コラム

 公開日: 2015-12-08  最終更新日: 2015-12-09

「敷地セットバック必須道路」には土地健康診断で不動産価値の確認を

前回に続き道路種別のうち「建築基準法42条2項」の道路扱いを受ける、いわゆる「狭あい道路」「細街路」「みなし道路」などとも表現される「敷地セットバックが必要な道路」について、そのポイント、気をつける点をご案内します。

建築基準法42条2項道路(以下42条2項道路)のなりたち


この道路は、建築基準法が施行されました昭和25年11月23日時点で道として利用され、幅員1.8m以上4M未満の道路を指します。通り抜けできない袋小路状の道でも指定を受けているケースもあります。

建築基準法上の道路はその幅員が4M以上あるものが原則ですが、建築基準法施行以前の道路幅員は3.64m(2間道路 1間=6尺=1.82m)や2.73m(1間半道路=9尺)で利用されていた経緯があり、その救済措置的に設けられた規定です。

4m未満の道路幅員の成り立ちは、大正時代の市街地建築物法により道路幅員を9尺(約2.73m)以上とされ、さらに建物の外壁面を道路境界から1.5尺(約0.45m)後退させる指定が重なり、建築線間が12尺(3.64m)として計画されてきた名残です。

戦前から住宅地として利用されていた地域には未だに多くこの42条2項道路が存在しています。都内23区でも区内の3割ほどの道路がこの42条2項道路の対象になっている自治体もあります。意外と身近にあり問題を内在しやすい道路です。

道路幅員を4m幅に規定した理由は、緊急車両の進入や、防災上の離隔確保です。また道路が広い方が敷地の開放性が上がり採光、通風も有利になります。確かに狭い路地は日中でも薄暗いですよね。


敷地のセットバックは道路中心線より2m


建物の建替えなど、42条2項道路に面した敷地で建築行為を伴う場合、道路中心線より2mまで敷地を後退し、そのセットバック部分を道路として利用することが確認許可の要件となります。この規定は公道、私道での区別はありません。但し対向側が線路や河川、崖ですと対向から4mの一方後退になります。当然ながらセットバックした部分は建築の敷地面積としてカウントされません。
ご覧になったことがある方もあるかと思いますが、中古戸建の不動産販売図面の備考欄に「セットバック要」と明記されていたりします。

この道路の指定は特定行政庁(建築主事が設けられている自治体)がします。しかし昭和25年当時に該当する42条2項道路がすべて指定されているわけではありません。平成になっては新たに指定を受ける事例はさすがに少ないと思いますが、昭和60年以降になっても、道路調査願いを申請し42条の2項道路の指定を受ける場合もありました。
更に42条2項道路の扱いになっていない道でも、その隣接建物の建築確認申請概要書を取得しますと「昭和40年代は42条2項道路扱い」「昭和50年代は対象外の扱い」などの二重の判断を行政がしているケースもあり、近隣事前調査が重要です。

昭和25年には建築基準法が施行されているのに、道路がセットバックされていない42条2項道路に面した建物が多くあります。その建物が築65年以上でしたら法律施行以前ですので理解できますが、明らかにその後に建物が建築され、本来ならば道路セットバック済みでなければならないはずなのに、そうでない物件も多くあります。

これは建物完了時に受けなければならない完了検査を受けていなかったり、建物本体のみで完了検査を受け外構工事は完了検査後に施工していたりしたことが原因として考えられます。施主や建築業者の法律認識が甘く、以前は法制度上の罰則規定や自治体の体制も整備されていなかったことで、現在に至っていると想像しています。どうも土地を取られてしまう感覚の方が強いのかもしれません。


建物活用にも相続にも、合法的な状態が断然有利


建築基準法では、道路後退部の整備方法までの規定が無く、後退部には地表面に突起するような工作物を設けられない程度の内容です。なかには道路後退部に植栽を植えたり、植木鉢を置いているケースもあります。
自治体によっては道路後退部を分筆せずにも固定資産税の減免手続きが出来る場合が多いのです。もし分筆せずに道路後退ずみでしたら減免措置の手引きを調べてみて下さい。過去に遡って固定資産税還付を受けることは難しいと思いますが、翌年分からの固定資産税が下がるかもしれません。

また、相続評価に於いても敷地セットバック済みでしたら、その部分が被相続人の名義になっていても相続財産にはカウントされません。しかし、セットバックが未了でしたらその部分は路線価の30%で評価されてしまいます。不動産取引の際に評価が無い部分でありますが、未セットバックですと相続発生時には評価されてしまうことになります。相続後に敷地売却予定がある場合、必ず測量を入れ敷地確定しますので、路線価の高い都心部では相続発生前の事前検討の価値は十分あります。

いずれにせよ合法的な手続きを踏んでいない物件は後で増築や大規模な模様変えをする際に困ってしまいます。当座の敷地のセットバックがもったいないとの思いが、後々住宅の活用を難しくする(土地だけの評価)ことにつながっていきます。







                              (出典:多気町HP)


トラブル防止に重要な道路中心線の確定


ここで42条2項道路において、気をつけなければならない項目は道路中心線の確定です。
先程説明したように、セットバックする必要があるタイミングは、建て替えなどの建築行為の時点です。42条2道路に面した敷地が一斉に建築行為をすることはまずありません。
建築行為を行う敷地から順次後退させていくことになりますので、結果的に後退している部分とそうでない部分が混在してしまいます。何十年かけて道路が広がることになります。

この混在と長期の時間経過が道路中心線を確定させるのに混乱を産む原因になるケースが多々あります。費用をかけ測量士や土地家屋調査士に依頼して後退部分の測量図を残すことをせず、任意で現況外構の位置で暫定的に後退させることもあります。敷地ごとに中心線の位置がずれ、本来ならば直線状になるはずが途中で折れてしまったりします。さらに業者の調査不足から対向の敷地がセットバック済みなのに、そうでないと判断して間違った道路中心線で確認申請されるケースもあります。間違いが上塗りされると近隣問題へ進展することになります。


セットバックには自治体の補助事業の活用を


道路中心線の確定方法は、各自治体で「狭あい道路整備条例」など、道路後退部の寄付や自治体への利用譲渡を条件に分筆測量費助成や外構再構築補助の制度を設けられている場合もあります。「測量士、土地家屋調査士を介在させ測量後に隣接関係者の境界同意書を整備し登記する」という、時間と費用は掛かりますが、補助制度を設け後々の隣接関係者とのトラブル防止や確実に道路拡張を行う政策を進める自治体が多くなってきました。このような条例が整備されている自治体ではまず「狭あい道路査定」の手順を踏みませんと建築確認許可が下りないことになります。

特に道路との敷地高低差があり、擁壁や土留めを伴う外構工事が発生する場合は、要注意です。道路中心線が間違っていますと将来、擁壁や土留めを再構築する必要もありえます。

道路セットバックについて条例や建築確認申請規則などを整備せずに、確認申請者の調査により確定させる自治体も多いのですが、専門家を入れた後退部の測量分筆をお勧めします。
平成17年より順次、土地を分筆するには分筆する部分の測量だけでなく、残地になる部分の測量も必要になりましたので以前よりコストがかかってしまいます。しかし、いずれ土地を活用する際には通らなくてはならない事柄ですので、早めに問題点をクリアさせる方が重要かと思います。
登記は第三者への対抗要件として利用でき、尚且つ地積測量図があると境界票が不明になっても復元することが出来ますので、コストをかける意味合いは十分あります。もし、所有している土地の隣接で道路確定測量の話がかかりましたら、境界立合いには積極的に参加した方が有利です。一般的に境界立合いの依頼をした方が測量費用を負担します。


早めの実態把握が問題解決の時間を生む


敷地の立地、面積が妥当でも道路問題がありますと、問題解決に時間が掛かります。敷地を越境して利用するならば近隣問題が即時に発生しますが、道路問題は役所や近隣からすぐに是正を求められることが少なく、問題の先延ばしになり易い事柄です。相続で次の世代に申し継ぐ、自分の老後に住宅を活用するなどを考えた場合、早めの土地健康診断を是非お勧めします。

次回は「建築基準法43条但し書きの扱い」についてご案内します。

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