コラム

 公開日: 2016-01-12  最終更新日: 2016-01-14

豊かな住まいへの入り口、「住まい品質基準」を考える

皆さんは品質という言葉からどのようなイメージを浮かべるでしょうか?日本では製造業の品質管理が行き届き、海外でも機械電子部品、自動車などの製品に対する高い信頼をユーザーから受け、「品質が良い」とは設計通りのパフォーマンスがある、不良品、故障が少ないなどからイメージされると思います。それはその業界で培った基準、規格が協力業者を含め浸透し、素材から管理され均一性が保たれている結果であると推測しています。

工場生産という機械加工、製造という品質管理がしやすい条件と異なり、敷地条件や現場加工度が高く人力に左右される部分も多い「住まいの品質」について、どのような基準、評価制度があり、その実態がどのようになっているか今回ご説明したいと思います。


建築基準法を上回る基準、でも「ものさし」の一つ=住宅性能表示

まず、今までのコラムでも度々出てきました建築基準法、これも建物の性能基準を定めている法律です。しかしながら最低守るべき基準を定めているのみで、さらに上級の基準は明示していません。そこで平成12年4月1日に「住宅の品質確保の促進等に関する法律」(略称:住宅品確法)が施行され、その法律に基づき同年10月に第三者機関による「新築住宅性能表示制度」が運用開始されました。

また、この法律では新築住宅における主要構造部や雨漏りに対する10年間の瑕疵保証、紛争処理体制も規定しています。欠陥住宅問題が発生しますとメディアでこの住宅品確法の解説がなされますので、目にする機会も増えたと思います。既存住宅については平成14年から運用開始されましたが、採用実績は低迷しています。

住宅品確法の言葉のイメージから、住宅の品質全体を網羅しているようにも思えます。しかし、住宅に必要なすべての品質を評価しているわけではありせん。どちらかと言えば一部のハード面の性能評価です。この点を心得ていませんと、性能表示を受けていれば安心と早合点してしまいます。あくまで法律で規定した項目が対象です。特に戸建住宅は物件ごとに個別性が高く、敷地に合わせた使い勝手、便利さなどの消費者がさらに欲しい項目の評価は個々の価値観によるところもあり、対象になっていません。


画期的な第三者評価による公平性導入

この制度の運用開始以前、消費者は各業者を比較する「ものさし」がありませんでした。高性能、高耐震、高断熱などの形容詞的な表記では比較することは難しく、また供給側の住宅業者においても自社の優れている点を正しく表示できませんでした。

住宅性能表示制度開始後は、各業者が自社製品のアピールの為に積極的にカタログに記載しています。業者のカタログには「各分野での最高ランクを取得することが可能」などと表記されている事例も見られますが、同じ業者で同じ商品でも案件ごとにその性能ランクが変わる可能性もあります。この点は自動車などの工業製品の性能表示との違いです。自動車は車種ごとに乗る人、乗る場所によって基本性能が変わることはないからです。

特に耐震等級、高齢者等への配慮は敷地条件、施主のプラン要望、工法特性などから業者ごとに性能ランクの違いが出る場合もあります。そのような場合、性能、プラン、工法のどれを優先するか難しいところですが、「この工法で、このプランの場合は、この性能」と選択の判断基準の一つをこの表示制度によって得られるようになったことは画期的といえます。

住宅性能表示制度では下図のように10分野の性能表示事項が規定されています。





国が優遇措置へ舵を切る、住宅性能表示制度を利用した住宅

この制度を利用するメリットとしましては、
・第三者機関による評価により各住宅の性能を比較しやすい
・フラット利用の簡便化、規定の性能取得により金利優遇
(金利優遇▲0.3%、平成28年1月29日申込みまで▲0.6%)
・地震保険での割引がある(耐震等級3で地震保険50%引き)
・万が一の場合、紛争処理機関を利用できる
などがあげられます。

住宅性能表示は既定の基準、部材にて設計されているかを審査する設計性能評価と設計性能評価通りの施工がなされているかの建設性能評価に分かれます。設計性能評価のみの申請も可能ですが、この両方の性能評価を取得しませんと各優遇は受けられません。
さらに、平成28年1月から宅建業者が利用する不動産情報システム(レインズなど)や不動産ポータルサイトにこの住宅性能評価書の取得の有無が掲載されるようになりました。買い手にとって、ほしい情報を取得している物件はその分不動産価値が上がることになります。

政府は、建物の評価を経年による一律の減価ではなく、既存住宅の流通促進をはかるためにも、個々の建物情報の有無、内容を開示する施策を整えていく方向性です。この点からも、住宅性能表示制度は建物情報の中核になる制度ともいえ、住宅取得時には是非採用したいものです。また今後、この制度を利用し維持管理履歴を保管している既存物件は、政府の既存住宅流通促進政策の一環から税制の優遇を受けられる可能性もあると予想しています。


現状は大手業者中心、中小業者は今後に期待

しかし近況でのこの制度の採用実績は20%台で伸び悩んでいます。また内訳はプレハブ住宅メーカー、共同住宅持ち家(分譲マンション)の取得率は約8割になっていますが、中小工務店が採用しているケースが多い在来工法での利用率は10%台と低迷しています。
本来この制度は、中小業者にとって体制を整えるのが難しい性能保証をサポートする意味合いもあったと推測しています。しかし別図のように、大手業者が積極的に取得している実態になっています。

大手住宅メーカー、大手戸建建売分譲業者では、ほぼ全棟取得している業者もあります。費用、申請期間、検査回数などの面において簡易的に制度利用するには、住宅メーカーの部材、工法を基準化し型式認定を取得する必要があります。そのためのノウハウ、専門人員確保、型式認定取得予算のハードルもあり中小工務店の利用は低迷しているのかもしれません。年間住宅供給数500棟以上の業者の制度利用率は8割ですので、この棟数実績が業者の体制整備状況の判断メルクマールになると思われます。








積極的に制度利用するかどうかは業者選定のバロメーター

平成27年の改正により10分野の性能表示事項のうち、必須項目が9分野27項目から4分野9項目になりました。この制度改正の背景には、必須項目をシンプルにし中小工務店の利用促進の意図があったと思われます。さらに平成21年施行の認定長期優良住宅の必須項目とリンクさせ、住宅性能評価書を長期優良住宅申請にも利用できるよう計られました。
新たな必須評価項目とは、住宅取得者の関心が高く、建物完成後では調査しにくい以下の項目です。
①構造の安定に関すること
②劣化の軽減に関すること
③維持管理・更新への配慮に関すること
④温熱環境・エネルギー消費量に関すること

さらに、液状化に関する広域的な情報、個別の敷地の情報、基礎工事の情報を提供する仕組みも導入されました。





いずれにせよ、現状では未だに住宅性能表示制度を利用可能か否かの主導権は、体制整備の面から住宅供給者側の業者にあるようです。消費者側もこの制度を理解し、業者がこの制度を積極的に勧めるか否かを業者選定のバロメーターとしては如何でしょうか?
また、必須項目が4分野に限定されたことで、個々の業者が必須項目以外にどの項目を自社製品の標準的な制度利用項目とするかは、住宅性能に対する姿勢を比較できるものになると思われます。


施工品質の把握はもうひとつの重要ポイント

住宅性能表示制度では施工品質については検査対象になっていません。あくまで設計図書通りの部材が使用され、その部材が規定の施工基準で工事がなされているかが検査対象です。施工の丁寧さ、施工の精度、天候による影響など、いわゆる施工管理については、工事業者の管理基準によるところになります。その能力を判別するには、まず検査体制や工事監理体制について、専任者などを置きどのように実施されているか、またその内容をどこまで開示しているかを業者ごとに比較するしかありません。


既存戸建住宅の流通活性化に欲しい評価項目とは

戸建住宅において、さらに消費者側がほしい評価項目は適正な建物配置、プランの適正ゾーニング設計であると思いっています。それらは面積、形状、接道などの敷地条件に左右される部分も多く、敷地選定時点で制約の大半が決まり、さらに施主嗜好、業者配慮不足も加わって汎用性が低下する可能性があります。したがって個別性も高く難しい評価項目であると思いますが、住生活基本計画の面積誘導水準のように、エリア別のひな型明示が望まれるところです。

特に耐震等級3の最高ランクを取得することを目標としますと、建物配置と同じように後々に1階のゾーニング変更、耐力壁、窓位置変更は難しくなります。しかし、建物に物理的な瑕疵が無い場合でも、これらの基本計画に汎用性がありませんと中古住宅としての価値を正しく評価してもらえない可能性があります。

一方、マンションは建替え、スラム化の問題もありますが、2LDK,3LDKなどゾーニングや床面積も含めた点で汎用性が高く中古市場が指標化されるようになっています。優れた設計の戸建建物でも慣例的に経年と共に20数年で一律減価する現状に対し、中古マンションが市場化しているように、敷地条件も含め、継承者や次世代でも活用がしやすい戸建建物のプランニング価値を評価するソフト面の基準がほしいところです。

最後に、あえて戸建注文住宅の取得を考えている方が個性、嗜好性を求めるのは理解できます。但し、以前に流行したお気に入りの洋服を再度取り出して着る気がしないように、その時の嗜好は長く続くものとは限りません。さらに加齢と共に身体能力も低下し、住まいに求める機能も変化してしまいます。

「住まいを長く使う」「資産価値を維持する」と考えた場合、住まいの基本計画はキャンバスと同じように何色にも染められるような考え方で汎用性を意識し、変えることが可能なインテリア、エクステリアで嗜好を楽しむ手法もあります。

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