コラム

 公開日: 2016-02-03  最終更新日: 2016-02-04

「資産」としての戸建住宅の未来像 長期優良住宅は基準となるか(Ⅱ)

前回は、先進国のなかでも日本の住宅寿命の短じかさ、その理由、そしてストック型住宅社会への入り口になり得る「長期優良住宅」の要件やメリットを見てきました。今回は、長期優良住宅が実際に資産価値を生み出す基準たり得るかを見ていきましょう。


意外とハードルは高くない、戸建住宅における長期優良住宅の要件


長期優良住宅の耐震等級は、等級2が条件となっています。在来工法の工務店にとって、最高等級3ではハードルが高く、普及の障害になることが心配されたのかもしれません。しかし戸建住宅大手メーカーでは、最高ランクの耐震等級3での提案が一般化しています。これは工法、部材の型式認定を取得していることによるものです。大手住宅メーカーでは長期優良住宅のハードルは以外と高くありません。

一方、自由度が高い在来木造は、木材の部材強度と型式認定を取得していないことより、さらに構造的な余裕を見る必要がある理由から最高ランクの取得が難しくなります。これは型式認定を取得していた耐震等級3の建物を、同じ仕様で一般建築としての構造計算をしますと、同じランクを取得できない可能性もあります。制度上の理由で同じ建物でも評価手法次第でランクが分かれることになりますので、本質的な性能を比較するのは業界関係者でも難しいと思います。

そもそも建築はすべてが工場生産品ではありませんので材料、設計ディテール、職人の能力、気候などに品質が左右されるものです。品質重視の政策の方向性である以上、自由度の制約はありますが、まず型式認定を取得していることは施工品質も含め標準化しやすく、品質管理に優れている面を評価しても良いと思います。

延床面積の下限制限については、住生活基本計画の床面積誘導水準から規定されています。戸建住宅に於いては延床面積の下限が75㎡です。また一つの階の床面積が40㎡以上(階段室面積を除く)の規定もあります。意外と都心の狭小地では、この40㎡をクリアできない事例もあり、この下限値は地域の状況を踏まえ、認定する特定行政庁によって変更可能な制限となっています。

この床面積の規定は、実質的に最低敷地面積を規定することにもなりますので細分割によるスプロール化防止になると思います。逆にエリアによっては下限値を上げることも必要と思います。


伸び悩む長期優良住宅の実績


平成21年6月から認定が始まり、その後の実績は平成27年3月時点で累計59万戸になっています。平成26年度新設住宅着工数から見ますと、約11%の普及率ですので思ったより普及していないイメージです。戸建住宅に限れば約24%の普及率ですが、特にマンションなどの共同住宅は低迷しています。

平成27年4月より、住宅性能表示の必須項目が長期優良住宅の項目と合わせられ、尚且つ住宅性能認定を長期優良住宅申請に活用できるよう手続きが簡素化されました。その改正によって普及率が向上するかもしれません。まずは住宅性能表示制度の採用向上が、認定住宅の普及に貢献するものとみています。
政府は、本年度改定される住生活基本計画での成果目標として、長期優良住宅の全住宅における普及率を平成37年に現状の約2倍の20%としています。10年後の目標としては、少し低い気がしますが。

また、分譲マンションなどの共同住宅においても、耐震等級2をクリアすることは構造的に難易度が高く、共同住宅での普及率が上がらない原因と思われます。
耐震等級ランクを上げますと、マンション下層階での躯体厚みが増し、専用部の面積を狭くするか販売住戸数を削らなければなりません。また、材料コスト、工事費もかかり販売価格に転嫁する必要もあります。

この建物コストの吸収が可能なのは、地価が高い都心部の高額物件に限定されてしまうことになります。しかし都心部ほど高層化しますので、さらに構造的に難しくなってくるという二律背反状態になってしまいます。マンションでの長期優良住宅普及にあたって、供給側のマーケティングが大いに影響している可能性もあるかもしれません。

いずれにせよ、普及率を上げるには、一般住宅と長期優良住宅との明確な優遇幅の差を打ち出すことが必要と思っています。さらに建築後の維持保全に関する点検・修理の実施に対しても税優遇を受けられれば、消費者はよりベネフィットを感じ、制度の理解、が進む可能性が高いと思っています。





戸建住宅の継承力を上げるには敷地選定も重要なファクター


個人的には、老後を迎えた夫婦でのワンフロア生活スタイルを考慮しますと、一つの階の床面積の下限が60㎡は必要と考えています。その場合、都市部の建ぺい率60%の地域では100㎡の土地面積になります。さらに実質的な利便性を求め、共同住宅に規定されていますバリアフリー基準を戸建住宅の敷地にも条件付けすれば、前面道路との敷地高低差のある物件はスロープ部分の土地面積も必要になり、より適地選定が明確になると思っています。

このような基準が定着していけば、前面道路とのアクセスにおいて、平坦な土地に比べ同地域の高低差のある敷地は、擁壁、土留め費用、スロープなどに必要な面積分を土地価格へ反映することが難しくなります。より利用価値に見合う評価に結びつきます。
さらに、高齢者にとって住まいやすいことは、子育てもしやすいことにもつながります。
それは、継承者(相続人、既存住宅購入者)の幅を広げることになり、資産価値が上がることと同じです。


資産価値を生む戸建住宅の最低基準、それが長期優良住宅


最後に、長期優良住宅に規定されています維持保全計画の提出と実施、その費用の積み立て計画は戸建住宅では画期的といえます。戸建はマンションのように区分所有法に規定された管理組合がありません。所有者の裁量で維持管理が進められれば「壊れたら直す」の無計画になり、見えにくい部分で取り返しのつかない劣化が進むことになってしまいます。

注意したいのは、認定住宅といえども、あくまで法律で規定した部材、納まりで設計され施工されたものを認定するものです。住宅性能表示のコラムでも紹介しましたように施工管理、工事監理の品質については評価していません。引渡し後の定期点検も施工業者によるところになりますので、施工品質、経営の持続性も考慮した施工業者の選定も重要になります。

いずれにせよ長期優良住宅の考え方は、ストック型社会にむけ新たな価値を生む下地といえます。政策もその方向性を満たした建物に優遇することになります。住宅取得を検討されている方にとって「住まいの価値を資産として維持する」には、まず認定長期優良住宅に目を向け、そこをスタート地点としてとらえてもらいたいと思っています。

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