コラム

 公開日: 2016-01-30 

「資産」としての戸建住宅の未来像 長期優良住宅は基準となるか(Ⅰ)

平成21年に住宅の長寿命化を目的に「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」(長期優良住宅法)が施行されました。施行されてから今年で7年目を迎え、その法律の内容、メリット、実績についてどのようになっているか改めて確認してみたいと思います。そして、資産として住宅を考えるときに、長期優良住宅はどのような存在・そして基準になるのか、2回に分けて考察してみましょう。


先進国の中でも短い日本の住宅寿命


以前の推計値ですが、日本の住宅寿命はサイクル年数(住宅ストック総数を年間新築住宅着工数で割ったもの)で見ると約30年。平成8年の建設白書に記載されている数字では、過去5年間に除却された住宅の平均築年数として日本は約26年、アメリカ約44年、イギリス約75年という数値が出ています。日本の住宅は欧米諸国に比べとても短い期間で解体、除却されているのは事実のようです。

平成8年で築26年ですと、昭和47年前後に建築された住宅になります。この時期は第一次オイルショック前の高度成長期で、団塊世代の住宅取得期にも重なり、新設住宅着工戸数が年間180万戸の時代でした。都市近郊では空き地や農地が宅地に次々転用され、ニュータウン計画も目白押しの右肩上がりの時代です。質より量が求められたことで、寿命の短い住宅が供給されたとも考えられます。


木造よりRC造の寿命が短い?逆転現象の所以


早稲田大学小松教授による、人間の平均余命を算出する手法を利用した研究(平成12年)では、日本の住宅の平均寿命(50%残存率)は構造に大きな差が無く、1997年調査点で約43年という報告があります。特に1990年以降、木造の平均寿命が伸び構造別の差が少なくなっている結果でした。

その後、平成17年調査での推計では更に寿命が伸び木造専用住宅は約54年、RC造共同住宅は約45年、と構造に対するイメージとは逆転の結果になっています。これは躯体の基本耐力の他に所有形態、維持管理の裁量など他の要因が関係していると思われます。また、地域特性として同じ構造でも再開発などの資本が入り易い東京都では短くなっています。木造戸建てが多く、空き家率が高い地方での寿命が長いとすれば、住宅寿命は社会的要因も関係していることになります。

都市再生機構(UR)の賃貸においても、いわゆる団地と言われています壁式RC造5階建ての共同住宅は、築40年前半の築年数で建替えられています。躯体自体の耐久性の問題よりも2DK、3DKからの間取り変更、給排水管の更新、耐震強化、バリアフリー化など様々な要因において改良するには、費用対効果が低く根本的な解決ができないことで建替えに至ったと思われます。
また賃貸ですので、順次入居募集の取り止めをし、URが所有する賃貸物件に一時転居することで計画的建替えが可能であったともいえます。

区分所有である分譲マンションの建替え合意は難易度が高く、全国において平成26年4月までの建替え実績は準備中も含め230物件です。この数字から見て、高経年状態になっても当面の手段として暫定的な管理しか選べないマンションも考えられます。それは結果的に良い原因ではないにしても、今後の住宅平均寿命を延ばす要因になるかもしれません。


既存住宅の評価手法の実態とは?


よく目にする減価償却資産としての建物耐用年数は、あくまで賃貸事業や資産に対する税制上の耐用年数であり、実際の耐用年数ではありません。しかし、宅建業、融資機関の既存住宅査定において、国お墨付きの評価として基準値にされやすく、木造住宅は20数年で建物価値が無くなってしまう元凶になっていました。

融資機関として回収のことを考えますと最低限担保される金額で査定したいことも理解できます。ちなみに財務省令による住宅の耐用年数は、RC造共同住宅47年、金属造(軽量鉄骨造肉厚3ミリ越え4ミリ以下)27年、木造22年となっています。RC造以外は実態と大きくかい離している年数です。

政府では平成26年3月に「中古戸建住宅に係る評価改善指針」をまとめ、昨年に(公財)不動産流通推進センターでの査定マニュアル改善などの具体策を打ち出しています。定着には少し時間が掛かるかもしれません。
すでに平成12年から開始された住宅性能表示制度項目の維持管理等級の考え方は、建物仕様において点検・交換を前提に納まり・部材の選定を規定することになります。この維持管理最高等級を取得した建物は、メンテナンス次第で寿命が伸びる能力が備わっていることになりますので、既存物件において、住宅性能評価を受けている物件はこの項目の等級に注目したいものです。


ストック型社会への入り口 長期優良住宅とは


住生活基本法が平成18年に施行され、フローからストック型社会への変換の流れを受け、平成21年6月から長期優良住宅を認定する制度が開始されました。この認定住宅が目指すところは、構造躯体の使用期間100年以上です。その為に建物性能、居住面積、維持保全計画とその実施を規定しています。









認定住宅としての当初メリットは税金、金利


長期優良住宅に認定されますと所得税減税、登録免許税軽減、不動産取得税控除額拡大、固定資産税減額措置期間延長、フラット35S金利優遇など多岐にわたります。今後の政策は既存住宅流通拡大にむけ定期点検実施、修理履歴の保存に重点を置く予定です。この長期優良住宅の認定基準である維持保全計画と実施記録は、将来、住宅履歴優遇政策がとられた場合に活用できるものと思われます。

さらに、新築時の当初メリットよりお得になることは住宅を長く使うことです。そうすれば単年当たりのコストは下がります。それには住宅の継承力と維持管理が重要なポイントになります。






次回は、資産価値を生み出すための諸条件を、長期優良住宅に照らし合わせて考えていきます。

この記事を書いたプロ

株式会社エルディーサポート [ホームページ]

不動産コンサルタント 屋形武史

東京都中央区銀座5-6-12 みゆきビル7F bizcube(東京オフィス) [地図]
TEL:03-5931-7116

  • 問い合わせ

このコラムを読んでよかったと思ったら、クリックしてください。

「よかった」ボタンをクリックして、あなたがいいと思ったコラムを評価しましょう。

4
<< 前のコラム 次のコラム >>
最近投稿されたコラムを読む
サービスメニュー

サービスメニューにつきましては下記当社HPをご参照くださいhttp://ldsupport.jp詳細につきましては、お手数ですがお問い合わせお願いいたしますメ...

 
このプロの紹介記事
屋形武史 やかたたけふみ

あなたの住宅・不動産に将来価値はあるのか 資産価値を最大に残すFP(1/3)

 今ある住宅の将来価値に対する客観的なアドバイスや、資産としての住宅取得を研修セミナーで教えているファイナンシャルプランナーがいます。屋形武史さんは、30年以上に渡り大手住宅メーカーで業界に携わり、住宅相談2000件以上、具体的提案500件...

屋形武史プロに相談してみよう!

朝日新聞 マイベストプロ

顧客の条件に合わせた住宅の取得・終活(売却、賃貸)をサポート

会社名 : 株式会社エルディーサポート
住所 : 東京都中央区銀座5-6-12 みゆきビル7F bizcube(東京オフィス) [地図]
TEL : 03-5931-7116

プロへのお問い合わせ

マイベストプロを見たと言うとスムーズです

03-5931-7116

勧誘を目的とした営業行為の上記電話番号によるお問合せはお断りしております。

屋形武史(やかたたけふみ)

株式会社エルディーサポート

アクセスマップ

このプロにメールで問い合わせる
プロのおすすめコラム
日本FP協会第6回小論文コンクールで優秀賞をいただきました

突然ですが、お知らせしたいことがあります。私が所属しています日本FP協会主催の小論文コンクールに私が寄稿...

「敷地セットバック必須道路」には土地健康診断で不動産価値の確認を
イメージ

前回に続き道路種別のうち「建築基準法42条2項」の道路扱いを受ける、いわゆる「狭あい道路」「細街路」「みなし道...

やはり戸建住宅は新築も既存も耐震等級3が必須か?(2)
イメージ

前回に続き、戸建住宅の耐震性能について取り上げていきます 既存住宅にも求めたい、耐震等級3レベル 住...

やはり戸建住宅は新築も既存も耐震等級3が必須か?(1)
イメージ

平成28年4月の熊本地震では建築基準法でも想定していない前震、本震で震度7を二度記録しました。前震で倒壊を免れ...

既存住宅選択基準は新築にも共通する。劣化診断結果は最終の判断?
イメージ

日本では空き家が820万戸(不明を含めれば850万戸)となり「空家対策特別措置法」の成立や、昨年度の住生活基本計...

コラム一覧を見る

スマホで見る

モバイルQRコード このプロの紹介ページはスマートフォンでもご覧いただけます。 バーコード読み取り機能で、左の二次元バーコードを読み取ってください。

ページの先頭へ