コラム

 公開日: 2016-05-23 

マイナス金利時代における住宅ローンの選択基準

平成28年2月に日銀が当座預金の一部にマイナス金利を導入しました。政策金利、10年物新発国債金利に大きく影響を受ける住宅ローン、今後どのような展開になるか、これから住宅取得を考えている方は一段と興味が湧いていると思います。

今回のコラムでは「民間住宅ローンの貸出動向調査結果(住宅金融支援機構)」のデータから住宅ローンの実態も取り上げ、その特性をまとめてみたいと思います。

実行金利の推移はバブル崩壊直後は8.5%、現在は1%以下


住宅ローンの店頭金利はバブル崩壊時に年8.5%という、今では考えられない金利になりました。その年の年間金利上昇幅も2%と過去にない上昇となり、信用金庫の住宅ローンを利用する私が担当した物件においても、年利8.5%の住宅ローンの実行となりました。



(出典:住宅金融支援機構HP)
年利8.5%ですと、借入期間30年間の総返済額は借入れ金額の約2.8倍になります。3000万円借入では、約8,300万円の総返済額になってしまいます。現在の変動金利(年利0.57%が30年続くと仮定した場合)では、借入4,000万円の住宅を2棟分買えそうな総返済額です。個人的には、それだけ現在の金利が低いと実感しています。

しかし低金利時代が長く続いていますと、毎月月末に各金融機関から発表される翌月の実行金利が仮に0.05%の上昇でも、「住宅ローン金利上昇」と報道され、「金利上昇局面になったのではないか」と住宅完成、引き渡し間際の融資実行が近い消費者にとっては、敏感になってしまいます。

ちなみに、旧住宅金融公庫は申込時金利でしたが、現在、一般的に融資金利は申込時金利ではなく、建物完成後、引き渡し月の融資実行時適用金利が採用されます。(一部金融機関では一定期間内であれば申込月金利と実行月金利の低い方が適用になるようです)

まず様々ある金利タイプの特徴を理解しましょう


その後平成12年頃までは、基準金利や店頭金利はいわゆる適用金利と同じで、その後平成15年頃から金融機関の住宅ローン競争が始まり、優遇金利後の適用金利で融資実行される時代になりました。都市銀でも土日営業が可能な住宅ローン販売会社をつくり、今まで住宅金融支援機構(旧住宅金融公庫が2007年に改組)や地銀の市場であった住宅ローン市場に力を入れてきました。

住宅ローンは基準金利、店頭金利、適用金利、優遇金利など色々な融資機関で異なる名称が出てきました。一般の方は商品名称から内容を新たに覚え、商品特長を理解しなければなりません。さらに、金利タイプも変動、固定期間選択型、全期間固定、二段階固定(フラット)、ミックス(固定と変動の組み合わせ)など、各金融機関で若干異なる商品特性のものが発売されてきました。

金利タイプ別実績の状況から読み解く、将来起こり得るリスク


住宅ローンを借り入れする際、そのタイプを選ぶか必ず悩むと思います。他の方と同じ判断をする必要はありませんが、業界全体の傾向をつかむ判断材料の一つとして、住宅金融支援機構の調査データが参考になるかもしれません。



最近の金利タイプ別新規貸し出し実績では変動金利の購入が減少傾向で、その分固定期間選択型が伸びています。それでも全国平均での変動金利選択割合は54%と半数以上を占めています。さらに、この金利タイプ選択の傾向は、その地域を主力とする金融機関によって大きく異なっており、変動金利を選択された方は近畿地方で79.5%、南関東で71.8%と平均に比べ高く、逆に北陸が5%と極端に低くなっています。

都市部で変動金利を選択される方が多い理由は何でしょうか?
勤務先の企業規模、年収、など様々な項目が考えられますが、低金利時代に変動金利を選択するということは、まず、ご自身の「将来のリスク許容度が大きい」「デフレが続き、金利は当分上がらない」と判断されているということになります。
しかし、富山県、福井県などに代表される北陸地方は共働き率が高く、一般的にリスク許容度が高いと考えられる働き方です。その地域の変動金利選択が極端に低い理由は特別に何かあるのかもしれません。
もし、商品理解や将来の検討をせずに、提案された住宅ローンを購入しているのであれば、将来の見通しをされていない可能性がありますので、将来の生活が心配になります。
金利上昇局面になった場合、固定金利タイプが先行して金利上昇する傾向です。そうしますと、変動金利が上昇したからと言って、変動から固定に乗り換える際には、既に固定金利も上昇していることになります。

住宅業界関係者として高金利時代を体験している身としては、フラット35SのAプランなどの30年固定金利と変動金利の金利差が1%未満の状況(5月は約0.5%の差。借入3,000万円の場合の団信、保証料などの諸費用を含まない場合の30年間総返済額の差が2,470,800円、年あたり82,360円)になっていれば、迷わず固定金利を選択しそうです。30年もの長期間に金利情勢、自身の状況が変化することは十分ありえると思っています。その分の保険として固定金利を選択するでしょう。それで、総返済額の増加分の圧縮策として、住宅ローン控除が終了する11年目以降に可能な範囲の一部繰上げ返済を計画すると思います。

特典、内容の吟味が必要。実質借入コスト(APR)で比べる視点


住宅ローンは商品です。
商品を比較するとき、価格、基本スペック、省エネ性能などから家電製品をトータルに検討するように、住宅ローンも金利以外に申込手数料、保証料、団体生命保険料、登記費用などの諸コストも合わせて比較する必要があります。

ネット上のシミュレーションソフトは利用できますが、それには検討対象の住宅ローン諸費用の目安をある程度把握する必要があります。住宅ローンを扱いなれている方でしたら、おおよその目安はつくでしょう。しかし、一般の方は検討対象の金融機関か住宅ローンに強いFPに確認されてみると良いかもしれません。

特に金利優遇という制度が各行で採用されはじめ、固定金利選択型の固定期間終了後の金利優遇幅も各行で違っています。当初金利だけで比較するのではなく、返済期間に合わせた実質借入コスト(APR)から比較しますと、住宅ローンのランキングも変わります。

さらに各行では、金利以外に商品差別化するため、疾病保険、買物優遇、家事代行サービス付などの様々な特典付独自プランを用意しています。それらのコストはどこかに算入されていますので、まずは付加される特典のコストを調べ、自分にとって本当に必要なものか見極めることも重要です。

返済期間は短縮傾向。老後資金を見据えた行動か


借入期間のデータに関し、「約定貸出期間」と「完済債権の平均経過期間」が住宅金融支援機構から発表されています。貸出期間平均は25.7年、平均完済期間は短く14.4年になっています。




平均ですが、10年間以上も期間短縮して完済している実態があります。当初、ライフプランのリスク回避のために長めに借入期間を設定した方も、将来の金利負担を減らすために、返済力を高める(例えば、共働きになり収入を高める、生活費の節約に努めるなど)ことを実施されている方が多いのでしょう。

ちなみに3,000万円を金利1.5%で25年間借入しますと、総返済額は35,994,148円となります。15年目の残債13,362,251円をその時点で繰り上げ返済した場合、25年間かけて返済した場合と比べ、約103万円の利息を節約したことになります。

住宅取得年齢を平均的な住宅1次取得年齢の40歳前後と仮定した場合、55歳頃には完済し、もし30代の前半にお子さんを設けていれば、教育費のピークにも対応されていることになります。その後は、ご自身の老後資金の確保に充てる時期、いわゆる「貯め期(ためき)」を持てます。データから見れば堅実に返済され、老後のライフプランも考えている方が多いと感じました。但し、この捉え方は「借換えによる完済ではない」という条件付きです(新規貸出の内、2014年は約25%が借換えとなっています)。

金利リスクと経済効率の賢い考え方


一方、金融機関全体では、今後、重視したい金利タイプは「変動金利」「固定金利選択型10年」となっています。都市銀行、信託銀行に絞りますと「固定金利・変動金利ミックス型」に注力とされています。

経済効率と金利変動リスク対策の考え方としまして、下記の4項目の組み合わせの調整で対応可能でしょう。
1 金利上昇リスクはあるが、低金利を享受できる変動金利
2 金利は高めだが、返済額が確定している固定金利
3 1及び2の借入金額
4 1及び2の返済期間
また、総返済額から見れば少額ですが、ミックス型の住宅ローンで金銭消費貸借契約が1本で可能な商品であれば、2本申し込みローンに比べ諸費用も節約できます。

どのような割合が良いかは、個々の条件やライフプランで変わってくるかもしれませんが、事例として、住宅金融支援機構の「ダブルフラット」の考え方が参考になりそうです。

マイナス金利時代の住宅ローンは固定金利をベースに


日本で初めてのマイナス金利、今後、適用範囲・金利がどのように変わるかは予測がつきません。金融機関も利益なき商品は販売しませんので、今後、何らかの商品設計が変わる可能性があると思います。一部金融機関ではすでに取り入れ始めているようですが、手数料の値上げ、口座管理料の費用発生、優遇を受けられる顧客の絞り込み、変動金利の金利見直し期間の短縮などが考えられます。すでにマイナス金利が導入されているスェーデン、デンマーク、スイスでも、住宅ローン利用者は借り得になっていないようです。

住宅ローンは投資信託、生命保険に比べ商品比較がしやすく、住宅雑誌などで、その特集が組まれ、目につきやすいものです。しかし、冒頭で説明しましたように過去にない低金利が続いてきたことは事実です。デフレの影響も考慮する必要がありますが、個人的には返済計画の選択は固定金利をベースに考え、住宅ローン商品別の総返済額差より、将来的な価格変動幅(土地価格、建物減価)が大きい不動産価値の見極めに、まずは注力していくことも大切と考えています。

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