コラム

 公開日: 2016-02-19 

これからの住宅に求められる性能(2) バリアフリー化(高齢者配慮)

日本が超高齢化社会に突入したと言われ、何年が経ちましたでしょうか? 人口問題は経済予測と違い、推計値と大きな差異が出ないものと言われています。2025年には団塊世代は要介護率が上がる後期高齢者になり、2030年には高齢者人口割合が32%と3人に1人が高齢者となる社会が待ち受けています。高齢者の増大に伴い、当然ながら住まいもその生活する方に合わせた対応が必要になります。今回は住まいの高齢者配慮について、ひも解いてみます。

人生の約1/3が老後


住宅の第一次取得世代の中心となる30・40代は核家族化が進み、身近に高齢者がいないため身体能力の低下がどのようになるか体感するのも難しいと思えます。しかし、誰しも年を重ね、身体能力が衰えることは確実ですので、事前に老後を考えておく必要があります。

かつて高度成長時代に造成・建築されたニュータウンも、子育て世代が同時入居したため今では高齢者が多くなり「オールドタウン」などと報道される事態にもなっています。エレベーターの無い共同住宅、坂道の多い分譲地での高齢者はゴミ出し、買物にも不自由し、介助を受けなければ生活できません。
UR(都市再生機構)においても、賃貸住宅を高齢者対応リフォーム、分散型サービス付高齢者向け住宅の構築、子世帯の近居割り制度など、入居者の高齢対応を進めています。しかし、予算の都合から限られた件数しか実現していないのが実情です。

「40数年前の社会は高齢者対応をあまり念頭に入れていなかったのか?」と不思議に思います。確かに1960年の日本人平均寿命は男性65歳、女性70歳ですから、現在のように人生90年時代を迎えるとは想像も出来なかったと思いますので、無理もないのかもしれません。また、自分自身も独居後期高齢者である親の身体能力低下(荷物が持てない、階段昇降が不自由、短時間歩行しか出来ないなど)を目の当たりにし、「いつかは自分も」と頭では理解しているつもりですが、いま一つ実感が湧いていないのも事実です。


東京圏は高齢化に関し、地方に比べ15年流行遅れ。その時施設は


東京圏では全国平均14%増(2015年、2040年比)を上回る約30%増と急速に高齢化が進み、高齢者施設のキャパシティも追いつかなくなる可能性があります。しかし、2030年頃から東京圏後期高齢者の人口の伸びも止まり、その後の2040年頃からは減少傾向になります。

高齢者問題に関しては、高齢者扶養指数から見ても東京圏は15年から20年後には現在の全国平均と同じ指数になることから、現在地方が抱えている問題は20年後には東京圏にも現実化する可能性があります。

今から15年後には需要の頭打ちが分かっていることから、建物償却期間から介護事業者が施設投資に二の足を踏んでしまうのも判ります。現に一部の地方では高齢者減少に伴う施設利用率低下により、経営に苦慮している事業者も出てきました。一時的な需要増に対し、思ったように施設が増えない可能性もあります。それは、いわゆる「介護難民」を生み出すことになりまねません。

補正予算での政策をみますと、既存建物を利用したサービス付高齢者向け住宅の建設補助金を100万円/戸から150万円/戸に増やし、また誘導エリアを決めることで需給バランスを調整するように打ち出しています。





老後生活のキャッシュフローチェックは必須


施設介護の核となりうる「サービス付高齢者向け住宅」においては、一人20数万円/月の費用が掛かります。その施設利用にあたっては、平均的な介護期間5年分の介護費用を見込んで事前に老後資金を確保されている方の選択肢と思えます。
長生きリスクに対応するには、極力住み慣れた自宅での在宅介護も念頭に入れておけば選択肢も増え、老後のキャシュフロー破綻防止になるかもしれません。政策も社会保障費の増加を抑えるために、在宅介護への方針を明確にしています。

さらに、施設利用費・老後資金の確保には、手持ちの資産として「持ち家の活用」も有力な手段になります。最近、老後資金捻出商品として金融機関でのリバースモーゲージ商品の取り扱いが増えてきました。しかし、その商品はマンションでの利用は対象外か厳しい条件があり、戸建住宅では未だに土地評価によるところが多くなっています。しかし、今後、既存住宅流通拡大政策が打ち出されていくことは明確ですので、継承力のある建物はより資産性が増すことになります。

いずれにせよ、持ち家活用には汎用性の観点から住宅取得の方針を考える必要があります。次の購入者、利用者が良いと思うことが住宅の資産価値の証となります。自分か良いということが資産価値に結びつくとも限りません。この視点が重要です。

住宅取得後の後半約30年は老後


住宅土地統計調査を元に国交省で既存住宅のバリアフリー化(高齢者配慮)状況を取りまとめた資料を見ますと、平成25年において住戸内の高齢者対応が可能な高度バリアフリー化状況は持ち家で11.7%、借家で4.2%になっています。

借家は主に若い世代を想定している間取り、面積の物件が多いことから、低くなることは理解できます。一方、持ち家に関しての数値は、今後の高齢化社会を考えますと、余りにも低い数値としか思えません。既に高齢者が生活している住まいにおいても10%と低い数値です。





抜け落ちる、戸建住宅の「玄関アプローチのバリアフリー化」


持ち家において道路から玄関までの車いす対応が可能の数値は全体で15.0%、共同住宅で41.7%です。これらの数値と持ち家ストック数の内訳から、戸建持ち家において玄関までの高齢者配慮実施の割合を推定しますと約9.5%になります。

共同住宅は住戸玄関までの廊下が共用部にあたり、住宅性能表示におけるバリアフリー基準においても評価対象となっています。さらに建物バリアフリー法においても、一定の規模以上の共同住宅は、道路からの車いすアクセス(スロープ)が規定されていますし、敷地面積的にも、アプローチ部のバリアフリー化に割さきやすいです。そのような背景からバリアフリー化が根付き、高い数値で実施率が推移しているものと思われます。

一方、戸建持ち家の場合、現実的には敷地面積の制約からアプローチ部の段差解消スロープを設ける限界がある場合が多いと思われ、性能表示対象外になったと予想しています。

戸建住宅の2階を使わない選択は出来たとしても、1階への出入りは介助されながらでも必須です。公共機関、交通施設、一定規模民間施設にはバリアフリー誘導基準があるように、実際の高齢者の利用を考えた場合、戸建住宅の敷地に於いても施策の細部の詰めが欲しいところです。





「玄関アプローチのバリアフリー化」に必要なことは


アプローチの傾斜としまして、推奨される勾配は1/15〜1/20になります。その勾配ですと、1mの高低差に対し15〜20mの距離が必要になります。玄関上がり框の高さ(180ミリ以内)と平均的な床高の2点を考慮しますと、戸建住宅における玄関ポーチの高さは地盤面から約380ミリ前後になります。仮に道路との敷地高低差が約60cmでは、玄関ポーチまで長さ15m以上のアプローチを設けなければなりません。

戸建住宅の敷地としては玄関までのスロープは計画上の負担が大きくなる敷地も多く、介護が必要になった場合、リビングなどの掃き出し窓から道路に向けてスロープを検討するのも一案です。この場合、独居が増えることも考えますと外部からのサッシ施錠対策も必要になります。建替えを検討される場合で敷地のバリアフリー化が難しい場合、思い切って土地の買換えも選択肢に入れてみては如何でしょうか。

以上の理由から戸建の敷地を検討する場合、スロープに必要な面積、費用も考慮して敷地を選定する必要があります。実際の土地販売価格にはこれらの必要面積分の除外や、設置費用分の減額が反映された価格査定になっているとは思えません。周辺売買事例の土地単価からの敷地面積分を積算した価格で表示されていると思われます。
仮にアプローチの為に敷地高低差の不利な部分の減額を主張しても、売主、仲介業者の認識度合いによっては、まったく請け合ってもらえない可能性が高いかもしれません。

道路には道路法による勾配規定がありますので、戸建住宅の敷地においても、バリアフリー化に必要な敷地条件の公的な水準が欲しいものです。


サニタリー拡張可否がポイント。スムーズな介護に向けて


建物内部のバリアフリー基準は性能表示制度にあるような項目ですが、ここで特に気を付けたいポイントが、トイレ、洗面室の拡張対策です。将来介護を受ける為に介助スペースの確保を考えた場合、プライバシーの確保より介助面積の確保が優先されると思います。

洗面室、トイレが隣接する場合は「その間の壁を構造壁(耐力壁)とせず間仕切り壁にし、取り外せるようにする」ことです。また、他の水回りと離れたトイレとするレイアウトの場合は「収納と隣接させ、後にトイレ面積を拡張可能な状態にする」などが考えられます。

戸建住宅では、南面に居室を取るために水回りは北側に配置されるケースが多く、しかも階段、内部耐力壁などの変更ができない主要構造部とも隣接しやすいので、サニタリー部の拡張には事前配慮が重要です。

参考までに、トイレスペースの拡張が無理な場合、大きな配管工事を伴わず居室に後付トイレを設置する粉砕圧送の水洗トイレも開発されています。そのような場合は、入浴も居室で介護サービスを受けながら入る状態ですので、居室床下に後付用の給排水管を事前に設けておくことも老後対策になるかもしれません。

老後を考慮したプラン提案が可能な住宅メーカーを選ぶ


細かな部分を上げればきりがありませんが、プラン作成初期段階に介護対応時のプランを作成し、その状態の構造制約から現在の家族構成、要望を取り入れたマスタープランの作成が望ましいです。現在抱えている問題の解決策や要望を入れたプランを煮詰め過ぎてしまいますと、後の介護対応への変更が難しくなるかもしれません。

可能であれば建物内部に耐力壁、柱の数の制約が少なく、最高ランクの耐震等級3が取得可能な構造(住宅メーカー)を選ぶことも、長寿社会に対応した正しい選択といえるのはないでしょうか。

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