建物も、本震で倒壊した事例もあります。連続した大地震にも耐え、住まいに「家族を守るシェルター」としての性能をどこまで求めたらよいか悩みどころです。まずは判断基準を専門家任せにせず、少しでも自ら理解したいものです。

日本の国土面積の世界に占める割合は約1%ですが、世界で発生するマグニチュード6以上の地震のうち、約2割は日本周辺で発生しています。今や、「震度6の地震は日本のどこでも発生する可能性がある」と想定したほうがよさそうです。

今回のコラムでは熊本地震における「日本建築学会悉皆(しっかい)調査結果」や国土交通省が設置しました有識者による「熊本地震における建築物被害の原因分析を行う委員会」(以下委員会)などの報告書から、あらためて住まいの耐震性について取り上げてみたいと思います。


建物基本性能の主軸、耐震性能

大震災が発生するたびに、建築基準法の耐震基準が強化されていきた耐震性能。大きくは1981年以前の旧耐震基準、その後の新耐震基準、そして現在の基準が2000年(平成12年)に規定された基準です(業界では1981年の新耐震基準と区別するため、2000年基準、新々耐震基準、平成新耐震基準などと呼ばれています)。まずは、地震の多い日本では、住いの耐震性能に注目すべきでしょう。

先にあげました「委員会」報告書の「熊本地震における構造別、建築時期別建築物被害状況」を全体で見ますと、明らかに現行基準である2000年基準建築物は倒壊、大破が5.5%とそれ以前の基準の建築物より被害が少なく、優位性が高い結果になっています。





やはり戸建住宅は耐震等級3が必須条件?

日本建築学会が実施しました木造建築物の悉皆調査でも「1981年6月〜2000年5月基準では18.4%の家屋が大破、倒壊」、2000年基準以降では6%が同様な被害を受けた実態に対し、1981年5月以前の旧耐震建築物では45.7%と耐震性能の差が歴然と現れています。




2000年基準以降の建築年で倒壊した木造7棟の内、3棟で接合部仕様にて基準とは違い不十分であったとされ、1棟は敷地の崩壊が原因、残り3棟が原因不明でした。
基準どおりに施工されていれば、2000年基準の有効性の高さを調査結果から読み取れます。

さらに、学会悉皆調査の範囲内ですが、住宅性能表示制度を利用した木造住宅の内、耐震等級3で設計された16棟のうち、14棟は無被害、2棟が軽微または小破の被害でした。改めて、耐震等級3(現行建築基準法の1.5倍の強度)の必要性を強く感じます。
構造関係の専門家では、耐震等級3を標準とし、耐震等級4(現行基準法の1.75倍の強度)の創設を唱えている方もおられます。

戸建住宅においては、施主、購入者の意向次第で耐震等級の選定検討が可能です。また無理なプラン要望がなければ、2階建専用住宅であれば耐震等級3を取得することは技術的にも難易度が高くないと思われます。


まずは注目したい建物基本性能、ただし性能表示採用は低迷

先程、耐震等級のレベルを事例にあげましたが、これは平成12年から始まった住宅性能表示制度の一部です。建築基準法を上まわる性能基準も設けられ、10分野32項目にわたって住宅性能を第三者機関が評価する制度です。

既存住宅にもその性能表示を取得する制度は設けられていますが、実態として採用が進んでいません。平成26年度においても残念ながら新築でも20%台です。

住宅性能表示制度の採用が低迷している理由は「採用は任意であること」「施主、購入者の情報不足」「業界関係者のコスト意識」などが考えられます。戸建住宅においては、施主、購入者の意識次第で、住宅性能表示制度の採用、耐震等級を上げた計画の検討が可能です。

平成26年の住団連による「住宅性能表示制度等取組実態調査」報告書によりますと、アンケート対象の約半数の事業者が表示制度採用に消極的な状況であり、顧客の要望により取得が37.6%と高くなっていることから、施主側の知識、情報量の確保が採用率向上に向け重要であることが判ります。

少し余談ですが、中古自動車流通と同じように、今後、既存住宅流通拡大にあたって、性能表示の採用、設計図書などの性能諸元の保管、点検補修履歴の有無が信用に結びつき、建物価値が認められる時代になってくると思います。
一般的に住まいは使用期間が長いため、所有者はそれらにかける事前コストに対し、遠い将来のベネフィットを感じることが難しく、現在のところそれが普及の妨げになっていると思います。

施主、購入者は、「日本の建築基準は最低守るべき基準を定めているだけで、必要十分条件ではないこと」を、まず認識することがスタートになるでしょうか。

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