コラム

 公開日: 2016-04-06 

ZEH割合は住宅メーカーのメルクマールとなるか

前回はZEHの概要や評価基準、重要な項目などについてお伝えしました。今回は、他の認定住宅との関係、ZEHを普及させるうえでの私見をまとめてみます。


さまざまな認定住宅とZEHの関係は


様々な住宅政策が打ち出されていますので、それぞれの違いが判りにくくなります。
そうした際、資源エネルギー庁でまとめた比較表が参考になります。その中で、ZEHはエネルギー特化型で、尚且つ総合評価型の長期優良住宅を兼ね備えることが出来ます。さらに戸建住宅の長期優良住宅では高齢者対応等級の上級レベルは要件とされていませんが、高齢者対応も満たしていけば「スマートウェルネス住宅」も包含可能です。

既に大手住宅メーカーの戸建住宅では、敷地面積の制限からの長期優良住宅の床面積制限(いずれかの階が40㎡以上)がクリア可能な物件はほぼ、認定長期優良住宅を取得しているものと思われます。40㎡以下になる場合は、施主が納得できるよう、低炭素住宅の認定を取得し、長期優良住宅と同じ税優遇を可能にする対応がなされていると思います。現在のところ、大手住宅メーカーでは、長期と低炭素のいずれかの認定住宅提案は一般化しています。

2020年以降に戸建新築物件のZEH化が予定通り進めば、「躯体の耐震性・耐久性・維持管理の長期優良住宅」「省エネのZEH」の両方を取得する「長期優良ZEH」が普及してくると思います。さらに超高齢化社会であることを考えますと、医療介護対応のスマートウェルネス住宅化も時代の要請から必須要件になることも考えられます。

通常、消費者が同時に取得する住宅は一軒だけです。様々な認定規格がありますと、消費者が事前にその制度を理解し、意図的にその方向へ望むことは、現実的にはかなり難しいです。
さらに、補助金は年度内予算消化と言う申請のタイミングもありますので、消費者・供給側とも悩ますことになります。

これらの状況から、今後、認定住宅を推進する主体ごとに、特化する性能規格を分ける意味はあまりないかと思います。どれも時代背景から必要な性能であるとすれば、消費者側としてはそれらが統合された誘導規格の方が目を向けやすく、それぞれの性能達成度合いでインセンティブが比例以上に増える方がシンプルです。





平成26年補正予算から大幅にZEHが増加






平成26年補正予算分(平成27年申込み受付分)から、制度簡略化、一件当たりの補助金を130万円の定額制にしたこともあり、ハウスメーカーの申請分が約8倍と伸び、シェアも9割近くになってしまいました。

大手住宅メーカーがZEHを販促の主流に位置付けたこともあり、これからも大手メーカー主導で進む半面、小規模な工務店は技術的課題や販売数量の確保によるコスト低減の壁を乗り越えることが難しいものになると予想しています。建築物省エネラベリング制度の施行も伴い、さらに業界の2極化が進むかもしれません。

建築業は地場産業の側面が強く、国土交通省では地方活性化のためにも中小工務店の能力を上げる為に難しい政策を進めなければなりません。それには「最低限の基準を守る」から「推奨、誘導水準を超える」ものづくりへの体質改善が求められます。


平成28年度ZEH支援事業は


平成28年度のZEH支援事業の概要が定まりました。
補助金は定額制で125万円/1棟(寒冷地は25万円加算)、寒冷地以外のNearly ZEHは補助対象から確実に外れそうです。定置型蓄電池システムを計画に含む場合、ZEH補助事業と一体化され、さらに、第三者認証の建築物省エネラベリング制度(BELS(べルス))を取得した物件は、補助金交付決定の際の選定ポイントが上がる制度も盛り込まれました。

大きく制度改正があったのは「ZEHビルダー登録制度」です。申請代行者がZEHビルダーとして登録された業者でなければ補助金の交付は受けられません。そのビルダーの要件は、2020年度に於けるZEH建築割合を50%以上にすることを目標とし、それまでの各年度の目標と実績を公表することです。既に大手住宅メーカーの中では、平成27年度中にZEH割合が50%を超えているメーカーが数社あります。それらのメーカーは70%、80%を目指すと思われます。


補助金のシンプル化が課題


ZEH支援事業の昨年来の事例や、他の補助事業と同じように、公募は年数回に分けて実施されることが予想されます。手続き上の縛りを考慮しますと、建物完成後の実績報告受付を年度内に済ませ予算執行の流れは変えられませんので、例年通り秋口が公募最終回になるでしょう。

特にZEH支援事業の補助金は「公募受付」「審査」「交付決定」「建物契約」「融資承認」「確認申請」「施工図作成」「着工」「竣工」「実績報告」「補助金交付」となりますので、契約前のプラン、建物仕様決定の「前さばき」が重要になります。

建物契約後にZEH審査基準を満たさない、施工図変更・確認申請時の指摘による変更は認められていません。施主も最終金額が決まる前に、依頼する住宅メーカー、プラン、仕様を決めることは、かなり勇気がいることになります。さらに詳細打合せが進めば、発想転換をしたくなり、変更の申し出をしたくなるものです。

このような状況から、ZEHを採用しようと考えている方は、年度初めに計画概要、業者選定が終わっていれば、スムーズに補助金の手続きを進められることになります。

今までの補助事業の段取りの縛りでは、事前契約・施工図の変更が難しく、「施主の気持ち」「現場の段取り」「施工量の平準化」などの面からも、建築業界の実情をより理解した制度に変わってほしいと望んでいます。

さらに各補助事業に共通するのですが、条件をシンプルして事前審査のウェイトを低くし、竣工後の結果について、先着順、若しくは抽選で予算消化する方向にすれば手続きが簡略化するのではないかと思います。また、不正請求対策はペナルティーを大きくすることで対処可能と思います。


ZEH割合は住宅メーカーとしての評価につながるか


2020年に向け、発表される施工実績に占めるNearly ZEHも含めた「ZEH割合」が大手住宅メーカーとして、一つのメルクマールになりそうです。

政府の「ZEH割合の高さと、消費者からの住宅メーカーの評価を連動させる」ことで、普及促進させたいとする誘導政策は理解できます。
しかしながら、日本は南北に長く気候が大きく違います。寒冷地では断熱仕様の高額化に対応した補助金の割増はありますが、日射量からみても他の地域に比べ不利になります。また、都市部では太陽光を有効に搭載できる敷地条件とは限りません。

寒冷地で日射量の低い地域に強い住宅メーカー、都市部に強い住宅メーカーは、ZEH条件の有利な地域に強い住宅メーカーと比較されてしまいますと、一律のZEH割合のみで評価では不利になってしまいます。

消費側は、もう一階層掘り下げた情報を入手し、業者特性や事情を理解して、比較することは難しいです。

せっかく補助事業対象を7地域に区分していますので、せめて対象地域区分ごとのZEH割合まで掘り下げられ、可能であれば都市部、郊外のエリア(用途地域で見れば、第一種低層住居専用地域に準じる地域とそれ以外など)まで区分されれば、消費者のより正しい住宅メーカー評価につながり、供給側の住宅メーカーも普及に向け、より積極的になるのではないでしょうか。

今後、住宅メーカーのZEH割合は、いずれにせよ注目の割合です。

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